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没落令嬢、ダンジョンと結婚(契約)してしまった件~死に場所を探して入った穴が、意外と感度のいい旦那様でした~  作者: beens
第2章 大家(ドラゴン)が地下からクレームに来た件

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第80話 新入生は全員「チート持ち」。学級崩壊どころか「世界観」が崩壊します。

 【場所:私立ダンジョン学園 体育館(入学式会場)】

 【日時:4月上旬 桜の舞う朝】

「……田中さん。今年の新入生名簿、バグっていましてよ?」

 私は、壇上の来賓席でリストを二度見した。

 名前の横に書かれた「特記事項」が、あまりにも香ばしい。

 ・ヤマダ(元・社畜):スキル【全知全能】

 ・カトウ(元・高校生):スキル【即死魔法・極】

 ・サトウ(元・ニート):スキル【ハーレム構築EX】

「いえ、バグではありません。……最近、異世界からの『迷い人』が急増しておりまして。彼らは全員、前世の記憶と規格外の能力を持っているそうです」

 田中さんが、胃薬を飲みながら震えている。

 体育館を見渡すと、新入生たちは整列もせず、各々が勝手にポーズをとったり、虚空に向かって「ステータス・オープン」と呟いたりしている。

「フッ……。ここが新しいステージか。俺の『無双』が始まるな」

「やれやれ。また俺、何かやっちゃいました?」

 痛い。

 視界に入るだけで痛々しいオーラが充満している。

「……頭が痛いですわ。全員、自分が世界の中心だと思っている顔ですわ」

 私はマイクのスイッチを入れた。

「新入生の皆さん、ご入学おめでとう。理事長のベアトリスです。まずは入学金(金貨100枚)を……」

 ザワッ……!

 私の言葉を遮り、最前列の少年(髪が七色に光っている)が立ち上がった。

「金? くだらないな。俺はこの世界の『救世主』になる男だぞ? 金なんて、そこの石ころを錬金術でダイヤモンドに変えれば……」

 パチン!

 彼が指を鳴らすと、体育館の床が黄金に変わった。

「すげぇぇ! 無限錬金術だ!」

「俺もやる! 『創造魔法クリエイト』!」

 別の生徒が、虚空から伝説の聖剣を取り出す。

 さらに別の生徒は、「重力操作」で椅子を浮かせ始めた。

「……」

 入学式開始5分で、体育館は「チート能力の見本市」と化した。

 

 【衝突:主人公(笑)vs 現実(運営)】

「おいおい、理事長さんよぉ。俺たちを縛れると思ってるのか?」

 七色髪の少年が、宙に浮きながら私を見下ろした。

「俺の戦闘力は53万だ。この学園のルールなんて通用しない。……今日からここを、俺の『帝国』にする」

「「「そうだそうだ! 俺TUEEEさせろ!」」」

 新入生たちが一斉に蜂起した。

 彼らは強すぎる。通常の教師オークやゴブリンなら、指先一つで消し飛ぶだろう。

 しかし――。

「……はぁ。これだから『ゆとり転生者』は困りますの」

 私はため息をつき、扇子を閉じた。

 彼らは知らないのだ。

 この学園には、チートごときでは揺るがない「絶対強者」たちがいることを。

「先生方。……『教育指導』の時間ですわ」

 

 【迎撃:理不尽には理不尽を】

 ドゴォォォォン!!

 体育館の壁が吹き飛び、土煙の中から一人の男が現れた。

「……帝国だと? 笑わせるな」

 赤パン一丁のレオニダスだ。

 彼の背後には、不機嫌そうな魔王ヴァネスと、怪しい薬液を持ったクルミが控えている。

「あ? なんだその筋肉ダルマは。俺の『絶対防御結界』の前には……」

 七色髪の少年がバリアを展開する。

 核爆発すら防ぐ最強の盾だ。

「防御? 関係ない」

 レオニダスは、歩みを止めなかった。

 そのままバリアの前に立ち、デコピンの要領で指を弾いた。

「『マッスル・デコピン(物理貫通・概念破壊)』」

 パァァァァン!!

 ガラスが割れるような音と共に、絶対防御結界が粉砕された。

「な、なんだとォ!? 俺のスキルが無効化された!?」

「スキル? 魔法? 甘えるな! 筋肉リアルの前では、設定など紙切れ同然だ!」

 レオニダスが少年の顔面を鷲掴みにし、床に叩きつけた。

 ズドォォォン!!

「次! そこの『即死魔法』使い!」

「ひぃっ!? 『デス・スペル』! 死ね!」

「効かん! 俺の細胞は毎日死んで、超回復で蘇っている! 『メタボリック・イミュニティ(代謝免疫)』だ!」

 魔法が筋肉の表面で弾かれる。

 常識が通じないのは、転生者ではなく、この脳筋教師の方だった。

 

 【制圧:魔王の格】

「さて、次は余の番か」

 魔王ヴァネスが、優雅に鎌を振り上げた。

 彼女の目には、数千年の時を生きた本物の「支配者」の威圧感が宿っている。

「『ハーレム構築』だと? ……ふん。女を侍らせる前に、己の弱さを呪うがいい」

「うわぁぁ! 魅了スキルが効かない!?」

 ザシュッ!!

 鎌が一閃。

 ハーレム志望の少年の服だけが切り裂かれ、パンツ一丁になる。

「余の前で『最強』を名乗るなら、まずは星の一つでも砕いてみせろ。……できないなら、そこの雑巾がけから始めよ」

 圧倒的な「格」の違い。

 ただ強大な力を与えられただけの少年たちと、修羅場を潜り抜けてきた本物の怪物たちとの差だ。

 

 【実験:新たな素材】

 そして、逃げ惑う生徒たちの背後に、クルミが忍び寄る。

「へぇ……。『無限魔力』かぁ……。永久機関として使えるね」

「や、やめろ! 近づくな!」

「『鑑定スキル』? 私の研究データ、全部解析できるかな? 脳が焼き切れるかもよ?」

 クルミが謎のガス(自白剤入り)を噴射する。

「君たちの異世界の知識……全部吐いてもらうよ? 科学の発展のためにね!」

「「「ギャアアアア! この学校、魔境だァァァ!」」」

 

 【結末:そして社畜へ】

 数時間後。

 体育館には、正座させられた元・主人公たちの姿があった。

 彼らの顔からは「俺TUEEE」の覇気は消え、代わりに「社会の厳しさ」を知った従順な目が残っている。

「……反省しまして?」

 私は、彼らが錬金術で作った黄金の山(没収済み)に座り、見下ろした。

「は、はい……。調子に乗ってすみませんでした……」

「よろしい。ですが、破壊した体育館の修理費と、精神的苦痛への慰謝料。……合計、金貨1億枚になります」

「そ、そんな!? 払えません!」

「払えません? ……あら。貴方たちには素晴らしい『チート能力』があるではありませんか」

 私は契約書(労働契約書)の束を差し出した。

「無限に魔力が出るなら『発電所』で。怪力自慢は『土木工事』で。……死なない体なら『実験体』として。

 卒業まで、たっぷりと働いて返していただきますわよ?」

「「「NOォォォォォ!!」」」

 こうして、異世界転生者たちは、そのチート能力を「学園のインフラ維持」と「金策」のためにフル活用されることとなった。

 主人公補正も、このダンジョン・シティの資本主義(と暴力)の前では無力なのだ。

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