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没落令嬢、ダンジョンと結婚(契約)してしまった件~死に場所を探して入った穴が、意外と感度のいい旦那様でした~  作者: beens
第2章 大家(ドラゴン)が地下からクレームに来た件

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第21話 著作権侵害は、「コミケ」で解決しますわ!

「ここが『とれのあな』……!」

 私が指差した先には、黄色い看板の、いかにも普通の店があった。

 まさか、こんな場所で私の秘められた入浴姿が売買されているとは。

 この建物の裏には、きっと「闇の商会」が潜んでいるに違いない。

「お、おいベアトリス! 店員のお兄さんが怯えてるから、その扇子を剣みたいに構えるのやめてくれ!」

「ひぃぃぃっ! 私が悪かったですぅ! お風呂に入った私が悪かったんですぅ!」

「だらしないわね。スケさん!」

「オッス! 行くッスかマスター! 著作権侵害には、著作権パンチッス!」

 私は、レジの向こうで青ざめている店員を睨みつけた。

「そこの貴方! 店長を呼びなさい! 私の肖像権を侵害した罪は重いですわよ!」

「え、ええと……お客様。何か……ご不満でも?」

 店員が震える声で尋ねる。

 私は、先ほど手に入れた「同人誌(私の入浴シーンが描かれた本)」をカウンターに叩きつけた。

「この本よ! 私の許可なく、私の物語を盗み、あまつさえエッチな絵まで描き散らかしている! どういうことですの!?」

 店員の目が、同人誌を見て点になった。

 そして、数秒後。

 彼は顔を真っ赤にして、私に深々と頭を下げた。

「も、申し訳ありません! しかし、こちらは当店のオリジナル商品ではなく……『二次創作』というものでして……」

「二次創作?」

「はい! この物語は、実は『深夜アニメ』として大人気でして……。そのファンの方が、ご自身の解釈で制作されたものなんです!」

「アニメ……?」

 ダンくんの声が、私の頭の中に響く。

『ベアトリス、その店員の言う通りだ。俺のいた世界では、君たちのダンジョンライフがアニメ化されて、大人気だったんだ!』

「なんですってぇぇぇ!?」

 私の生活が、アニメに?

 つまり、あの騎士団との戦いも、エルザとの温泉交流も、魔王との給湯契約も、全て「物語」として公開されていたと?

「……信じられませんわ。そんな馬鹿なことが……」

 私が呆然としていると、店の奥から、もう一人、ベテランらしき店員が現れた。

 彼は私の同人誌を見ると、目を輝かせた。

「おお! これは名作『没落令嬢とポンコツダンジョン』のお風呂回じゃないですか! 表紙のベアトリス様も最高にエッチで……おっと失礼」

「ッッッ!!!」

 私の顔が、怒りで真っ赤に染まった。

 この男、私の物語を知っているだけでなく、私を「エッチ」と形容した!

「貴様ぁぁぁ!!」

 私は扇子を構え、店員に詰め寄った。

「私の尊厳をここまで踏みにじっておいて、どういうつもりですの!? 貴様の店ごと燃やして差し上げますわ!」

「ひ、ひぃぃ! お、お客様! お許しくださいぃ! 私たちは、二次創作を愛する、ただのオタクでして……!」

 店員は、必死にオタク文化について説明を始めた。

 著作権法、コミックマーケット、同人サークル、ファン活動……。

 私の理解を超える、奇妙な単語の羅列だった。

「……つまり、貴方たちは、私の物語を『愛している』から、勝手に物語を作り、勝手に絵を描いている、と?」

「はい! その通りです!」

「そして、それを『コミックマーケット』という祭典で発表し、お金にしている、と?」

「ええ! 一年に二回開催される、世界最大級のオタクの祭典です!」

 私の頭の中で、何かが閃いた。

 祭り。創作。そして、お金。

 これは……商機ではないか?

「ふふふ……。面白い」

 私は扇子をパチンと閉じた。

「よろしい。貴方たちの言っていることが真実ならば、私は貴方たちを許しましょう」

「ま、マジっすか!?」

「その代わり――」

 私は、ニヤリと笑った。

「次の『コミックマーケット』とやらに、私も参加しますわ。そして、私の『真の物語』を、貴方たちに見せて差し上げましょう!」

「えええ!?」

「スケさん! メラン! そして田中さん!」

 私が振り返ると、部下たちは緊張した面持ちで立っていた。

「私のダンジョンライフは、誰にも真似できない、本物の物語よ! この異世界で、私の『伝説』を、この手で描いてやるわ!」

「マ、マスター……。マジで漫画家になるッスか!?」

「ひぃっ! 絵とか描けないですぅ!」

「俺、背景とベタ塗りは得意です! トーンも貼れます!」

 こうして、公爵令嬢ベアトリスは、異世界で「同人作家」になるという、新たな野望を抱いたのだった。

 ダンくんの過去の因縁?

 「アカシック」だか「オタクシック」だか知らないけれど、私の『原稿』を落としたら許さないわ!

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