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フェイクウィッチ  作者: 焼肉一番


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出来損ない

 崖上から飛んで来るリアンの姿を発見したフロディは、遠くへ逃げていなかった事にホッとして舌なめずりをする。


「見えるかダナの子らよ!!!! あれこそ我らの倒すべき敵! 愚かなる敵!!!」


「チッ……!」


 相変わらずの大音声に勝手に舌打ちが出たリアン。ハルの優しい声も、もう少し図々しく張り上げれば……いや、結果は変わらないかと溜息を吐く。そして戦闘に備え、ハルから渡されたカバンの中から薬の入った小瓶を取り出した。

 下からその様子を確認したフロディは、ハル達が何かしら対抗手段を用意したのだろうと気付く。


「やはり休ませるべきではなかったな……。ダナの子らよ! 急ぎあの者を捕らえよ!! あれを飲ませてはならんっ!!!」


 とうとうフロディ達とリアンはぶつかり、フロディは馬を止めてそう喚いた。

 出来損ないの魔女たちは健気にも、そのフロディの命令に反応し一斉にリアンに襲い掛かろうとする。魔女同士ぶつかり合い、途中で落ちてしまう者も居たが……、それでもリアンにたくさんの手が伸びて腕や翼、足にも絡みつく。

 空中で魔女たちに纏わり付かれ、その歪な翼に埋もれて行くリアンを、フロディがよしよしと眺めていた。そしてとうとうその魔女の塊……とでも言おうか、それが地上へ落下したのを確認してその地点へと馬を走らせる。


「よくやったダナの子らよ!!!」


 見ると、その塊はうぞうぞ動き続けて中にリアンを閉じ込めている様にも見えた。


「ふふふ、あっけない物じゃないか……。ハロルドが近くに居なければお前も出来損ないの魔女だった様だな、リアン・アミッ……、ん?」


 うぞうぞ動いていた魔女の塊から紫やら赤やらの煙がシューシュー音を立てて出ている。


「ゴホッ……! なっ……なんだっ……?!」


 煙に巻かれてフロディが咽ている間に、魔女の塊が動かなくなる。そして煙が風に飛んで消えていくと、そこに現れた魔女の塊は……ただの、大量の黒い羽根に埋もれた人間の塊になっていた。


「んなぁっ……!!?」


 歪な翼が消え、瞼は閉じているが赤い瞳も元に戻っている。ただの人間が折り重なって倒れているだけだ。状態が酷く、足が反対に曲がったままの者もいるが、もう化け物ではない。

 そしてその中から、ニュッと勢い良く一本の腕が飛び出し、フロディは悲鳴を上げる。


「ひゃぁっ! なんだ一体!?」


 腕はもう一本出て来て、腕の持ち主の上に覆い被さっている元魔女の人々を、ぐいぐい押し分けている。そしてそこから不敵な顔を覗かせたのは……。


「リアン・アミットおおおぉぉ!!」


 思わず人々をかき分けた腕で耳を塞ぐ。


「本当にいちいちうるさい……」


「貴様一体……何を……! はっ……」


 そこから脱出し、気を失っている人々をそっと横たえているリアンのカバンを見てフロディはまさかと顔を青くした。中から何やら薬の小瓶を取り出すところは見た。


「それはもしや……デュナミスの……」


「がうううーっ!」


 そこへ、一斉攻撃に参加出来なかった、出来損ないの中でもだいぶ弱い魔女もどきが健気に命令を守ってリアンに襲い掛かる。

 リアンは冷静に、カバンからまだ小瓶を取り出し、瓶ごとその魔女の口へそれを押し込んだ。


「うがっ……!」


 小瓶は割れ、中身が零れて大半が服や地面を濡らしたが、それでも僅かばかり口に入った薬が身体に作用する。さっき魔女の塊から出ていたのと同様の煙がシューシューと噴き出し、みるみる黒い羽根を撒き散らしては人の身体を取り戻す元、魔女。


「おのれ……!! やはりデュナミスの効果を打ち消すものか……!!!」


 フロディの言った様に、ハルが作っていたのはスーパースペシャルデュナミスではなく、デュナミスの解毒薬だったのだ。


「ハルは天才なのよ」


 もともと、ミゼールに飲ませる為の解毒薬であったが、魔力の低い、本来デュナミスを使ってはいけない人々には少量でも入れば効果が出る様だ。


「そんな事……私だって良く知っている……。リアン・アミット、お前にだって私は気を掛けていた。それなのに、ハロルドと言い貴様と言い……」


 リアンの周りに、またぞろぞろと粗悪デュナミスで作られた魔女たちが集まって来る。さっきの命令が届かなかった、後方を飛んでいた者たちだ。


「お前たちを殺さねばならないのが本当に残念だよ」


「ふん! やれるもんなら……!」


 リアンはカバンから小瓶を取り出す。右手に一つ、左手に一つ。


「ダナの子らよ!!! あの者の薬を飲んではいけない! 口が閉じる者は決して口を開くな! まずはあのカバンを破壊するのだ!!!」


 黒い羽根を散らせながら、猛スピードでリアンへ襲い掛かる魔女たち。

 粗悪魔女たちがどれだけフロディの命令を理解出来るか分からない。その証拠にあっさり開きっぱなしの口へ解毒薬を突っ込んで終わる者も居た。しかし、ちゃんと口を閉じて、リアンの解毒薬をかわす者も居る。カバンを狙う者も居る。上手く出来なくても、魔女たちは懸命にそうしようとするのだ。それだけで厄介になる。


「くっ……! 個体差があり過ぎて戦いずら……あうっ……!」


 カバンに固執する者、やたらと攻撃的な者、魔女の動きが読み切れずに苦戦を強いられるリアン。


「今です!!! 一斉に足を狙いなさい!!!」


 フロディの指揮も的確だった。命令に反応出来るのが半分だけでも、闇雲に攻撃されるよりよっぽどやりずらい。

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