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フェイクウィッチ  作者: 焼肉一番


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二人の魔女

「チィッ……!! 出来損ないが……! その髪が何だと言うのだ!!」


 ミゼールが動かない原因が視線を釘付けにしているハルの髪だと気付いたフロディが、罵声と共に今度は炎の魔術を放った。こんなものと余裕を見せたリアンを通り過ぎて、それは的確にミゼールの手に命中した。もっと言えば、ミゼールの手の中のハルの髪に。


「うっ……? ああ……! あああ!!!」


 ミゼールを……フロディにとっては大事なダナを傷付けない様に、威力は控えめだったようだが、髪の毛を燃やすくらいはあっと言う間だ。途端にそれはちりちりの燃えカスになった。


「何てことをっ……!」


「あう……あううう……!」


 手の中に残った燃えカスを見詰め唸るミゼール。怒りを感じている様にも見える。


「我がダナを惑わすは!! そこの愚かな偽魔女だ!! さぁ! 今一度言う! 天罰を下すのですダナよー!!!」


「うあうあうあああああああああ!!」


「ダメっ! ミゼ……うあっ!!」


 ミゼールの振り回した腕がリアンにぶち当たる。フロディの魔術の数倍痛い。そしてミゼールの腕は肘から先が反対方向へ曲がってぶらりとぶら下がった。


「くうぅ……!」


 また掴み掛られたら今度こそ骨を砕かれる。そう思ったリアンはバルコニーから外へ退避した。バルコニーの真下はそこで行われる演説等に人が集まれるようなスペースがあり、見るとそこにはダナ教兵士が多数集結していた。どうやらそこに混じって多くの民衆も紛れている様だ。 

 バルコニーから飛び出たリアンに驚いて集まっていた人々がわぁとばらける。その中で一人だけ、その場を動かずリアンを呼ぶ者が居た。


「こっちだ!」


 ハルだ。


「ハル! ミゼールが! もしかしたらミゼールが……!」


 リアンはハルの元へ飛び降り、ミゼールが自我を取り戻す素振りを見せた事をすぐに報告しようとした。


「見ろ! ダナ様だ! 黒い翼のダナ様が!!」


「慈悲を!! 加護を!!」


 遠巻きに騒ぎ立てる民衆、それを止めるダナ教兵士、更にはまたバルコニーの上からフロディが大音量で叫ぶ。その後方にはやはりニナが、月明かりに眼鏡を光らせて立っていた。


「静まれ民よ!!」


 誰よりも大きな司祭フロディの声に、皆ハッと耳を傾ける。


「我が魔女ダナよ!! 今こそ放つのです!!! この世の清浄の為の雷を……!」


 そしてフロディの後ろから姿を現せたミゼールは、また青い雷をパチリパチリ纏わせていた。


「あれは……? あれが魔女ダナ……?」


「じゃあこっちの魔女は何なんだ……」


 ミゼールの姿は……リアンのそれよりも人とかけ離れていた。それは粗悪なデュナミスのせいなのだが、それ故に異形の何かに対する恐怖を民衆に植え付ける。かつらの取れたリアンの黒髪より、美しく輝く銀髪もそれを手伝っただろう。


「マズい……本当に……清浄の雷を撃てる程のデュナミスを作れたと言うのか……? リアン! 僕を翼で隠してくれ!」


「なっ……何するの?!」


「大気の精霊よ……我が声に応えよ……神域に在りしその力……」


 すぐさま詠唱に入ったハルにはもう答えられない。ハルほどの使い手でも詠唱が必要な魔術を使う気なのか。

 仕方なくリアンは民衆からはハルが見えない様に翼を広げた。ハルと、バルコニーで雷を纏うミゼールとをはらはら交互に眺めるしか出来ないリアン。

 どんどんミゼールの周りの雷は青く広がって行くが、その間にハルも短く詠唱を済ませ、リアンの翼の中で跪く。そして右手の拳で心臓辺りを抑えて左手は開いて地面に添えた。


「ハル……、ミゼールの雷が……」


「ああ……、あれが本当に清浄の雷ならみんな消し炭になって終わりだ……」


「そんな……!」


「来るっ……!」


 バルコニーに無表情に立って居るだけのミゼールの身体から、上空へ一筋の光が昇って行った。一瞬カッと明るくなり、それを見上げる者たちの顔を照らす。


「今のは何だ?」


「司祭様は清浄の雷と言ったのか?」


 この状況を一番きちんと飲み込めているのは恐らくハル一人。張本人のミゼールはもちろん、フロディもどこまで分かっているのか疑問だ。


「おお……おおお……素晴らしい……!! アールヤ……! アールヤ……!」


 フロディも、興奮しきって油でギトギトになった顔で天を仰ぐ。


「牢固たる壁を……!」


 フロディとは対照的に、ハルは囁くように言って左手から魔力を放出した。間違いなく今まで扱った事のない大量の魔力を。

 そこから一気に、緑色に光る円が広がると、半球となって大きく辺りを包んだ。ダナ教の大神殿も、近くの建物も丸ごとだ。

 ハルのその左手は極めてリアンの足元ギリギリに置かれていた為、まるでリアンからその魔法が発生したかに見えた。


「今度は何だ?!」


「こっちの魔女が何かしたぞ!」


 ミゼールに対抗する魔法を放ったのはハルではなく自分だと思わせねばならないと悟ったリアンは、それっぽく両手を広げて足を踏ん張ってみた。


 キィン……と、美しい金属音の様なものが聞こえて、次の瞬間に全部が真っ白になった。


 ハルの作った魔法の障壁と、ミゼールの撃った清浄の雷がぶつかったのだ。

 その瞬間、もしかしたら大きな音がしたのかも知れないがリアンには何も聞こえなかった。あまりにも大きな音と衝撃だったので耳が追い付かなかったのか、それとも本当に無音だったのか……どちらか分からないが、今はバリバリバチバチととてつもない音が耳をつんざいている。

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