表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢、ダンジョンと結婚(契約)してしまった件~死に場所を探して入った穴が、意外と感度のいい旦那様でした~  作者: beens
第2章 大家(ドラゴン)が地下からクレームに来た件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/47

第37話 賢者の隠し湯は「裸の知識」が湧き出る、謎かけ温泉でした

 【場所:ダンジョン最下層・隠し通路の先】

 【現在DP:68,000】

「うわぁ……」

 ダン坊が転倒して見つけた隠し通路の先には、神秘的な光景が広がっていた。

 巨大な洞窟の中央に、エメラルドグリーンに輝く温泉が湧き出している。

 天井からは光が降り注ぎ、湯気は幻想的な光の帯となって舞い上がっていた。

「……これが『賢者の隠し湯』ですわね」

 私は日傘を畳み、その美しさに息を呑んだ。

 肌で感じる魔力の濃度が違う。ここには、特別な力が宿っている。

「分析完了。この湯には、特殊な「情報伝達性魔力粒子」が含まれているわ。入浴することで、脳内の情報処理能力が向上する可能性がある」

「つまり……頭が良くなるってことッスか!?」

 スケさんが目を輝かせた。

 その時だった。

 チャプン……。

 湯の中から、小さな人影がゆっくりと現れた。

 水色の髪を持つ、幼い少女の姿。

 だが、その頭には巨大な「木桶」を逆さまにしたような帽子を被り、手には光る杖を持っている。

『よくぞここまで辿り着きました。我は、この『賢者の隠し湯』を守りし精霊、ユドロ』

「精霊ですって?」

 ユドロは、キラキラと目を輝かせながら、私たちをじっと見つめた。

『さあ、賢者の湯に入りなさい。ただし、この湯に入るには、我の出す「謎かけ」を解かねばならぬ』

『また面倒なのが出てきたぞ……』

 ダン坊の顔(スマホ画面)に、呆れた顔文字が表示された。

「謎かけ、ですって?」

『うむ。もし解けねば……罰として、「裸で踊りながら湯の周りを三周」してもらう!』

「は!?」

 私は思わず声が出た。

 なんてはしたない罰則だ!

