7 第三の拷問
「なんだ?????」
動けない俺様の前にも魔物は現れるが、なぜか殺されなかった。
十字架ごと地面から引き抜かれ、空飛ぶガーゴイルに運ばれていく。
下を見下ろせば、金ぴか皇帝が魔物になぶり殺されていた。ざまーみろ!
俺様はせいせいする。
見渡すかぎり、生きている人間はもう見当たらない。
死体は食い散らかされ、魂は飲み込まれる。魔物にとって人間はエサなのだ。
王都から連れ出されてしばらくすると、空中に巨大な黒い穴が見えてくる。
「あれは魔界ゲートか? どうりでたくさん魔物がいるわけだ。こりゃー帝国どころか、人間全てが滅ぶぞ……」
魔界ゲートは帝都の真上にあり、帝国民は魔物の餌食となっている。
王都と同じだ。皇帝も帝国軍もいないのでは、どうしようもない。
敵国とはいえ、同じ人間が殺されるのを見てるのは辛かった。
やがて、暗雲に覆われ遠雷が止まない、不気味な山へとたどり着く。
そこにあるのは魔王城だ。魔王を倒して以来、来たことはなかった。
高く険しい山にあり、人が住むには不向きな場所なので、普通は誰も寄りつかない。
その魔王城に明かりが点り、石畳の通路にはチリ一つ落ちていなかった。
つまり、魔王が復活したということか……。
俺様は十字架から外されて、そのまま魔物に引きずられていく。
手足に穴が開いていては、歩くことすらできない。
そろそろ出血多量で、早く死にたいところだった。
どうせ待っているのは、復活した魔王の復讐だろう。
でなけりゃ、俺様を生かしておく理由がない。
魔王の間につくと、乱暴に突き出されて扉は閉められた。
俺様は這いつくばったまま、顔を上げてみると玉座には女がいた。
頭には角があり、背に赤い翼がある。
前魔王は男だったので復活したのではなく、新しい魔王なのか?
女魔王は俺様に近寄ってくる。いよいよ最後か……と思っていたら、
「回復」
「……何のまねだ!?」
俺様は回復魔法を受けて体が治り、すぐに立ち上がった。
顔と体だけを見れば、超美人の女魔王は怪しく笑っている。
長い爪がある右手が俺様のあごをつかみ、そのまま顔を引っ張られた。
互いの顔が近づいて唇が重なり、俺様は身動きができなくなる。
これは、魅了の魔法。
チートがあったらこんな魔法は効かないのだが、今は喋ることだけで精一杯。
「うっふふふふ、かつての勇者も哀れなものね。先代の魔王……父上があなたに殺される様子を、私は物陰から見ていたのよ。あれは無残で惨くて、一方的な虐殺だったわね……あのことが目に焼き付いてずっと離れないわ」
「そうか魔王の娘か……なら父親の敵を討つといい」
「そうさせてもらうわ。でもねあの時、私は興奮もしてたのよ。恨みと恐怖の感情がまざりあって……あなたへの愛になったわ。ようやく会えましたわね、愛しい人よ。私の愛でゆっくりと冥土に送ってあげましょう」
「ぶっ! ……いかれてやがる」
「その通りよ。さあ死ぬまで楽しみましょう!」
第三の拷問、S●X地獄。
昼夜の区別なく性行為を俺様はやらされていた。魅了の魔法で俺様は操り人形状態。
一時休めるのは、飯を食う時と排泄する時だけ……寝る時間も少しはあるか。
ナニがたたなくなると媚薬と精力剤を飲まされて、続けさせられる。
女魔王の他にも淫魔がやってきて、精を絞りとられる。赤い玉はまだ出ていない。
長時間続くと快感より苦痛が勝る。正に快楽地獄だ。
どうやら女魔王は身ごもるまで続けるらしい。やはり狂った愛情だ。
何日経ったのか、どこにいるのかもあやふやになってきた頃、異変が起きた。
俺様の近くに誰もこなくなったのだ。
やがて魅了の効果が切れて、ようやく自由になれた。
エリクサーを指輪から出して飲むと、異常ステータスは完全に消える。
予備の服を着てフラフラしながら、螺旋階段を上っていくと、魔王城の塔の天辺についた。
高い場所から薄暗い外を見れば、おびただしい数の魔物が地面に転がっている。
イナゴの大群が死んだかのようである。
「何があったんだ!? ――ん!」
空を見上げると、魔界ゲートが閉じかかっていた。
魔法でゲートの封鎖をしているのは女魔王。傷だらけで血を流しボロボロな姿だ。
その近くでは魔物同士が殺し合っていた。
おかしい、魔物は金銀財宝に興味はないので、互いに争う理由はないはず……。
「そうか! エサの人間が足りないんだ! ああ、共食いをしてる!」
恐らく魔界ゲートが開けっ放しだったせいで、大量の魔物が人間界にやってきたのだろう。
魔物の生態は詳しくないが、やはり食わなくては生きてはいられない。
人が乱獲されれば食料はなくなるから、奪い合って当然だ。
家畜とは違い、人はすぐには増えない。
魔界ゲートは閉じておくべきだったが、女魔王は俺様にかまいすぎて、忘れていたのかもしれない。
だが今更閉じても、もう遅い。魔族は自滅するだろう。
人間界を我が物顔にしていたはずが、実にあっけない終わりである。
魔界ゲートが閉じられると、女魔王は力つきて地上に落下していく。
それを見ていた俺様は、何とも言えない気分にさせられた……。




