帰り道。女の子になる私
帰り道、なぜか優斗の背中に乗っている私。別に「乗せろ」と言った覚えはない。ただ、1時間も歩いたからなのか、疲れていたのか、今は優斗の背中の上でうとうとしてる。
「帰ったら風呂だな。先入るだろ?」と問いかけてくる優斗。先入れよ。あんた、びしょ濡れだし、俺よりも薄着だから。
「優斗なら洗ってくれても良いんだよ?」と小声で漏れ出した本音に「ちょっ、今、それ言うか?何言ってるか分かってるのか?」と返された。
わかってる。でも、旬が来ちゃったんだから仕方ないよね?だって本当はずっと前から、その覚悟は決まってたから。
てか、自分から「食べてください」というのは意外と恥ずかしいんだな。男の頃の自分に言いたい。あの時は、自分本位に「女の子から言えよ」と思っていた。
だが、それは無理があるだろ!と思う。だって、もと男の俺でさえ……恥ずかしい、から。好きな人には好きなままで居てほしいよね?なんか性欲を自分から出してしまったら嫌われないかな?って不安になってしまう。
だから、思う。女の子から誘うのって勇気いるんだよ!!っと。
てか、なんで傘持って来なかったんだよ。持って来いよ。
「だって、2人ともびしょ濡れだし、待ってる間に風邪引いちゃうよ。だから………」
何だか照れ臭くて小さくなった声に優斗が「そうか。アニキの信念の剣握っていいんだな?」とイタズラっぽく笑う。
えっ?あれ、漏れてたのかよ。
「信念の剣が股に生えた気がする」とかいうTSテンプレでやるには比喩の効きすぎた恥ずかしいセリフが!!
「握るんだったら、俺の人生の手綱ごと全部!!責任取りやがれ!!握って来るならお前んちの墓まで飛び込んでやる。だからお前も握るなら俺んちの墓に入る覚悟決めやがれ!!」
照れくさくなって大声で言いたい本音全部出たけど、女の子のセリフとしてこれで良いのかな?
「おう。墓でも何でも一緒に入ってやる。でも、まずは風呂、……だよな。遅くなったが、……その……全部好きだからな。……肉まんで跳ねる猫舌も、……ストロンチウム(笑)……とかいう寝言も……寝息も…男っぽいセリフも……すぐ照れるとこも…………」
優斗のセリフに恥ずかしくなった俺は「やめろ。……その…ありがと……。私も、ずっと前から好きだった。お前のその嗄れた声も、俺よりも大きな手も男らしい毛深さも……」と優斗の告白を遮ってやった。
激甘過ぎる空気のまま、優斗の……いや、『俺たちの家』に着いてしまった。甘い……照れる。でも、悪くないし、何だか胸より少し下あたりが暖かくなった気がした。
「風呂、……どうする?」と優斗が聞いてきたから、「一緒が……良い。でも、着いたのにゴメンだけど、下着買わないとないかも……」と自分でも驚くほど女の子の返しをしてしまった。
「了解。一緒に行くだろ?あと、あったかい飲み物買っとけよ。体冷えるだろ?」
こいつ、童貞の癖に何故か気遣いができる。まあ、俺よりはモテないんですけどね!!俺のほうがモテたから。
そんな内心とは裏腹に「……あり…がと…。……えっと……、アレ!!」と何とも不器用な返しになってしまった。
結局下着セットと温かいココアを買った。優斗に「蓋開けてもすぐ飲むなよ。やけどするぞ」と待てをされた。そんなに自制できない人じゃない。
「ザッヴァ」
「だから言っただろ?口写しで飲むか?」と優斗に言われて、コクンと頷く私。もういいや。だってあったかくなりたいんだもの。
飲んだココアは冷えてるはずなのに何故か熱くて、猫舌が起きないのに、全身があったかくなってしまう。
コンビニの前で何してるんだろう。でも、何だか悪く無い。コイツも手が震えてるし、俺の……いや、私の心臓もうるさい。
「帰ろ♡私たちの家に」と上目遣いすると、「おう。風呂入らないとな」と雨で冷えた体が雨を蒸発させそうなほどに熱くなってきた。
ココアの熱は心に灯っていた。




