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8 死体の山

 確かに、女魔王は人間の敵で悪だった。


 それでも、強制されたとはいえ、肌を合わせた女には情がわく。


 それと、

「……魔族も、あのリラにはめられたんじゃないのか? ――転移ポータル? 何でここに!?」


 俺様が考えていると、そばに魔方陣があった。


 もう全てが仕組まれているとしか思えなかった。いまだにリラの意図は分からない。


 罠かと疑ったが、ココに残ってもしょうがないので、俺様は転移ポータルに飛び込むしかなかった。



 ……着いた場所は王都から外れた荒野だった。


 辺りを見回し、近くにはぐれ馬がいたので、エサを与えて手なずける。


 俺様は馬に乗り、嫁と子供達を探すことにする。


 死ぬつもりではいたが、帝国軍も魔物達も消えたので、気がかりなのは家族だけだ。


 もう俺様には、それしか残っていない。探しだすのは簡単だ。


 王都から離れた町か村に逃げるはずなので、街道を進めばいい。


 それに馬車のわだちが残っているので、これをたどっていけば会えるだろう。


 俺様は馬を走らせる。



 ……三日後、顔をしかめる光景を俺様は見ることになる。


 途中立ち寄った村が、盗賊に襲われて無人となっていたのだ。


 家も焼かれて何も残っていない……いや、死体の山はある。


 取りあえず馬を休ませ、野宿してから次の日に出発する。



 二時間ほど馬を歩かせて進むと、前方に煙が見えてくる。


 俺様が慌てて駆けつけた時には、全てが終わっていた。


 王都から逃げてきた馬車が何台もあり、止まっているか横倒しになっていた。


 盗賊達に襲われたことは、死体を見れば分かる。


 一番むごかったのは、たくさんの剣で串刺しにされた王子だった。コイツも義弟だ。


 せっかく帝国軍から逃げたのに、ココで死んでしまっては哀れでしかなかった。


 その盗賊達も近くで死んでいる。ここでも金の奪い合いが起きたのだろう。

 


 俺様は必死で嫁と子供達を探す。


 屋敷の馬車を見つけて近づくと誰も乗っておらず、その近くに倒れていたのは、死んだ嫁達だった……。


 どうやら盗賊達と戦ったらしい。


 太ってなまっていても元冒険者、かなりの盗賊達を道連れにしていた。


「はっ!」


 ここで俺様は気づいた。


 子供らの死体が一つもない。母親達は必死で我が子を守ったのだ。


 だとすれば生きてる!


「誰か、いないかー!」


「おとうさーん!」


「うえーん!」


 俺様が大声を上げると、隠れていた子供達が現れて抱きついてきた。


「無事でよかった。本当に……」


 しばらく子供らを抱きしめたあとで、話を聞く。


「盗賊に襲われたけど、母さん達と執事さんが守ってくれたの……」


「そうか……」


 指を差された場所を見れば、老執事は体中に矢が刺さり、立ったまま死んでいた。


 俺様はひたすら感謝するしかない。


 嫁達の死体もこのままにしてはおけないので、子供達と一緒に穴を掘って埋めることにする。


 カラスや野犬に食わせる気はない。


 義弟も埋めるが、盗賊どもはそのままだ。悪党なんか知るか!


 石を置いて簡素な墓を作り、手を合わせてとむらう。


 子供達は大声で泣いた。


 俺様は泣かない……というより、まだ泣けない。


 子供らを守り、安全な場所まで連れていかねばならぬのだ。


 でなけりゃ嫁達の思いが無駄になる。


 子供達が殺されでもしたら、あの世で嫁に会わせる顔はない。


 父親としての義務だけでなく、情もある。



 まずは馬車を一台直すことにする。子供らも手伝ってくれた。


 水と食料は他の馬車から、持ってくればよい。これでしばらく飢えずにすむ。


 問題はどこに行くかだった。


「王都はもうないから、戻っても意味がない。村や町に行ったとしても、盗賊か魔物の生き残りに出くわすかもしれない。となると安全な場所は……エルフの森か!」


 ただエルフ族は閉鎖的なので、人間を受け入れてくれるかは怪しい。


 俺様は、だいぶ前に娘を連れて出て行った、エルフ嫁にすがるしかなかった……。

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