表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生するなら貴族の飼い猫でしょ  作者: 描空
魔神教団編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

255/257

255話 信用

俺たちは魔神が人間の国について疎いということだったので話をすることにした。その時女神の声が聞こえてきた。


(相手は魔神ですよ。くれぐれも信用し過ぎないように)


(分かってます)


俺は相手は魔神だということを念頭に置いて話をすることにした。魔神と話をするために魔神教団の家屋に入りゆっくりできるスペースで話をすることにした。


「それじゃあ僕たちが旅をしてきた経験から話そうかな」


リベルがエクサフォン国から話し始めた。リベルは自分たちの冒険譚を聞くことでどんなことをしてきたのかや国について詳しくなれると思ったのだろう。エクサフォン国の学園に通ってきたことからジュナたちと仲間になったことなどざっくりと話をした。魔神は都度相槌を打ったり質問をしたりした。リベルが覚えておらず質問に答えられない時は俺たちの誰かがこうだったよと答えてあげた。その様子を見て魔神は呟いた。


「貴様らは本当に仲が良いのだな。本当に人間と魔の付く者たちは仲良くできるかも知れないな……」


黄昏るような浸るような感じで言った魔神に俺たちはふふっと笑ったり仲良くできるよと声をかけた。


リベルが冒険譚の続きを話し始めた。魔族の国(ラクシャスディシュ)に行き、初めて魔族の方たちと交流を持ち、魔族も人間も違うのは外見だけだと気がついたことを話した。その時、リベルがカサムラーに向かって問うた。


「そう言えばさ、何でカサムラーは魔族の国の人たちを殺したりしたの?」


魔神はリベルの発言に驚きを隠さずにいた。それはカサムラーも同じだった。カサムラーには何か事情があってあんなことをしたんだと思っていた俺は何も聞かないようにしていた。でも、何であんなことをしたのかは気になっていたのでこの場で話してくれるのならスッキリできると思いカサムラーの話を聞く体勢を取った。その時、魔神がカサムラーを睨みながら言った。


「悪魔とは言え罪のない魔族を大勢、しかも、彼らの国の目立つ所でやったんじゃないだろうな?」


「……」


カサムラーは何も言えずにただ俯いていた。すると、魔神が徐に立ち上がりカサムラーの前に立った。俺は魔神がカサムラーを殺すんじゃないかと思って二人の間に割って入った。


「以前のカサムラーがどんな思いでやったのかは分かりませんけど、今はこんなにも優しく思いやりのある良いやつになったんですからいいじゃないですか」


俺がそう言うと魔神は椅子に座り言った。


「人間と魔の付く者が共存していくにはこのような被害を受け入れるしかない状況になりかねない。その時は魔族だったが、他の悪魔が人間を襲う可能性だってある。その時、人間は魔の付く者たちを許してくれるのか?」


正直言って無理だと思った。人間と魔の付く者では価値観や倫理観など全てが違うと言っても過言ではない。でも、皆がそうというわけではない。優しい魔族もいれば人間が嫌いな魔族もいるだろう。そう考えると、人間と魔の付く者は共存ではなく無関係なのが一番なのではないかと思えた。俺はどうしたら丸く治るのか考え過ぎて頭がパンクしそうだった。


「やはり共存は難しいか……」


魔神がそう呟いた。俺たちは肯定することも否定することもできなかった。その頃にはもうすっかり魔神のことを信用していた。さっきまで闘っていたのが嘘のように話をし共に未来について考え始めた。魔神は知見をもっと深めるために俺たちに旅の話をもっとしてくれと頼んできた。俺たちは人間と魔の付く者が共存できる世界のために魔神に各国の話をした。話し終えた頃にはさっきまでの闘いで消費した魔力は全て回復していた。


「いやー、実に有意義な話だったよありがとう」


魔神がそう言うとキッチンに足を運んだ。お腹空いたのかなと思い俺もキッチンに向かった。


「何か作ろうか?」


「……良いのか?」


「良いよ」


俺が魔神に問うと魔神は少し躊躇いながら答えた。俺は快諾してファンタジーリュックから食材を取り出した。ユディも料理を作るのを手伝ってくれた。そのおかげで良い物が作れ俺たちは食卓を囲んだ。食べながら雑談をして魔神がどんな思いで人間と共存しようとしているのかを聞くことにした。


「魔神は人間と共存していく上でどんな世界になって欲しいんだ?」


「やはり争いはなく皆が楽しい世界だな」


そんな話をして俺たちは魔神を信用しきってしまった。それが間違いだった。俺たちが料理を食べゆっくりしていると魔神が俺たちの前に立ち上がり右手を前に突き出し言った。


「ありがとう、これで我は実力と知識どちらを取っても世界最強になれた」


俺たちが何をしているのか理解できていないその刹那、魔神の瞳孔が光った。俺は何も理解できていないまま死んだ。なぜ死んだのに気がついたのかと言うと、俺が目を開けるとそこに女神がいたからだ。俺は何が起こったのか理解できなかった。魔神の瞳孔が光ったと思った時には女神の目の前にいたのだから。俺が現状を理解できていないのを理解した女神が俺の両肩を持ち現状を話してくれた。


