第14話 旅人と覚悟
【アンファング平野】。
そこは、空がやけに広い場所だった。
小川がさらさらと流れ、風に撫でられた草が波のように揺れている。
小鳥のさえずりが遠くから聞こえ、どこまでも続く緑の中に、一本の道だけがまっすぐ伸びていた。
その道を、二人の旅人が歩いている。
一人は青年。
名を、ディーン・アース。
年齢は十七。
身長は百七十二センチ。灰色の短髪に、簡素な道着を旅装束として整えた格好。細身だが、動くたびに無駄のない筋肉が衣服の下で静かに主張する。
腰には、よく使い込まれた剣。
性格は飄々としていて、どこか掴みどころがない。戦うことを嫌ってはいないし、むしろ楽しむ側だ。皮肉を言うこともあるが、根は義理堅く、面倒見のいい兄貴肌でもある。
もう一人は少女。
名を、アリア・セレイン。
年齢は十六。
身長は百五十八センチ。金色の長い髪と碧眼を持つ、小柄で華奢な美少女だ。
服装はシスター服を基調にしながら、旅と戦闘のための機能性を加えたもの。左右の腰には二丁の銃。さらに彼女は、傷を癒す回復魔法も扱える。
穏やかで心優しく、争いを好まない。誰かが傷つくことを強く嫌う。
だが、芯は強い。
これは間違っている。そう感じたことには、決して折れない。
そんな二人は今、交易都市トラーニュを目指して旅をしていた。
目的は、ディーンの修行。
外の世界を巡り、強い者と出会い、戦い、学ぶ。
そのための旅路だった。
「なぁアリア、トラーニュってのはどんなところなんだ?」
ディーンが歩きながら尋ねる。
アリアは人差し指を口元に当て、少し考えるように目を上に向けた。
「ん~とね、私も行ったことは無いんだけど、海が近くて、街の中に水路が通ってて、商業が盛んらしいよ!」
「ふーん」
ディーンの返事は、いまいち興味があるのかないのか分からない。
だがアリアはお構いなしだった。
「あとね、工芸品とか食べ物も有名で、【トラーニュグラス】とか【ピツァ】って言うのがあってね、それから……」
そこで、アリアは気づいた。
ディーンが、じっとこちらを見ている。
「……どうかしたの?」
きょとんとして聞く。
ディーンは少し笑った。
「いや、ずいぶん楽しそうに話すな~と思ってな」
「あ……」
アリアの頬が、少し赤くなる。
「実は、旅行に行くのが昔からの夢だったんだ~」
「だから俺について来たのか?」
「え? あ、その……」
言葉が詰まる。
本当は違う。
本当は、ディーンと一緒にいたいから。
十年ぶりに会えた人と、また離れたくなかったから。
けれど、そんなことを真っ直ぐ言えるほど、アリアはまだ強くない。
「あ! そうだね。私も旅したかったんだよね~」
目を逸らしながら答える。
「なるほどな……確かにそれなら納得いく!」
ディーンは疑うことなく、ぽん、と手を叩いた。
(わ、私のバカァーー!)
