3 義弟の最後
「まさかコレを使う日がこようとはな……」
倉庫に眠っていたのは、昔チートで作った魔法道具である。
嫁達の護身用にと手渡したが、一度も使う機会はなく、文字通りお蔵入りしていた物だ。
この道具を使う前に、チートで敵を倒すほうが早かったからである。
まずは魔法銃を手に取り使ってみる。
庭の彫像に向けて撃ってみると、ドカンと音を立てて彫像が壊れた。
「威力は十分、チートはなくなったが道具は使えるようだな。もっともエネルギー源の魔石の力が切れたらガラクタだ」
ようは電池と同じである。
次に俺様は魔法指輪を指にはめて、手当たり次第に道具と食料をつめこんだ。
この指輪は収容箱で、猫型ロボットが腹につけてる、○次元ポケットと同じである。
はめている当人しか見えないので、指でも切り落とされない限り、奪われる心配はない。
「さて、行くか……」
魔法道具の一つ、「転移石」を地面に投げると、丸い魔方陣が発生する。
魔方陣に入れば、一瞬で好きな場所に移動することができた。
これも、○○○○ドアと同じである。
魔法だのと大げさなことを言っても、結局は何かの模倣なのだ。
身も蓋もないが、「自分が考えたオリジナル」とは恥ずかしくてとても言えない。
「ふー」
俺様は深呼吸してから魔方陣に飛び込むと、貴族の領地に着いていた。
ここに来たのは、何年ぶりか?
貴族嫁の里帰り以来だろう。もう覚えてもいない。
偉大だった義父はとうに亡くなっている。
さて現領主である義弟はどこに――!
「ひいいいいい! 助けてくれえー!」
大勢の領民達に追いかけられているのは、義弟だ。
服はボロボロになっており、涙を流して鼻水をたらし、粗相もして見られたものではなかった。
臭いもひどくて、鼻が曲がりそうだった。
義弟は俺様に気づいて、足にしがみつく。
「義兄様ー! チートで助けてくれえー!」
俺は魔法銃を取り出して、空に向けて撃った。
この威嚇射撃で、武器をもった領民達の動きは止まる。
出来れば話し合いで解決したいところだが、領民達は殺気だっており、血を見ずにはおさまりそうもなかった。
「ふん、イキリのおでましか。だが聞いたぞ、お前がチートをなくしたことを!」
もはや英雄や勇者とも言われず、呼び捨てにされた。
一応、俺様が王国とお前らを守ってきたんだがなー……何か恨みでもあるのか?
反乱の理由を知りたくなる。
「なぜこんなことをする!?」
「そこにいるクズが何をしたのか知らんのか!? 税金を上げて俺らを苦しめ、払えないと子供と若い娘らを連れ去った。それでも飽き足らず、村に火をかけて仲間を焼き殺しやがった。絶対に許さん!」
「お、お前! そんなことをやってたのか!」
「ち、違うんだ義兄様! これには訳がー!」
「さあ、正義の味方のイキリ様よー、その銃でどっちを撃つんだ? さっさと決めろ!」
「…………」
俺様は魔法銃をおろすしかなかった。義弟も領民達も撃つことはできない。
何も知らなかった俺様が悪いのか?
愚かな義弟が大悪党だとしても、やはり殺すことはできない。
俺様が悩んでいる間に義弟は強引に連れていかれ、なぶり殺される。
「恨みを思い知れえー!」
「ぎゃあああああ――――!」
領民達から鍬を何度も振り下ろされて、血と肉片が飛ぶ。
体はグチャグチャになり、義弟は無残な最後をとげた。
呆然と見ているしかなかった俺様にも、領民達は血に染まった武器を向けてくる。
興奮して収まりがつかないのか?
……いや、目が血走っており、明らかに理性を失っていて普通じゃない。
あの女のほくそ笑む顔が、頭に浮かんだ。




