ハピエン後 夏彦×あき
もう最近は編集するとか諦めてる笑
千歳が真蛇になった後はずっと考えていた。
あいつは気持ちを隠して、どうにもいかなくなって壊れた。それが真蛇の姿だ。
安珍清姫の話を思い出していた、ただすきなだけで、壊れてしまう心。
正当に愛せたはずの存在を正しく愛すことを許されなかったゆえ、清姫は愛しい存在を殺してしまった。愛の暴走の結果を俺は千歳を通して、清姫を知った。
そして思った。俺はこうなりたくない。
あきを好きだと自覚した時を思い出していた。
あきはいつも屈託泣く笑っていた。
口が上手くなくて悔しい思いを何度もしていた。でもあきはそれを嫌わずいつもどういうこと?とぶつかってきた。
あきの単純に人間が好きであること、愛しいものと思っていること、たとえば動物、そういう心があっても意思疎通ができない物言えぬ存在への振る舞いが優しくて、おれも物が言えない生き物として、あきの素直さに救われていた。
ああ、息がしやすい。言葉を上手く言えなくてもいい。
上手く言えなくて仲違いした無数の人間に会う度に感じる劣等感。
それをあきはなんでもないように探しに来る。
分かりやすい表情、言葉、理解を諦めない。
だからこそ喧嘩にもなった。上手く言えなくて傷つけても。言葉ではなく振る舞いで判断してくれる存在だった。だからおれはあきが必要だった。あきがいてくれるだけで俺がだめなことなんてなんでもないようにしてくれる。動物に優しく話しかけるあきを見て、ことばなんてなくても、あきなら分かってくれる。わかろうとしてくれると安心した。
だからあきじゃなきゃだめなんだ、おれには。
「あき」
「なんか夏、最近変わったよね~」
「お前のせい」
「なんでおれ?!」
「お前はわかんないだろうけど」
ムッとしてあきが怒る。
「なんなの!千歳も、真冬も夏も!お前にはわからないって・・・っ、俺は確かにバカだけどさあ!なんなのその線引くみたいな言い方!」
そうだ、あきはちゃんと伝えないとわからない、隠しているのは俺らだ。
理解できるように伝えないのは俺らだ。
「お前さ、男が好きってどう思う?」
「え・・・なに、千歳の話?」
ああ、鈍い。
「ちがう、おまえのはなし」
「おれ?俺は女の子が好きだけど・・・」
「なんで?」
「えっ・・・そんなこと、考えたことない・・・」
まるで意味がわからないというように、先ほどの怒りもしぼんでいったようだった。
言葉を選ぶ。嘘ではない、誠実な言葉。結局言える言葉は限られていた。
たくさんの語彙力を持っていない自分を恨んだ。
「・・・俺が、男が好きだって言ったらどうすんの?」
それ、おれ関係なく・・・といってあきの言葉が止まる。
ようやく察したのか。
「おれ、千歳みたいになりたくねえの、黙って、見過ごして、言えなくて、限界来て、全部めちゃくちゃにしたくなるように、こないだあきと喧嘩したのも、全部」
「・・・」
「受け入れないならもう側にいたくない」
あきが息をのむ。
「夏は・・・俺が・・・その、すきってこと・・・?友達としてじゃなくて・・・」
「・・・そうだな」
乾いた笑いがこみ上げてくる。
そういってやっぱり、後悔がこみ上げてくる。
あきは嫌だろうな。
俺が何度あきが誰かのものになることを想像して死にたくなったか。分かるだろうか。分からないだろうな。
「・・・受け入れないなら、側にいないって・・・」
「だから、選べっていってんだよ」
「だって・・・、千歳が・・・」
「千歳は関係ないんだよ!お前が無理ならもう、俺は離れる、お前を見てたらしんどい」
「まって、きゅうに、そんな」
「急じゃねえんだよ、おれはずっと」
「・・・ごめん、まって、ちがう、ちゃんと考えるから時間、ちょうだい」
「・・・悪い。困らせたかったわけじゃない。」
・・・泣きそうなあきを見て随分と卑怯な言葉を選んだ気がした。でももう告げてしまったから戻れない。
俺を一番にしてくれ。
俺はお前を一番にするから。