アリアは心の中で叫んだ。
そんなやり取りをしながら歩いていると、ディーンがふと足を止めた。
「ん~?」
目を細め、前方を指差す。
「おい、あれって……襲われてねえか?」
「え?」
アリアもその方向を見る。
平野の道の先。
積み荷を乗せた馬車が、複数人の男たちに取り囲まれていた。
男たちの手には武器。
身なりも荒く、商人ではない。
盗賊だ。
「大変!? ディーン、助けに行かなきゃ!」
アリアは言うなり走り出した。
「あ、ちょ……」
ディーンは止めようと手を伸ばす。
だがアリアは止まらない。
「……しょうがねぇな」
ディーンは肩をすくめ、すぐに後を追った。
---
「な、何なんだお前たちは!?」
ふくよかな中年の男性が、震える声で叫んでいた。
彼は荷馬車の前に立ち、両手を広げるようにして積み荷を守っている。
足は震えていた。
だが、逃げてはいない。
その周囲を、盗賊たちがにやにやと囲んでいる。
「何って、見れば分かるだろう?」
リーダー格らしき男が、不気味な笑みを浮かべる。
「さっさと積み荷を置いて失せろ。さもないと……お前らを殺さなくちゃならねぇ」
「これは村にとって大事な物資だ。お前たちなんかに渡すことなどできない!!」
男は震えながらも、勇ましく答えた。
盗賊は、楽しそうに目を細める。
「……そうか。じゃあしょうがねぇな」
その瞬間、別の盗賊が馬車から一人の少女を引きずり出した。
「いやぁ!! やめて! お父さん助けて!」
「!? フローラ! ぐっ……娘を放せ!」
「だったら何をすればいいか分かるだろう?」
「げ、外道め!」
「なんだその反抗的な態度は?」
盗賊は肩をすくめた。
「……しょうがねぇ。一人殺しておくか。おい!」
合図を受けた別の盗賊が、剣を振り上げる。
「や、やめろ!」
父親の叫びは届かない。
「いやぁぁ!!」
少女の悲鳴。
その瞬間だった。
盗賊の剣が、弾き飛ばされた。
「な、何だ!?」
盗賊は慌てて辺りを見回す。
すると、地面に小石が転がった。
「石?」
疑問を口にした直後、盗賊の視界の天地がひっくり返った。
「ぐお!? なっ、何だ!? ぐげぇ!」
盗賊は空中で逆さまになり、そのまま地面に落下して気絶した。
「? 何だ」
父親も驚く。
「なっ、何が起こってやがる!」
盗賊たちが怯え始めた。
次の瞬間、銃声が響いた。
一発。
二発。
三発。
「ぐぁっ!」
「ぐぉっ!!」
「痛ぇ!」
次々と盗賊が倒れる。
倒れた盗賊たちの太ももには、正確に銃弾が撃ち込まれていた。
「今度はどうした!?」
盗賊のリーダーが叫ぶ。
その視線の先から、一人の少女が歩いてきた。
アリアだ。
両手に銃。
表情は真剣だが、瞳の奥には強い意志がある。
「ディーン! 残ってるのはあと一人だよ」
「おぉ! 流石だなアリア。こっちの人質も無事だ!」
その少し後ろから、ディーンが歩いてくる。
彼は人質になっていた少女――フローラを連れていた。
「フローラっ!!」
「お父さん!」
二人は駆け寄り、涙ながらに抱き合った。
ディーンは最後に残った盗賊へ視線を移す。
「それで、お前はどうするんだ……」
「もう観念してください!」
アリアも銃を構える。
追い詰められた盗賊は、顔を引きつらせた。
「ま、待て! 俺に手を出したらどうなるか分かってるのか?」
声だけは大きい。
「俺はあの有名な盗賊ギルド【血濡れた翼】――ブラッド・ウィングの幹部候補だぞ! 俺に何かあったら、ギルドの奴が黙ってないぞ!!」
少しの静寂。
「……?」
「……?」
ディーンとアリアは、同じように首を傾げた。
田舎者で、里からほとんど出たことがないディーン。
そしてアリアもまた、アントスから遠く離れたことはほとんどない。
二人とも、よく分からなかった。
「よくわかんねぇけど」
ディーンが一歩前に出る。
「今ヤッちまえば、そのブラッドなんちゃらにも報告出来ねぇよな……」
低い声。
凄み。
盗賊の顔が青くなる。
「……ディーンやめて。あなたの方が犯罪ギルドよりよっぽど怖いよ……」
アリアが半目で止めた。
「……じゃあどうするか」
「うーん、そうだね。とりあえずこの人たちはここで縛っておいて、どこかの町の自警団の人にお願いしよう」
「なるほど。そんなのがあるんだな」
ディーンは感心する。
「じゃあそれでいこう……しかし、このまま大人しく縛られてはくれないよなぁ」
にやり。
アリアは悟った。
(あ、これはもう止まらないやつだ)
「ソ、ソウダネ~」
諦め気味に頷く。
「え? ま、待て! 待ってくれ! いや、待ってください!!」
盗賊の命乞いも虚しく――。
「ぎぃやぁー!!」
盗賊たちは、無事と言っていいのか微妙な状態で拘束された。
---