『さあ、第一問!』

 ユドロは杖をキラキラと振った。

『我が友は、常に私を温めてくれる。決して裏切らず、何も言わず、ただひたすらに熱い。さて、この「友」とは誰ぞ?』

 シーン……。

 その場に、重苦しい沈黙が訪れた。

 ユドロは首を傾げた。

『……難しいか?』

「い、いいえ。あまりにも……」

 あまりにも、どストレートすぎる謎かけだ。

 誰もが顔を見合わせる。

 私が答える前に、クルミがクールに手を挙げた。

「はい。その友とは……『湯』。つまり『賢者の隠し湯』のことね」

『おお! 正解! さすがクルミ殿! 頭が良き者と見受けたり!』

 ユドロがパチパチと拍手をした。

 クルミは得意げな顔をしている。

「ふん。当然よ。私の解析能力チートに、こんな低レベルな謎かけが通じるわけがないわ」

 よし、これならいける。

 クルミの知識力があれば、どんな謎かけも解けるはずだ。

『では、第二問!』

 ユドロは、キラキラと目を輝かせた。

『常に冷たい顔をしておるが、実は一番熱い心を持つ。巨大な体でダンジョンを守るが、水場では浮き輪を手放せぬ。さて、これは誰ぞ?』

 ピクッ。

 グランの眉がピクリと動いた。

 彼は、仏頂面で湯を見つめている。

「……グラン様、貴方のことですわね」

「黙れ。ボクはカナヅチではない」

 クルミが自信満々に手を挙げた。

「はい! その答えは……『大家グラン』!」

『おお! 正解!』

 ユドロが再び拍手をした。

 グランは顔を背けて、不機嫌そうだ。

「ふん。こんな分かりやすい謎かけばかりでは、時間の無駄だわ」

「その通りですわ。そろそろ入浴させていただけません?」

 私が言うと、ユドロはフッと笑った。

『くくく……。では、最後の一問! これを解けば、湯に入ることを許そう。……ただし、これは「魂の謎かけ」じゃ。己の心と向き合って答えるが良い』

 ユドロの表情が、一瞬だけ真剣なものに変わった。

 湯の輝きが増し、周囲の魔力が濃くなる。

『……世界を支配したいと願う者も、世界を変えたいと願う者も、すべては己の欲望のため。では、汝の欲望とは何か? ……何を求めて、このダンジョンを経営している?』

 シーン……。

 重い沈黙が、洞窟を包み込んだ。

 これは、これまでの謎かけとは違う。

 クルミは、解析しようと脳をフル回転させるが、答えが出ない。

 スケさんや田中さんも、困惑した顔で私を見ている。

 何を求めて、ダンジョンを経営しているのか?

 お金? 権力? 承認欲求?

 私は、自分の心に問いかけた。

 そして、フッと笑った。

「私の欲望、ですって?」

 私は、湯の前に進み出た。

 そして、顔を上げた。

「私の欲望は、『優雅なニート生活』ですわ」

 ピクッ。

 ユドロの眉が跳ね上がった。

「そのために、私はダンジョンを経営し、金を稼ぎ、従業員を増やし、設備を近代化する。すべては、私が何もしなくても、このダンジョンが勝手に回り、私に莫大な富をもたらしてくれる『不労所得システム』を構築するためですわ」

『ええっ!?』

 ダンくんのスマホ画面に、驚愕の顔文字が表示された。

 クルミは、目を見開いて私を見つめている。

「つまり、私の最終目標は、この玉座でティーカップを傾けながら、『世界で最も優雅で、最も働かない経営者』になること。……それが私の、正真正銘の『欲望』ですわ!」

 私が言い放った瞬間。

 ユドロは、目を見開き、そして――

 ケラケラケラケラッ!!

 腹を抱えて笑い出した。

『おお! 大正解! 素晴らしい! なんと清々しく、かつ邪悪な欲望か!』

 ユドロは、杖を高く掲げた。

『見事! 我の謎かけを解いた者は、貴様が初めてじゃ! さあ、我が友よ! 存分に湯を楽しみ、己が知識を深めるが良い!』

 ユドロの言葉と共に、湯がさらに強く輝いた。

 

「……はぁ。疲れましたわ」

 湯の中にゆっくりと足を踏み入れた。

 湯は温かく、肌に優しい。

 頭の中に、知識が流れ込んでくるのが分かる。

 それは、ダンジョンの効率的な運営方法や、新たなビジネスモデル、そして……。

「……あら? この『温泉旅館経営論』は?」

「ベアトリス様、それ、コミケの新刊ネタになりますよ!」

 田中さんが湯の中から叫んだ。

 

 湯から上がった私たちは、皆、頭がスッキリとしていた。

 特にスケさん。

「俺、英語が喋れるッス! 『ハロー、マイフレンド! ボーン・トゥ・ビー・ワイルド!』」

「なぜその単語を覚えましたの……?」

 クルミも、湯に入ってさらに進化したようだ。

「……ふふ。湯の解析が完了したわ。これで『情報伝達性魔力粒子』を、自在に操れるようになる。……ダンくんの身体を、もっと効率的にカスタマイズできるわね♥」

『やめろぉぉぉ!』

 グランは、入浴後も不機嫌そうだ。

「……何故だ。ボクだけ、カツ丼のレシピしか思い浮かばないんだが?」

「それはグラン様の純粋な食欲が、湯の知識をフィルタリングした結果ですわ」

 そしてピノは。

「……うぅ。この湯、集中力が上がる……。徹夜でゲームしても疲れにくい……。ここを私の『専用湯』にしたい……」

 新たなニート拠点を見つけ、目を輝かせている。

「さて、この湯は、ダンジョンの新たな観光名所になるでしょう」

 私は、湯から得た知識を元に、新たな企画書を書き始めた。

 『賢者の隠し湯』の発見。

 それは、私の「優雅なニート生活」に、また一歩近づく大きな足跡となるだろう。

『……このダンジョン、どこに向かってるんだ』

 ダンくんの呟きは、湯気の向こうに消えていった。

更新通知を受け取りたい方は、ぜひブックマークをお願いします!

「続きが気になる」「面白い」と思っていただけたら、下の☆☆☆☆☆から評価をいただけると、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