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没落令嬢、ダンジョンと結婚(契約)してしまった件~死に場所を探して入った穴が、意外と感度のいい旦那様でした~  作者: beens
第2章 大家(ドラゴン)が地下からクレームに来た件

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第58話 魔女の工場は「爆発」が動力源。トースターが凶器になる日

 【場所:ダンジョン・シティ 第3区画「魔導工業地帯」】

 【日時:6月中旬 工場落成式】

「……オーナー。本当に彼女たちでいいんですか?」

 田中さんが、真新しい工場のゲート前で、青ざめた顔をして私に耳打ちした。

 目の前には、巨大な煙突から黒煙(魔力残滓)を上げる、鉄骨とレンガの巨大工場。

 そして、その前に並んでいるのは――。

「ヒャッハー! 火薬だ! マナだ! 起爆剤だァ!」

「赤! 世界はもっと赤く燃えるべきよぉ!」

 黒いローブをボロボロに着崩し、ゴーグルを装着し、手には杖ではなく「松明たいまつ」や「導火線」を持った、見るからにヤバい魔女たち。

 彼女たちは、王都の魔術アカデミーを「実験(爆破)」で追い出された、過激派魔女集団「レッド・イグニッション」だ。

「いいんですのよ、田中さん。彼女たちの『火力』は世界一。工場の動力源にはうってつけですわ」

 私は扇子を開き、リーダー格の魔女に声をかけた。

 赤い髪を逆立てた、小柄だが目つきの鋭い少女だ。

「貴女がリーダーのルビィですね? 契約内容は理解していますわね?」

「おうよ、オーナー! 要するに、このデカい釜に『爆裂魔法』をぶち込み続けりゃいいんだろ? 最高の仕事だぜ!」

 ルビィは、背負った巨大な杖(バズーカ型)を撫で回した。

「普通の魔法使いは『危ない』とか『近所迷惑』とか言うけどよぉ……ここは荒野だ! どれだけ爆発させても文句は言われねぇ!」

「ええ。存分にやりなさい。ただし、製品まで爆破したら給料から天引きですわよ」

 

 工場内。

 そこには、クルミが設計し、ドワーフたちが組み上げた最新鋭の生産ラインが広がっていた。

 目的は、ダンジョン特産品(カツ丼の冷凍パック、ポーション、魔導家電など)の大量生産だ。

「動力炉、接続よし。……ダンくん、冷却水の準備は?」

『いつでもいいよー。……なんか、嫌な予感しかしないけど』

 工場の隅で、ダンくん(3mゴーレム)が巨大な「冷却水タンク」を抱えて待機している。

「よし。……ルビィ、点火イグニッション!」

「オラァァァッ!! 私の魂の鼓動を聞けぇぇぇ!!」

 「エクスプロージョン・ドライブッ!!!」

 ズドォォォォォォォォォン!!!!!

 ルビィが動力炉に特大の爆裂魔法を叩き込んだ。

 普通の魔力エンジンなら「ブォォン……」と静かに回るところだが、彼女の魔法は物理的な衝撃(爆風)を伴う。

 ギュイイイイイイイイイン!!!!

 タービンが悲鳴を上げ、許容限界を超えた速度で回転を始めた。

「ちょ、出力が高すぎます! ベルトコンベアが……!」

 田中さんが叫ぶ。

 生産ラインが、目にも止まらぬ速さで動き出した。

 シュババババババババッ!!

「速い! ポーションの瓶詰めが追いつかないッス!」

 ラインの横にいたスケさんが、残像のような手つきで瓶をセットしようとするが、瓶が遠心力で弾き飛ばされ、壁に激突して割れる。

「あだだだッ! ガラス片が! 骨に刺さるッス!」


「……ふむ。生産速度は申し分ないわね」

 クルミは、飛び交う部品を避けながら冷静にデータを取っていた。

「でも、少し『元気』が良すぎるかしら」

「少しではありませんわ! 見なさい、あのトースターを!」

 ラインの最終工程。

 完成したばかりの「魔導トースター」が、テストのためにパンを焼いていた。

 チンッ!!(焼き上がり音)

 ズキューン!!!

 トースターから射出された食パンが、音速を超えて工場の天井を突き破った。

「……パンが、弾丸になりましたわ」

「素晴らしい火力ね。これならドラゴンの鱗も焼けるわ」

「朝食のたびに死人が出ますわよ!」

 次は、「全自動洗濯機」だ。

 ルビィの爆裂魔力を吸った洗濯機は、ドラムが光の速さで回転していた。

 ブォォォォォン!!

 中に入れた洗濯物が、遠心分離によって原子レベルまで分解され、消滅した。

「……汚れどころか、存在そのものを消し去りましたわ」

「究極の断捨離ね」

 

「ヒャハハハハ! もっとだ! もっと回れェェェ!」

 ルビィたちは、トランス状態で魔法を撃ち込み続けている。

 工場の室温が急上昇し、メーターがレッドゾーンを振り切った。

『警告。炉心溶融メルトダウンの危険アリ』

 ダンくんのナビ音声が響く。

「まずいですわ! 田中さん、ラインを止めて!」

「無理です! 止めたら反動で工場ごと吹き飛びます!」

「じゃあどうすれば!?」

「冷やすしかありません! ダンくん!」

『はいよッ!』

 ダンくんが、抱えていた冷却水タンク(数トン)を、暴走する動力炉にぶちまけた。

 ジュウゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!

 凄まじい水蒸気爆発。

 工場内が真っ白な蒸気に包まれた。

「ゴホッ、ゴホッ……! な、なんなのよもう……!」

 蒸気が晴れると、そこには――。

 熱暴走で真っ赤に焼けた機械と、燃え尽きて真っ白になった魔女たち。

 そして、奇跡的に完成した「製品の山」があった。

 

 翌日。

 ダンジョン・マートのアウトレットコーナーには、新たな商品が並んでいた。

 【新発売! エクストリーム家電シリーズ】

 ・高速トースター(※要・防弾チョッキ):パンが凶器になります。

 ・爆裂掃除機:ゴミだけでなく、床板も吸い込みます。

 ・超振動マッサージ機:骨が砕けるまで揉みます。

「……これ、売れるんですの?」

「それが、意外と好評でして……」

 田中さんが指差す先では、レオニダスやオークなどの「頑丈な客」たちが、こぞって商品を買い求めていた。

「うおっ! このトースター、スリル満点だぜ! 動体視力の訓練になる!」

「この掃除機、武器になるぞ! ダンジョン攻略に使える!」

 需要と供給の奇跡的な一致(?)。

 魔女たちの「爆発への愛」は、歪んだ形でダンジョンの収益に貢献することになったのだ。

「……まあ、売れるならヨシとしますか」

 私は、すすだらけの顔を拭いながら、分厚い札束を数えた。

 ダンジョン・シティは、今日も爆音と共に成長していく。

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