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フェイクウィッチ  作者: 焼肉一番


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また可愛くしてね

「うっ……! がああ、うううう!!!」


 一歩、ルシェがミゼールに近付くと、命令も無いのにミゼールはバチバチと溢れ出た魔力を収束してルシェに襲い掛かった。まるでルシェに恐怖している様に。

 一旦身体の中に納まった魔力は光の槍となって現れ、ミゼールの周りを飛びながらおもむろにルシェに突き刺さらんと飛び出す。

 しかしルシェは極めて冷静にそれらをすべてかわした。

 槍同士がぶつかり合って消滅し、ルシェの出した小さな光に吸収され消滅し、ぶつかると思った槍も、不自然にルシェの身体を逸れてルシェの手に納まって消滅する。


「あああううううーーー!!! がああああああうううー!!!」


 ミゼールが何度やっても、結果は同じだった。その間もルシェはミゼールに囁き続ける。


「大丈夫だよ……、大丈夫だから……」


「があああああううう!!」


「素晴らしい……素晴らしいわ……もっと、もっともっともっと、見たい……!」


 命令もなく動いていると思われたミゼールだが、もしかしたらニナの気持ちを汲んで動いているのかも知れない。現にニナは、ミゼールにフロディを殺させた時も言葉では命令していない。


「もっと……!」


 ニナのお望み通り、ミゼールの出すすべての攻撃はルシェにとって問題ではない。


「ルシェ……」


 その姿は魔女なんかではないと、リアンは思った。この純白の翼のルシェが魔女のワケない。だってルシェはミゼールも、魔女たちも決して傷付けようとしない。避けているだけでは解決しないがリアンには思い当たる事がある。


 ――……もっと作るよ――


 ハルはそう言った。きっと、解毒薬を作って持って来てくれる筈だ。もしかしたらもうこちらに向かっている可能性もある。


「行かなきゃ……!」


 と、リアンは飛び立つ。このまま大人しくルシェの後ろで守られているわけにはいかないではないか、ハルを迎えに行こう、と。

 しかし、この行動が良くなかった。

 かなり疲弊していた事もありおもむろに飛び立ってしまったリアンを、まだフロディの命令を守ろうとする粗悪魔女たちが的確に捕らえたのだ。ミゼール以外の魔女はどうやらちゃんとフロディが主だった様である。

 片足に一人ずつ魔女がぶら下がっている形だ。この期に及んでまだ命令を遂行している出来の良い方の魔女と言う事になる。


 ゴギッ……! グギッ……!


「うっ……?! ああああああ!」


 両足に信じられないくらいの激痛が走った。

 魔女であっても、痛いものは痛い。頑丈になったとは言え、相手はブレーキの壊れた魔女だ。両足が、折られた。


「お姉ちゃん?!」


 リアンの悲鳴に気を取られた優しいルシェは、すぐにリアンの傍へ行こうと翼を広げる。だってリアンの声が聞こえるのはもう後わずかかも知れないのだから。


「があう!!!」


 ミゼールの身体から飛び出した光の槍が、よそ見をしたルシェの背中に鋭く突き刺さり、そのまま胸の真ん中を貫く。


「あ……」


 飛び散る鮮血。リアンにはそれがまるでスローモーションのように見えた。


「ああ……なんて尊い……。白い翼に映えて、美しい……」


 まるで心からの言葉みたいに、ニナがしみじみと呟く。


「ルシェ!!」


 槍が刺さった所から血と一緒に光の粒が溢れて来ている。きっとルシェの魔力だ。それでも、ルシェはリアンの声に反応し、手放し掛けた意識を、自我を取り戻す。そして両手を伸ばし、リアンの足にしがみ付く二人の魔女に電撃を放った。魔女はビリリと身体を硬直させてリアンの足からポトリと落ちる。

 ルシェはこれでも尚、魔女を極力傷付けまいとしていた。

 リアンが自由になり、変な方向に曲がった足をぶら下げながらこちらへ飛んで来るのを見てルシェはとうとう前のめりに倒れた。

 ルシェを貫いた光の槍は役目を果たしたようにパンッと消滅する。


「ルシェ! ルシェ!!!」


 自分も立って居られないので、這いつくばってルシェの両手を握り懸命に名前を呼ぶリアン。


「はー……はー……」


「ルシェ! ねぇどうして……どうしてこんな事……!」


 小さな手が、キュッとリアンの手を握り返す。まだこの手はルシェのものだと分かったが、その瞳からどんどんルシェが消えていくのも分かった。


「ハルと……お姉ちゃんを、助けたかった……だから……」


 だから自ら、デュナミスを飲んだ。

 ルシェはあの時、懸命にリアンを引き留めた。それでも行くと言ったリアンを見て、その時にルシェはもう覚悟を決めていたのだと思う。

 何故気付いてあげられなかったのだろう、ルシェが誰かの為にその身を捧げる必要なんてないと、何故言ってあげられなかったんだろう。


「ルシェ……! そんなの納得出来ないわよ! あなたをそんな目に合わせたくなかったから……! だからあたしは……!」


 そして何故、ハルはむざむざルシェにデュナミスを飲ませたのだろう。


「ハルが……言ったの……。ここに来る人達みんなを……、魔女化から解く薬を作ってるって……。だったらきっと、ルシェも、お姉ちゃんも戻れると思う……。だって、ルシェはハルを信じてるもん……」


「だからって……! だからって……! そんなのいつになるか……!」


「ハルが……言った……から……。お姉ちゃんは……魔女に……取り込まれなかった……。その事が……大きな……希望……」


 ダメよ消えないでと言い続ける自分の声はもう届いていないのだと悟ったリアンは、ただ溢れ出る涙を持て余しながらルシェの最期の言葉を聞いた。


「ルシェを助けてくれたのは、ハルだもん……。森の中から救い出してくれたのも……、暗い夜に明かりを灯してくれたもの……ハルだもん……ずっと……一緒……。でも……、ね、でも、もしかしたら時間が掛かるかも知れないから……、これだけ……約束……ルシェの髪が伸びたら、また、可愛く……してね……」

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