ちとなつ 刃咲
刃咲ちゃんが書いてくれました!!!やった〜!
遥か未来の千歳×夏彦 みてからのがわかりやすいです
いろんな仮面をかぶっていくうちに、どれが本当の自分か分からなくなっていたのかもしれない。
兄弟の前では兄ちゃんの顔。
だって仕方ないじゃないか、そうでもしないと、ピーピー騒ぐし誰も面倒見るやつもいない。
友達の前では明るい自分の顔。
だって仕方ないじゃないか、そうでもしないと皆離れていくんだから。
ヘラヘラしてりゃ、一緒にいて楽しいと思ってもらえる。
つまんない認定された途端、ゴミ箱に捨てるかのように離れてく。
いや、そうでもないか。
いくら仮面を被っても、楽しいヤツを演じても結局は捨てられる。
用が済んだらみんな捨てるじゃないか。
夏だけは昔から違った。
あんまり口数が多いわけでもないけれど、どことなく仮面越しの自分を見てくれているような気がした。
ふざけて、騒げば、いつもよりうるさいとか
今日の千歳は気持ち悪いとか言ってくる。
やめてほしかった。
そんな風に言われたら。
自分を理解してくれるんじゃないか、見てくれているのかと期待してしまうから。
そんな風に入り込んではいけない。
自分でブレーキをかければかけるほど、どんどん夏のことばかり考えてしまっていた。
そんなのは嫌だ。
いつも通りにしていればこの平穏は保たれる。
ずっと、永遠に。
それで十分だったのに、どんどん心の黒いものが押し寄せてくる。
支配したい、自分のものにしたい。
俺を見て、俺だけ見て。
そんなこと叶うわけないって分かっているのに。
夏とあきの間にいるのが辛かった。
どんな仮面をして良いのか分からないし、被ったところで夏にはバレてしまいそうで。
それでも、ずっとヘラヘラして、なんとか取り繕っていた。
自分とは正反対で、何もしなくても心配され愛される真っ直ぐなあきが眩しかったし嫌だった。
羨んだって仕方ないのに、自分の欲しいものを全部持っているあきが羨ましくて悲しくなる。
でも、嫌いになんかなれないから、それなら自分がいなければ、我慢すれば。
そうしたらずっと三人で。
「俺も好きだよ」
先日、夏の口から出た言葉。
世界が変わったかのような、夢の夢かのような感覚。
本当だったのか、今も疑わしかった。
スマホの着信が鳴る。
「もしもし、千歳」
電話越しの相手は夏だった。
「なに?めずらしいね、夏から電話なんて」
嬉しいよりも驚いた。いつもなら自分から電話をかけるのに。
「いや、今何してんのかなって思って」
「バイト帰り。もう家帰るとこ」
「あの、さ」
「?」
しばらくの沈黙。
夏が何を言いたいのか全く分からない。
それと同時に、嫌な展開を勝手に脳内でめぐらせてしまった。
やっぱあの時のことは忘れてくれ
気の迷いだった
本当は嘘ついてた
やっぱり男同士なんて無理だ
そうやって、別れを切り出されるのかと思って怖くなった。
だから、嫌なんだ。
せっかく一緒になれても、終わりがあるなら最初から一緒にならないほうが良いんだ。
夏からの好きが今までで一番嬉しかったけど、それも壊れる未来があるなら無い方が良い。
「も~、なに?変な夏、具合でも悪いんじゃね?ゆっくり休めよ、じゃ、切るよ~」
続きの言葉が恐くて、でも平然を装って、そのまま切ろうとした。
「千歳」
「・・・なに」
心臓の音がうるさい。いつもより強く脈を打つ。
聞きたくない言葉が出てくるかもしれない。
「ごめん」
ほらね。
そんな言葉を聴くくらいならさっさと切ればよかった。いや、電話に出なければ良かった。
こんな、夏の言葉、態度ひとつでいちいち感情が揺さぶられる。
俺ってこんなに弱かったっけ。
どうして夏の前じゃ、うまく仮面を被れないのだろう。
「はは、なに謝ってんの、ウケる~。ゆっくり休みなよ、じゃ」
「あー、もう!待てって」
「なに、なんなの」
夏が電話越しで何度も深呼吸している。
「いや、あのさ…。今日の夜花火大会あるんだと。見に行かねえか」
ボソボソと照れくさそうに声が小さくなる。
は?花火大会?
「え、」
「いや、ごめん。花火ってガラじゃねぇよな。やっぱなし」
まったく、この男は。
「はぁー」
「なんで溜息ついてんだよ」
「驚かすなよ」
あぁ、ほら、また泣きそうになる。
もしかしたら、駄目かもしれないって諦めるたび夏は俺にそうやって手を引いてくる。
「嫌だった、か?」
「んなわけ」
「じゃ、決まり。バイクで向かえにいくから」
「ん、待ってる」
「あのさ」
「なに」
「そんな不安なるなよ」
「は~?何言って」
「ちゃんと、いるから。つーか誘うのめっちゃ勇気いたんだぞ、わかれよバカ。じゃ、夜な」
そういって通話が切れた。
あぁ。
俺が色々悪いこと考えて元気なかったのも、泣きそうになったのも、はぐらかそうとしたのも
夏には全部仮面越しに見透かされていたんだな。




