6 嘔吐炎上
俺様が召喚したモンスターは倒されたのだろう。
よく保ったほうだが、数の暴力集団には敵わない。
軍隊だろうが盗賊だろうがやることは同じで、帝国軍は虐殺と略奪に走っていた。
男は殺され、女は犯される。
逃げ遅れた者は人獣の餌食となるだけだった。
平和が長く続くと災害を軽く考えてしまうもので、避難すらしてない者も多い。
やれやれ。
俺様は魔法銃を撃ちまくり、帝国兵を殺しまくって助けることにする。
生きてる限りはヒーローでありたい。ぶち殺している最中、ふと思う。
「チートも軍隊も、残酷な事をするのは変わりないか。俺様も大量虐殺者だな……ふっ」
「イキリ様、ありがとうございます!」
助けた男が駆け寄ってきたが、俺様はしかり飛ばす。
「礼を言ってる暇があったら、さっさと逃げろ!」
「は、はい!」
少しは時間を稼せげたが、やがて魔石のエネルギーが切れて、魔法銃は撃てなくなった。
俺様は帝国兵に四方を取り囲まれて、逃げ場はなくなる。暴れて目立てば当然だ。
やがて派手な身なりをした、金ぴかの皇帝が前にでてくる。
「見つけたぞイキリ! 父上の無念ここで晴らしてやる!」
「ああ……帝国が降伏した時に、服従を誓ったはずの糞ガキか? でかくなったな、ションベン漏らして泣きわめいていたくせに! 命を助けてやった恩を忘れたか!? ああん!?」
俺様は凄んでみせるが、皇帝も負けてはいない。
「黙れ! 帝国に重税をかけて、我が臣民を苦しめてきた王国と貴様は絶対に許さん!」
「てめーらが負けたから、賠償金をもらっただけだ。本当なら皆殺しにしてもよかったんだぞ! 被害者面すんじゃねー!」
「うるさい! 今度は勝ったのだからお返ししてやる!」
「だったら、さっさと殺せ! このクズ野郎!」
悪態をついて少しは気が晴れた。武器はもうないので、あとは死ぬだけである。
王国軍が壊滅した以上、もう望みはない。
いや……子供達さえ生き残ってくれれば、それでいい。
復讐対象の俺様がいなけりゃ、帝国軍は下水道まで探索しかねなかった。
だから俺様は囮として王都に残ったのだ。これで乞食嫁と娘は助かるだろう。
「そう簡単には殺さんぞイキリ! たっぷり痛ぶって苦しめてやる! やれ!」
「はっ!」
第二の拷問、磔。
「ぐわっ!」
俺様は十字架に乗せられて、手足を太い杭で打ちつけられる。
ハンマーで杭が叩かれると痛いが、すぐに薄れていく。
痛覚麻痺は厄介なスキルだった。やはり嫌がらせに残されたとしか思えない。
これでは簡単に死ぬことができないからだ。
「最後に火をつけて燃やしてやる!」
十字架は立てられ、足下には薪が用意されて油がまかれていた。
火がつけられれば、一瞬で火だるまだろう。最後には火あぶり刑が待っている。
どうせやるなら早くしやがれ!
貴族領民もそうだったが、この皇帝も狂気に顔がゆがんでいた。
「皇帝陛下!」
「何事だ!?」
「それが、兵士達が殺し合いを始めてしまいました。分捕り品をめぐって争っています!」
「愚か者どもめ! 余がいく、この場には二人だけ残れ!」
「はっ!」
見張りを残して、皇帝と帝国兵は走り出した。
ところが見張り二人も、俺様から離れて民家に押し入ってしまう。
「金だ、金だ!」
「ひっひひひひひひひひ!」
やはり狂っている……欲望が暴走して理性を失っていた。
あの女の仕業で間違いはない。
……だが、世の中を混乱させて何がしたいんだ?
考えてる暇もなく、王都はさらに騒乱状態となる。
黒い群れが上空からやってきて、太陽が見えなくなった。
「魔族だー!」
背中には蝙蝠の羽、口には牙を生やした魔物の軍団だ。
地上からは人狼などの使い魔が帝国軍に襲いかかっていた。
略奪に夢中で不意を突かれた帝国兵は、次々と倒されていく。魔物達は圧倒的に強い。
頭をかみ砕かれて脳みそが飛び出し、腹を裂かれて腸が散乱する。
悪臭が広がり嘔吐する者が後をたたない。まさに生き地獄。
聖職者がいれば魔物に対抗できただろうが、王都には娼館に通い詰めてる生臭坊主しかおらず、信仰力なんてものはない。
帝国軍に殺されてなくとも、なんの役にも立たないだろう。
魔物は俺様が絶滅させたと思っていたが、どうやら復活したらしい。
まさにゴキブリのようなもんだな。
ついに王都に火がつけられ、燃え広がっていく。