「この度は本当にありがとうございました!!」
ふくよかな男性が、深々と頭を下げる。
「ありがとうございました」
娘のフローラも、丁寧に頭を下げた。
「別に大したことはしてねぇよ。それよりロープ貸してくれてありがとな」
「いえいえ、これぐらい当然のことです。こちらの盗賊は、私が村に戻ったら別の町の自警団に依頼して回収させていただきますね」
「そうですか。ありがとうございます!」
アリアも頭を下げる。
「ところで、何かお礼をさせていただきたいのですが、よろしければ村まで来ては頂けないでしょうか?」
「いや、別に礼なんて――」
ディーンが断ろうとした瞬間、フローラが彼の腕を掴んだ。
「私からもお願いします」
上目遣い。
ディーンは困ったようにアリアを見る。
「……では、お世話になりましょう」
アリアは、若干諦めたように答えた。
二人は馬車の荷台に乗せてもらい、男性の村へ向かうことになった。
荷台の上で、アリアが少し頬を膨らませる。
「……ディーン、さっきフローラって子にデレデレしてたでしょう?」
「は!? んなわけないだろう?」
ディーンは少し驚いた顔をする。
「大体、俺はそういうのにはあんまり興味が無いっての!」
「それはそれで困るんだけどな……」
アリアは俯いて小さく呟く。
「ん? 何か言ったか?」
「何でもないです」
アリアはぷいっと横を向く。
少しして、ディーンが別の話題を出した。
「ところでアリア。一つ気になってんだけど、荷馬車ってのは結構襲われるもんなのか?」
「そうだね。盗賊からしたら食料だったり金品がいっぺんに手に入るから、効率が良いしね」
「なるほどな……実は前にも行商人を助けてよ。そん時は魔物だったけど」
「ふふ、なるほどね。魔物からしたら大量のごちそうだもんね」
「でもそれだったら、冒険者とか雇った方がいいんじゃないか?」
「それが出来ればいいんだけどね。そんな事できるのはお金持ちの人だけだよ……普通の人はそんなお金ないの」
「なるほどな……」
ディーンは少しだけ社会を学んだ。
その時、御者台から男性の声が聞こえた。
「そろそろ着きますよ~!」
馬車がゆっくりと速度を落とす。
「ここが私たちの村、【ビレッジ村】です」
紹介された村は、木造建築の家が並ぶ小さな場所だった。
道は最低限しか舗装されておらず、貧しさは隠せない。
だが、空気は穏やかだった。
「では私は村長に報告と、自警団への依頼をお願いしてきますので、娘のフローラと先に酒場で待っていてください」
「あの、私達お酒は……」
アリアが申し訳なさそうに言う。
フローラが明るく答えた。
「大丈夫ですよ。酒場と言っても、別にお酒を飲まなければいけない訳ではありませんし、食事を楽しむ場所として利用する方も多いですよ」
「そうなんですね!」
アリアの表情が明るくなる。
そこへ、ディーンがすぐ食いついた。
「何だ? 飯か?」
その瞬間、アリアが素早く念を押す。
「ディーン、私たちは飲み物だけにしようね?」
「お、おう」
気迫に押された。
「別に召し上がっていただいても大丈夫ですよ? お代は私が出させて――」
「いえ!! 大丈夫です。大変なことになってしまいますので!」
アリアが遮る。
脳裏に浮かんだのは、フレイの顔だった。
「??……そうですか。では後程」
男性は疑問を残しながら村長の所へ向かった。
「では、私たちも向かいましょうか」
フローラが案内する。
村の中心にある建物。
看板にはこう書かれていた。
【民衆酒場 プロースト】。
一階は酒場。
二階は宿屋らしい。
店に入ると、活気のいい声が飛んできた。
「いらっしゃい!」
中は賑やかだった。
飲み比べをしている者。
腕相撲で力比べをしている者。
笑い声、怒鳴り声、木杯のぶつかる音。
ディーンたちは席に着いた。
「本当に食事はいいんですか?」
フローラが心配そうに聞く。
「お? そうか? じゃあ――」
「いいんです! 大丈夫です!!」
アリアが遮る。
ディーンは少し落ち込んだ。
その時、店の奥から怒号が響いた。
「テメェふざけんじゃねぇぞ!! 今何て言った!?」
怒り狂う男が一人。
その前には、別の男が倒れていた。
仰向け。
顔はボコボコ。
それでも、妙にかっこつけた声で言う。
「だから言ってるだろう? ウエイトレスのお嬢さんが困ってるから、その不細工な顔を近づけるんじゃねぇよ」
「そういうのはなぁ、立って言うもんなんだよ!!」
「地面が俺のこと愛しちまって離してくれないんだよ」
その会話を見て、フローラがディーンへ言った。
「ディーンさん、助けてあげてください」
「え? 何で?」
「見たら分かるでしょ? あの人弱いんですよ~」
ディーンは倒れた男を見る。
(あのオッサンが弱い?)
