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異能力者の用心棒 少女を王にする  作者: 酒吞ピース


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#04 ザ・ワン・フー・ノウズ・ジ・アンサー

「……」


「……」


 彼女は顔を真っ赤にして、両手を広げたまま固まっていた。


「何言ってんだ、お前」


 途端に、彼女が両手をばたつかせる。


「あの……違うんです! 変な意味じゃなくてですね! ペンダント! ペンダントを額に当ててほしくて!」


「はあ?」


「そうすれば分かるというか! 胸に顔を埋めなくていいです! 違うんです!」


「とりあえず落ち着いて、コーヒーでも飲め」


「は……はい」


 彼女はグラスを傾け、残っていたカフェオレを飲み干した。


「で、ペンダントが何だって?」


 彼女は乱れた髪を整え、こちらに向き直った。


「ペンダントが教えてくれるというか、何というか……とりあえず、騙されたと思って……」


 俺はひとつ息を吐き、ゆっくりと立ち上がった。椅子を彼女の隣に寄せ、腰を下ろす。


「あ……あの、変なことしないでくださいね?」


「アホか」


 彼女の首にかかったペンダントを手に取り、身をかがめて自分の額に当てた。


 その瞬間、頭の中に声が響いた。


 声? いや、違う。


 言うなれば、情報の波。


 なんだ、これ?


 言葉になるよりも早く、膨大な情報が濁流のように頭の中へなだれ込んでくる。


「王位継承戦について、分かりやすく教えてやるよ!」


 気づけば、俺は天地の区別もつかない真っ白な空間にいた。


 目の前を、何かが飛び回っている。


 ……梟?


