お嬢様と庶民の恋 3
「蜂蜜さんとはレベルが違いすぎて付き合えない。僕は普通の女の子がいい」
「……え」
「蜂蜜さんとは価値観が合わない」
そう言って背中を向け去っていった山田くんに、あたしはぽかんとするしかなかった。
山田くんの言葉を反芻する。
レベルってなんだ。
普通の女の子ってなんだ。
価値観が合わないとはどういう意味なのか。
可愛いあたしがフラれるなんて考えたこともなく、予想外の出来事に思考停止だ。レストランの予約は取り消せず、ぽかんとしたままあたしは困り顔のじいやと一緒にフレンチのフルコースをぺろりと平らげた。
失恋しても、食べれるものだ。
魂の抜け殻状態で家に着くと自分の部屋で、あたしはなぜフラれたのか考えた。失恋したら泣くものだとテレビで情報を得ていたが、それは嘘だったのかもしれない。だってあたしの目から涙は一滴も流れることはなかったのだから。食欲もなくなると聞いたがフルコースは美味しくいただいてしまったし、訳がわからないまま今に至る。
そしてあたしはフラれた悲しさや寂しさよりも、ただこの状況を受け入れなければならない理不尽さに、徐々に憤りを感じてきてしまった。
どうしてあたしがフラれなければならないのだ。
あたしが何をしたのだ。デートに誘って店を調べ何がいいのかたくさん考え選び抜いた店を予約をして、ランチデートしただけだ。しかもたった一回。二回目は不発に終わっている。
価値観の違いってやつを理解しないといけなかったのか。あたしはお嬢様で山田くんは庶民。ファーストフードのほうが気安かったのか。山田くんの言う普通の女の子なら、初めからファーストフードに行ったのだろうか。……普通ってなんだ。
夕食時、両親とテーブルを囲んでシェフの作る鶏肉のソテーを切り分けながら無言で考え込んでいると、母がどうしたの?眉間に皺が寄ってるわ、可愛い顔が台無しよ、と頬に手を当て首を傾げたので、あたしは期待しないで相談してみることにした。
「フラれた。なんでだと思う?」
両親ははっと息を呑み顔を見合わせ、母は不憫そうに眉尻を下げ、父は眉をつり上げ憤慨した。
「まあ、蜂蜜ちゃんフラれちゃったの?可哀想。辛かったでしょう。ああ、どうしましょう。そうだ、デザートをたくさん用意しましょうね。悲しいときは甘いものを食べると気が紛れるわ」
母は近くにいた給仕にデザートたくさん用意してね、と言葉を告げる。そして父は丁寧に切り分けていた鶏肉のソテーの一欠片にフォークを乱雑に刺して会ったことのない山田くんに罵詈雑言を投げた。
「蜂蜜をフルなんて相手は女を見る目がない。どこのどいつなんだ、全くとんでもないやつだ。そんな男のことはさっさと忘れて甘いものを食べなさい」
結局あたしはフラれた理由がわからず両親に慰められ甘いものを食べさせられ三日でニキロ太ってしまった。