違和感があった。
だが、頼まれた以上は仕方ない。
「……まぁしょうがない。分かったよ」
ディーンは立ち上がる。
「テメェ、いつまでもふざけやがって! ぶっ殺してやる!!」
怒れる男が武器を抜こうとした瞬間。
「【家伝体術・無流】」
男の動きが、ぴたりと止まった。
「おいアンタ……やりすぎだぜ」
「か、体が動かねぇ……!」
倒れていた男は、その様子を黙って見ていた。
驚きもせずに。
「これ以上やるなら俺が相手になるけど、どうする?」
返事はない。
「あ、そうか。今動けないのか」
ディーンは男の首から上だけ動けるようにした。
「わ、分かった! 俺が悪かった! 今日はもう帰るから、早く動けるようにしてくれ!」
「おう! 了解」
ディーンが解除すると、男はそそくさと店を出ていった。
「おい、オッサン大丈夫か?」
ディーンが振り返る。
だが、助けたはずの男はすでにそこにいなかった。
アリアとフローラの席にいた。
「素敵なお嬢さん、そしてフローラちゃん。オッサンと一緒にお食事でもいかがですか?」
アリアは戸惑う。
「え!? あの……」
「もうリューマさん、ナンパはやめてください!!」
フローラが叱る。
「ごめんね。ついかわいい子を見ちゃうとね」
男は悪びれもなく言う。
「おい、オッサン」
ディーンが後ろから肩に触れようとした。
その瞬間、男は振り向くことなく、くるりとディーンの後ろに回り込んで肩を組んだ。
(このオッサン、今振り返らなかったぞ……)
ディーンは内心で驚く。
「好青年もありがとね。オッサン危うく殺されちゃうところだったよ~」
「どうも胡散臭いオッサンだな」
「が~ん! オッサンショック……」
男は泣き真似をする。
「大丈夫ですか? もうディーン、ひどいこと言わないで」
アリアが庇う。
「あぁ、なんて優しくて素敵なお嬢さんなんだ。是非お名前を教えてくれませんか?」
男は膝をつき、手を差し出した。
「あ、私はアリア・セレインと申します。よろしくお願いします」
「アリア……なんて素敵な名前だ~。私の名前はリューマ。以後お見知り置きを」
リューマ。
身長は百七十八センチほど。細身。
派手な和風の衣装。左腰には刀。酒が入っているらしき瓢箪と、煙管を所持している。白髪混じりのぼさついた髪を後ろで一つにまとめた、胡散臭さが服を着て歩いているような男だった。
「ところでリューマさんは、ここの村出身の方なんですか?」
アリアが尋ねる。
「うんにゃ、俺はただの旅人よ~。どうしてそう思ったんだい?」
「いえ、服装が珍しかったので、もしかしたら違うところの方なのかと」
「お! 鋭いね~。正解!」
リューマは少し得意げに胸を張る。
「俺の出身地は【日の和】って小国なんだ。これはそこで着られている【和服】ってヤツなんだよ」
「へぇ~そうなんですか。すごいですね!」
異国の話に、アリアの目が輝く。
「女性用のもあるから、いつかプレゼントするぜ」
「え!? あ~、えっと……」
答えに困っていると、酒場の入口から声がした。
「あーいたいた! ディーンさーん」
先ほど助けた男性と、老人が入ってくる。
「あれ、来たのか? オッサン」
「はい……実は、お二方にお願いがありまして……」
男性は気まずそうに頭を下げる。
「助けていただいたのに大変申し訳ないのですが……」
「……まぁ、言ってみてくれよ」
「ここからは私が」
老人が前に出る。
「わしはこの村の村長、【ドルフ】と申します」
深く頭を下げた。
「まずは、ウチの村の者を助けて頂きありがとうございました。おかげさまで村は救われました」
