2 奪われたチートスキル
これはキスではない!
リラは口を開けて、俺様の体から生気を吸い取っている。エナジードレインか!?
くそ! サッキュバスだったのか!? いやそれはありえん。
なぜなら魔物が近くにいれば、俺様のパッシブスキルが警報を鳴らし、自動防御するはずなのだ。
この女は何者なんだ! くそ、神の野郎なにしてやがる! 早く助けろ!
俺様にチートスキルをくれた神に、心で呼びかけるが反応がない。
こんなことは初めてだ。なすすべも無く女に生気を吸い取られていく。
ただ取られていたのは生気ではなく、俺様はあとで思い知ることになる。
力が抜けて、俺様は床に倒れて動けなくなっていた。
「……これまでか……こんなところで、死ぬのか」
「いいえ、まだアナタは死なないわ。そう簡単には死ねないわ。地獄を見るのはこれから……また会いましょうイキリさん」
そう言って、女は目の前から消えていなくなる。同時に体は自由なった。
ただ、体はダルくなっており調子が悪いので何かおかしい。
俺様は寝転んだまま状態を確認してみると……。
「ステータスオープン! ――バカな!」
チートスキルの全てが奪われていた……。
しばらくしてから、俺様は娼館から逃げるように屋敷に戻った。
フラフラしている俺様に、執事が駆け寄ってきて支えてくれる。
「大丈夫ですか、旦那様!? 医者を呼びますか?」
「……いやいい。一晩寝れば回復するだろう」
とりあえず自室まで連れて行ってもらい、ベットに倒れ込んだ。
執事は頭を下げて部屋から出て行く。
俺様は仰向けになって、状態をもう一度見て見たが変わりはなかった。
「パラメータオープン! 力・知力・素早さ・その他……オール9。一般人と同じか……999あったはずなのに……全て奪われたようだ……ああ……」
俺様はなげき落ち込むしかない。
神に祈ってみたがやはり反応はない。
もらったチートスマホも使えなくなっていた。
ピンチの時は必ず神が助けてくれたので、何かあったとしか思えない。
いくら考えてもわからず、頭も回らなくなってきたので、もう寝ることにした。
「明日、もう一度ためしてみよう」
全てが悪夢だと思いつつ、俺様は目を閉じる。
この日が、ベットで眠れた最後の夜となった。
早朝、激しくドアを叩くを音で俺様は目が覚める。
跳ね起きてドアを開けると、
「すみません旦那様! 一大事でございます!」
「一体、何事だ!?」
「王国の貴族領内で反乱が起きました。直ちに鎮圧して欲しいと、王より使いが参っております!」
「…………」
俺様は対応に困る。チートを失ったので、もう何もできないのだ。
チートがあれば一時間もかけずに解決しただろうが、全てのステータスも下がったので、今は子供にも勝てる気がしなかった。
かといって、反乱を放置しておくわけにもいかない。
貴族嫁の実家であり、領主は義弟である。
「王国軍はどうした!?」
「……それが帝国軍が国境に迫ってきてるそうで、その対応で手一杯だそうです!」
「くそっ! 十年前に降伏を無視して、完全に滅ぼしておきゃーよかった」
「旦那様……」
内乱に外敵、この時とばかりに大事件がおきた。
今までの平和が嘘のようだ。
たぶん、あのリラとか言う女が裏で糸をひいてるのだろう。
……これはもうお終いだな。俺様は覚悟を決める。
「執事よ、今まで使えてくれてありがとな……俺様はチートを失った」
「イキリ様!」
「それで最後の頼みだ。今のうちに嫁と子供達を王都から逃がしてやってくれ、恐らく王国は滅びる。屋敷の金は自由に使ってくれ、ただし沢山は持つな! 盗賊に狙われる」
「分かりました。この命に代えましても、奥方様とお子様方をお守りいたします!」
「あんがとさん」
執事は俺様の手を握り、涙を流していた。
俺様には過ぎた家臣だ。一番信頼できる男なので、これで安心していける。
「旦那様はどちらへ? 御一緒に逃げましょう!」
「それはダメだ。俺がいたら目立って逃げられなくなる。王にも義理があるから、最後の悪あがきをしてみるさ。じゃーな」
頭を下げたままの執事から離れ、俺様は屋敷の倉庫に向かった。




