第76話 聖夜の攻防戦。「ブラック・サンタ」対「強欲な生徒たち」。
【場所:ダンジョン・シティ 中央広場(クリスマスマーケット開催中)】
【日時:12月24日 クリスマスイブ 22:00】
「……売れますわ。飛ぶように売れますわ」
私は、巨大なクリスマスツリー(魔力で発光するクリスタル製)の下で、シャンパンを片手に微笑んでいた。
広場はカップルや家族連れで賑わっている。
私がプロデュースした「聖なる水(ただの湧き水に赤いリボンを巻いただけ)」が、通常の10倍の価格で売れていく。
「オーナー。そろそろ店じまいしませんか? 『奴ら』が来る噂がありますよ」
田中さんが、空を気にしながら落ち着かない様子だ。
「奴ら? ……ああ、例の『悪い子にはお仕置きを』とか言ってる自警団気取りの連中?」
「ただの自警団じゃありません。『ブラック・サンタクロース軍団』です。彼らは、幸せそうな人々からプレゼントを強奪していくんです!」
その時だった。
ヒュルルルル……ドォォォォォン!!
夜空から、黒い塊が隕石のように落下してきた。
広場の石畳が砕け散り、砂煙が舞う。
『メリー・クルシミマス!! 愚かなリア充どもよ!!』
現れたのは、サングラスをかけ、黒い迷彩服を着た屈強な男たち。
彼らが乗っているのはソリではない。「装甲トナカイ戦車」だ。
「ヒャッハー! 金目の物は全部置いていけぇ!」
「プレゼントは没収だ! 俺たちの袋に入れろォ!」
ブラック・サンタたちが、巨大な吸引機のような武器を構え、客の商品や財布を吸い込み始めた。
「……あ?」
私の目の前で、本日の売上金が入った金庫が吸い込まれていく。
私の脳内で、何かが切れる音がした。
「……私の金を……奪いましたわね?」
私はインカムのスイッチを叩き割る勢いで押した。
「総員、戦闘配置! 客はどうでもいいから、私の売上と奴らの『袋』を奪い返しなさい!!」
「「「ウオオオオオオッ!!」」」
私の号令と共に、屋台の陰や路地裏から、完全武装した生徒たちが飛び出した。
彼らは「魔界の遠足」や「料理バトル」を生き抜いた精鋭だ。
「サンタだ! 獲物だ!」
「あの袋、四次元ポケットになってるぞ! レアアイテムだ!」
生徒たちの目が、サンタ以上に血走っている。
ブラック・サンタたちが怯んだ。
「な、なんだこのガキどもは!? 逃げないのか!?」
「逃げる? 馬鹿野郎! 俺たちはダンジョン学園だぞ!」
オークのボブが、トナカイ戦車の前に立ちはだかり、素手で突進を受け止めた。
ズドォォン!!
「ぬんッ! ……軽いな、トナカイ!」
「ば、馬鹿な! 戦車級の突進だぞ!?」
ボブはニヤリと笑い、トナカイの角を掴んで一本背負いした。
「次はお前だ、サンタ! その袋をよこせ!」
戦況は一瞬で逆転した。
広場のあちこちで、サンタ狩りが行われている。
「魔法科のみんな! 『イルミネーション・バインド(電飾拘束)』!」
クルミが杖を振ると、街中のイルミネーション・コードが蛇のように動き出し、サンタたちをぐるぐる巻きにした。
「ビリビリするだろぉ? さあ、実験体の捕獲完了だ!」
一方、レオニダスは、サンタのリーダー格と対峙していた。
「貴様……何者だ!?」
「通りすがりの体育教師だ。……貴様らに『本当のプレゼント』をくれてやる」
レオニダスは、サンタの帽子を被り、真っ赤な筋肉を見せつけた。
「筋肉という名の、一生モノの財産をなァ!」
「い、いらねぇぇぇ!」
リーダーがマシンガン(雪玉発射機)を乱射するが、レオニダスは胸筋だけで全て弾き返した。
バババババッ!
「貧弱ゥ! そんな雪玉で、この熱きハートは冷やせぬ!」
「ヒィィッ! 化け物か!」
レオニダスが間合いを詰め、強烈なハグ(ベアハッグ)を見舞う。
「『メリー・マッスル・クリスマス』ッ!!」
バキボキィッ……!(脊椎が悲鳴を上げる音)
「ギャアアアアアアア!!」
数分後。
広場には、身ぐるみ剥がされたブラック・サンタたちが、下着姿で雪の上に転がっていた。
「……さ、寒い……」
「ママ……帰りたい……」
一方、生徒たちはホクホク顔だ。
「やったぜ! この袋、マジで何でも入る!」
「戦車のパーツ、高く売れそうだな!」
「トナカイの肉、今夜の鍋にしようぜ!」
彼らはサンタから「武器」「袋」「乗り物」の全てを強奪していた。
これこそが、ダンジョン流のクリスマス・プレゼント交換会(一方的)である。
「……ふふふ。見事ですわ」
私は、回収された売上金と、サンタたちが他所で奪ってきた財宝の山を見て満足げに頷いた。
この軍資金があれば、来年の事業計画は盤石だ。
「田中さん。彼らのサンタ袋は、私の『保管庫』に入れておきなさい。……後で競売にかけます」
「……鬼ですか、あなたは」
数日後。大晦日。
街には平和が戻っていたが、ブラック・サンタ団の噂は「この街には近づくな」という怪談に変わっていた。
「……今年一年、本当に色々ありましたわね」
私は、お寺の鐘をつきながら、しみじみと振り返った。
「そうですね。……入学式から始まって、魔王復活、幽霊騒動、巨大昆虫……」
「来年はもっと稼ぎますわよ。……目標は『世界征服(経済的な)』ですわ」
ゴォォォォォン……!
鐘の音が響き渡り、新たな年が始まろうとしていた。
しかし、私の野望は終わらない。
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