 道化師の格好をしたそいつが、俺に話しかけてきた。


「なんだ、お前は?」


「おやおや、着物に袴、それからブーツとは……ずいぶんハイカラな格好だねえ!」


「俺の質問に答えろ」


「いやはや、オイラはアンサー。このペンダントのアンサーさ!」


 まったく分からん。


「今はユウナ=ロードレイジのお友達さ! よろしくな!」


「……」


「君がここにいるってことは、王位継承戦に興味を持ったってことだな? そうだな?」


「いや、とりあえず言われたとおりにしただけだ」


「そうかいそうかい。尻に敷かれるタイプかな?」


 とりあえず、こいつはムカつくな。


「まあまあ、聞いてきなって! 金は取らねーよ!」


 その瞬間、景色が変わった。


 眼下に広がるのは、オルゲルディア王国のあるゴーダン大陸。


 俺はそれを、空から見下ろしていた。


「さあさあ、寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい!」


 アンサーとやらが、俺の横で羽ばたいている。


「今回の王位継承戦について、教えたげるよ!」


「……」


「現在、オルゲルディア王国はバルデアム=ドーンサンデス様が治めている。しかし、悲しいかな、バルデアム様はご自分の死期を知っている!」


「死期?」


「そう! いつ、どのように死ぬかをな!」


「そんなことが……」


「分かるんだな! こ! れ! が! バルデアム様の能力、ザ・ワン・フー・ノウズ・ジ・アンサーでな!」


「それはなんだ? 異能か?」


「そんな安いもんじゃないさ! 王となった者が持つ祝福! いや、代々受け継がれる祝福かな?」


 アンサーはまた、くるくると飛び回る。


「だから、それがなんだって……」


「今から言うさ! 落ち着きなって!」


 いつの間にか、そいつはメガホンを構えていた。


 どっから出した、そのメガホン。


「ザ・ワン・フー・ノウズ・ジ・アンサー! 全ての答えが分かるのさ。どんなことでもな!」


 メガホン越しの声が響き渡る。


「あの子の好きな子だったりー、世界情勢だったりー、戦争の勝ち方だったり! 自分で自分に聞けば、何でも分かっちまうのさ!」


「それで死期が分かったのか……」


「おうおう! 理解が早いね! 君は異能力者かい?」


「……」


「まあいいさ! と! に! か! く! バルデアム様は、王に即位した時から王位継承戦の準備を始めていたのさ!」


『六十年ほど前に、八つの家に……』


 先ほどのユウナとのやり取りが頭をよぎる。


「そうか……」


「そして、次期国王を決めるため、一年前に王位継承戦がスタートしたのさ!」


 アンサーがいくつにも分かれた。分身たちは、まるで競走でもするように一斉に走り出す。


「王位継承戦に参加できるのは、ペンダントの所有者のみ!」


「奪ってもダメ! 生きている保有者からは、他人が外せない!」


 走っていたアンサーの一匹が消えた。


「次の保有者を指名するのもダメ! そもそもできない!」


 また一匹、アンサーが消える。


「継承権の放棄はオッケイ! その時は君にもチャンス!」


 アンサーたちが一斉に羽を上げた。


「でも、誰が選ばれるかは分からない!」


 今度はアンサーたちが騒ぎ出す。


「放棄ってのは、どうやるんだ?」


 牧師の格好をしたアンサーが、俺の目の前に立った。


「胸のペンダントを握って、『私は継承権を放棄する』と宣言する! これでオッケイ! ペンダントが外れるよ!」


「そんなんでいいのか」


 アンサーは道化師の姿に戻った。


「そう! そしたら一日は手元に残る! しかし、それを過ぎると……あら不思議! どこかに消えて、誰かの首に!」


 アンサーたちの一匹に光が差した。


「つまり、相手に放棄を宣言させて、外れたペンダントを吸収するわけか」


「頭いいね! あんちゃん!」


 アンサーが言葉を切った。


「まあ、もちろん……」


 辺りが暗闇に包まれる。


「殺してもいいけどね」


 景色が戻った。


 そこには、アンサーたちの死体が転がっていた。


「それも一日以内に吸収しなきゃ、殺し損だけどな!」


「……」


「このことを、あいつは……ユウナは知っているのか?」


「もちろん!」


 目の前のアンサーが、ユウナ=ロードレイジの姿に変わった。


「バルデアム様が継承戦の開始を宣言すると、俺たちは目覚める。その瞬間、必要な知識が保有者の脳内へ自動的に流れ込むってなもんよ!」


 ユウナの姿が消え、アンサーは元の道化師の姿に戻った。


「吸収するには、王子自身が相手のペンダントまで近づかなきゃならないんだな」


「そういうこと! 王になり得る者には、それ相応の強さが必要だからね!」


「……」


 残酷だな。


 やはり、これは呪具と呼んで差し支えない。


「ペンダントの保有者が誰なのかは分かるのか? 例えば、開始時と今で保有者が変わっていた場合は?」


「ご安心くださいませ」


 メガネをかけ、燕尾服をまとったアンサーが目の前に立った。


「保有者の交代や脱落、ペンダントの獲得があった際には、必ずご報告申し上げます」


「……」


「保有者の場所は?」


 今度は軍服姿のアンサーが、無線機を手にほふく前進しながら答える。


「ある程度の距離まで近づけば、連絡します! どうぞー!」


「その距離は?」


「まだ教えません! どうぞー!」


「……」


「現在の保有者の名前は?」


 道化師の姿に戻ったアンサーが、巻物を広げた。


「えーっと……」


「ラヤ=イミタナム」


「ゴウ=クサバ」


「ムート=ケヤルク」


「ツクシ=マコ」


「エワーソン=ナルタイム」


「リ=タイカン」


「テトラ=パトラ」


「ユウナ=ロードレイジ」


「以上の八人だぜ!」


「自分を抜いた七人のペンダントを吸収!そしてバルデアム様からの祝福を受ける!これでオッケイ!」


「……」


 六十年前から仕組まれた王位継承。


 現国王、バルデアム=ドーンサンデス。


 ザ・ワン・フー・ノウズ・ジ・アンサー。


 何を考えて、こんなことを……


「また分からないことがあれば、いつでも遊びに来いよ! ナツカゲ=ナナキ!」


「……なぜ俺の名前を?」


「アンサーだからさ!」


 アンサーは陽気に羽を振った。


「あばよ!」


 辺りが再び真っ白になり、天地がぐるりと回る。


 王位継承戦……


 俺の意識は、どんどん遠のいていった。

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