そして、表情を重くする。
「その上で大変申し訳ないのですが……【血濡れた翼】ブラッド・ウィングの連中が、またこちらに向かってきているそうなんです」
「さっき倒した連中の仲間か」
「はい……この村は定期的に奴らの被害にあい続けています。どうか奴らを追い払って頂けないでしょうか?」
ディーンは黙った。
アリアがすぐに言う。
「ディーン、引き受けようよ! 困ってる人をほっとけないよ」
ディーンは、静かにアリアを見た。
「アリア」
声がいつもより低い。
「お前、人を殺せるのか?」
「……え?」
アリアがたじろぐ。
「相手はおそらく大人数で来る。さっきみたいに足だけ撃ってハイ終わりって訳にはいかない」
ディーンは続ける。
「そんな時、相手を殺せるか?」
「そ、それは……」
「前回は魔物相手だが、今回は人間だ」
まっすぐな問い。
「それでも殺せるか?」
「あの、えっと……」
アリアは言葉に詰まり、リューマを見る。
リューマはあっけらかんと言った。
「そこの青年の言ってる事は正しいぜ。相手は殺す気なんだ。そんな時に、こっちは殺したくないなんて通用しない」
アリアの胸が詰まる。
ディーンは村長ドルフへ視線を移した。
「それで、村長さん。それでも俺に人を殺して来いって言うのか?」
低い声が、酒場に響く。
ドルフは逃げなかった。
「……それでも、よろしくお願いします」
重い言葉だった。
彼は村長だ。
村人の命を預かっている。
だからこそ、目の前の青年に“人を殺してくれ”と頼んでいる。
その覚悟が、皺だらけの顔に刻まれていた。
ディーンはその言葉を聞き、にやりと笑った。
「……よし、引き受けた!!」
「!? ディーン、いいの?」
「あぁ。これで躊躇うぐらいの覚悟だったら、俺は断ろうと思っていた」
ディーンは静かに言う。
「でも、村長にも覚悟があるみたいだしな」
そして、アリアを見る。
「ただ、アリア。お前は残ってろ」
「……え?」
「殺す覚悟がないヤツは連れてけない」
「……」
待って。
私も連れて行って。
その言葉が、出なかった。
喉の奥で止まってしまった。
「……さて村長。そいつらは何処から来るんだ?」
「はい。おそらく、お二人が来た方向と逆方向。つまり村の奥の方角から来ると思われます」
「……よし、分かった」
ディーンは短く答える。
そして、リューマへ視線を向けた。
「オッサン?オッサンは嫌ーよ! か弱いんだから」
「分かってるっての!」
ディーンはすぐに視線を戻す。
「村長、案内してくれ」
「はい。こちらです」
村長ドルフは、ディーンと共に酒場を後にした。
扉が閉まる。
酒場に残されたアリアの横で、フローラが心配そうに声をかける。
「ディーンさんなら大丈夫ですよ! だから元気出してください」
「……はい。大丈夫です……ありがとうございます」
アリアは精一杯の作り笑顔を浮かべた。
けれど心の中では、嵐が渦巻いていた。
(私は、どうしたらよかったんだろう……)
困っている人を助けたい。
でも、人を殺す覚悟はない。
(ディーンを、一人で行かせるの……?)
アリアは、ただ立ち尽くしていた。
自分の優しさが、今だけは足枷のように思えた。
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第14話 了
こんにちは、申仁です。今回から私の好きなキャラリューマが出てきました。彼の活躍もしっかり考えていますのでよろしくお願いいたします。




