第79話 ホワイトデーの倍返し。「戦略級マシュマロ爆弾」が女子寮を焦土に変えます。
【場所:私立ダンジョン学園 男子寮屋上(最前線基地)】
【日時:3月14日 早朝】
「……風向き、良好。湿度、低め。……絶好の『空爆』日和ですわね」
私は、双眼鏡を覗きながら満足げに頷いた。
場所は男子寮の屋上。
そこには、殺気立った男子生徒たち(人間、オーク、ゴブリン等の混成部隊)が整列し、巨大な発射台を囲んでいた。
「オーナー。……これ、本当に『お返し』ですか? 完全に『攻城兵器』なんですが」
田中さんが、発射台に装填された「白い巨体」を見て震えている。
それは、直径5メートルを超える超圧縮マシュマロだ。
「ええ。彼らの『感謝(殺意)』が詰まっていますもの。……さあ、商売ですわよ」
私は拡声器を手に、男子生徒たちを煽った。
「諸君! 先月の悪夢を覚えていますか!? チョコに食われ、自我を奪われた屈辱を!」
「「「うおおおおおッ!! 許さねぇぇぇ!!」」」
「今日こそ『3倍返し』の時です! 女子寮に、甘くてフワフワな絶望を送りつけてやりなさい!」
【開戦:白き悪魔の投下】
男子たちのリーダー、オークのボブが鉢巻を締めて叫んだ。
「装填完了! 弾頭は『超膨張・形状記憶マシュマロ(3倍増殖タイプ)』だ!」
「目標、女子寮メインエントランス! ……撃てェェェェ!!」
ドォォォォォォン!!
巨大なカタパルトから、白い塊が射出された。
それは放物線を描き、朝日を浴びてキラキラと輝きながら――
ズドォォォォォン!!
女子寮の中庭に着弾した。
瞬間。
ブワァァァァッ!!
「きゃあああああ!?」
「な、なにこれ!? 膨らむ! どんどん膨らむぅぅ!」
着弾したマシュマロは、空気中の水分と魔素を吸って爆発的に膨張。
それは雪崩のごとく広がり、女子寮の窓、ドア、そして悲鳴を上げる女子生徒たちを、白く甘い弾力で埋め尽くしていった。
【反撃:お菓子戦争】
【場所:女子寮・バルコニー】
「……やってくれたね、男子ども」
マシュマロの海から顔を出したのは、白衣をベトベトにしたクルミだ。
彼女のメガネが、怒りで白く光った。
「ただで済むと思わないでよ……! 全員、迎撃体勢!」
「「「イエッサー!!」」」
埋もれていた女子生徒たちが、マシュマロを食い破って脱出する。
彼女たちの手には、対抗兵器が握られていた。
「これでも食らえ! 『徹甲・ハードキャンディ』!!」
ガガガガガガッ!!
女子たちが、ガトリングガンのように硬い飴玉を乱射する。
それは男子寮の壁を砕き、屋上の男子たちを襲った。
「痛ってェ! 飴が皮膚にめり込む!」
「甘い! でも痛い! 骨が折れる!」
「怯むな! 第二波装填! 『粘着キャラメル・ネット』を撃ち返せ!」
男子たちも負けじと、高温に熱したキャラメルを放水車で噴射する。
両寮の間にある中庭は、マシュマロと飴とキャラメルが混ざり合う、「地獄のフォンデュ鍋」と化した。
【介入:第三勢力】
戦況は泥沼化した。
校舎への被害甚大。このままでは、明日の卒業式を行う講堂までもが砂糖漬けになってしまう。
「……そろそろ潮時ですわね。田中さん、最終兵器の投入を」
「了解です。……彼なら、このカロリーを消費できるはず」
私が指を鳴らすと、戦場の上空からヘリコプターが飛来した。
そこから飛び降りたのは――。
「ヌオオオオオオッ!! 甘い匂いが俺を呼んでいるゥゥッ!!」
ドスゥゥゥン!!
中庭の「お菓子沼」に着地したのは、レオニダスだ。
彼は先月のチョコで味を占め、今日は「増量期」の仕上げに来ていた。
「見ろ! このマシュマロの弾力を! まるで極上のバランスボールだ!」
レオニダスは、自分より巨大なマシュマロの壁にタックルをかました。
バイィィィン!!
弾き返される。
「くっ! 柔らかい! だが、そこがいい!」
「先生! 邪魔しないでください! 今、女子寮を制圧するところなんです!」
「黙れボブ! 食べ物を粗末にするな! これは全て俺の筋肉の糧だ!」
レオニダスは、飛んでくる「徹甲キャンディ」を歯で噛み砕き、「粘着キャラメル」を体に塗ってテカテカになりながら、戦場を暴れ回った。
「『マシュマロ・プレス』!!」
「『キャンディ・クラッシュ』!!」
彼が動くたびに、両軍の兵器(お菓子)が消滅(胃袋へ)していく。
【結末:甘い卒業式】
翌日。3月15日。
卒業式当日。
講堂は半壊し、校庭は更地になっていた。
しかし、式典は無事に(?)開催された。
なぜなら、戦場の跡地に残った巨大なマシュマロが冷えて固まり、「純白の特設ステージ」となっていたからだ。
「……えー、本日は晴天なり」
私は、マシュマロ製の演台に立ち、ベトベトの卒業生たちを見下ろした。
男子も女子も、昨日の激戦で疲れ果て、お互いに寄りかかって眠っている者もいる。
(※糖分の摂りすぎで気絶しているだけ)
「貴方たちは、数々の試練(主に私が仕組んだ)を乗り越え、生きてこの日を迎えました。その生命力と、理不尽への耐性は、社会に出ても最強の武器となるでしょう」
私は、ボロボロの卒業証書(砂糖まみれ)を代表者に手渡した。
「卒業、おめでとう。……ちなみに、校舎の修繕費は、卒業生の『出世払い』として請求書を回しておきますわ」
「「「最後まで金かよ!!」」」
こうして、ダンジョン学園の一年は、甘い匂いと借金を残して幕を閉じた。
しかし、終わりは始まりに過ぎない。
春になれば、また新たなカモ(新入生)がやってくるのだから。
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