「魔神があなた()()を殺しました」


俺は女神の言葉にようやく理解が追いついた。そして、俺は自然と涙が流れた。俺は泣きじゃくりながら女神に聞いた。


「リベルは!? みんなはどうなったんですか!?」


女神は首を横に振った。俺は現実を理解してさらに泣いた。大声をあげて泣いた。リベルがみんなが死んだのだ。俺はその現実を受け入れたくない。でも、その現実は変わらない。俺はどうしようもできない事実に、変えようのない現実に泣いて現実逃避するしかなかった。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


女神は俺を抱きしめて何度も何度も謝った。俺に女神の謝罪の言葉は聞こえておらず俺はただただ泣いた。しばらく泣いて俺の涙が枯れて泣きたくても泣けなくなった時、俺の背後から声が聞こえてきた。


「リフォン君……」


その声は猫の神様だった。


「神様……俺……どうしたら良かったんですか……?」


俺は女神の腕の中から離れて猫の神様に縋るように言った。


「僕からも警戒するように言っておけば良かった……本当に申し訳ない……」


俺はどうしても現実を受け入れることができなかった。俺は生き返れるから死ぬのは良いが、リベルたちは生き返ることができない。俺だけ生き返っても意味がない。こんなことならダンジョンでイシュに殺された時に死んでいたら良かったと思った。こんなに辛い思いをするぐらいならさっさと死んでおけば良かった。俺がそんなことを思っていると女神が言った。


「リフォン……前を向きなさいなんてこと軽々しく言えないけど、あなたにはまだ命が残っている。どうにかできるのか分からないけど、試してみない?」


「どうやって……俺一人で魔神に勝てると思います……?」


俺は泣き疲れて体力も気力も無くなってしまったため言い返すのにも力が入らず、弱々しい声で言うしかなかった。


「何か道具とか方法を探そう」


猫の神様が言った。俺はもう無理だと諦めたくなった。でも、女神と猫の神様はどうにかできないかと話し合っていた。俺はリベルたちを失った悲しみに立ち上がることができず、地面で丸くなり自己嫌悪に陥った。何で魔神を信用したのか、何で女神の警告を念頭に置いていたのに忘れたのかそんなことを考えていたら女神が俺が背負っていたファンタジーリュックに指を刺しながら言った。


「そのリュックの中には何が入ってるの?」


「……旅で買った物とか色々です」


俺は真面目に返事する気もなく適当に答えた。


「見せてもらっても?」


俺はファンタジーリュックを女神に渡し再び地面に丸くなった。すると、猫の神様が俺の横に来た。猫の神様は俺を軽々と持ち上げるお腹の上に優しく寝かされた。俺はモフモフな毛と柔らかなお腹の感触に少し心が落ち着いた。泣きまくって疲れが溜まっていたため俺は少しだけ猫の神様のお腹の上で眠った。


「リフォン、起きて!」


俺は女神の大声に驚いて目を覚ました。女神は手に懐かしい魔導書を持っていた。それはリベルが一年生の頃に行ったオークションで落札した魔導書だった。あの時女神が買った方が良いと唆して何の役にも立たなかったなと思っていると女神が話し始めた。


「これは賢者が使える全ての魔法が記されている賢者の魔導書という魔導書なんです。これがあればもしかするかも知れませんよ」


俺は女神の言葉に一瞬希望があるように感じたが、俺では賢者の魔法を再現できるほど魔力は多くなく技術もない。俺は現実はこうだと女神に言った。


「俺に賢者の魔法は使えないよ……」


俺が体を起こしながら言うと女神は俺の胸元を注視した。俺は何だと思い胸元を見た。そこには今までの旅で得たネックレスがあった。今思えば何でこんなにも複数のネックレスを付けているんだと思っていると、女神が一つのネックレスを指差して言った。


「それって……」


それは歯車が二つ噛み合ったアーティファクトのネックレスだった。エクサフォン国で迷宮にいたドワーフたちを救った報酬として貰った物だ。ドワーフたち魔神に殺されてないかななどと思っていると女神が興奮気味に言った。


「それは魔力量に応じて時間を巻き戻ることができる時の歯車というアーティファクト! 今思い出した。これを使えばみんなを助けられる!」


「マジ!?」


俺は女神の言葉に心の底から驚きの言葉が漏れた。俺は今すぐみんなを助けたいと思い時の歯車に魔力を流そうとした。でも、それは女神によって止められた。


「まずは作戦会議です! 急いては事を仕損じるというでしょう?」


「わ、分かりました……」


俺は希望が見えて舞い上がってしまった自分を抑えた。ごく僅かな勝ち筋を自分のせいで潰えさせるわけにはいかない。リベルたちの生死もかかっているのだから、こういう時こそ冷静になれと自分に言い聞かせた。

次回もお楽しみに


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