24 雪の記憶
その後――。
雪の日の冒険について、誰一人として口にすることはなかった。
学期が再開してからも、学校長の交代以外に目立った変化はなく、日々は静かに流れていった。
エドガーとトマス、そしてシェイドは、それからもずっと三人で過ごした。
懲りずに宝探しをしたり、勉強を教え合ったり、時には喧嘩もした。
それでも最後には笑い合った。
思い返せば、あの日々は本当に楽しかった。
胸を張ってそう言える。
そして三人は、そろって寄宿学校を卒業した。
――あの日の記憶は、今もなお心の奥で凍ることなく輝いている。
雪と光と笑い声。
あれこそが、紛れもなく青春の日々だった。
◇◇◇
エドガーが目を開けると、暖炉の火がぱちりと音を立てた。
一人掛けのソファに腰を下ろしたまま、膝の上には読みかけの古い裁定集がある。
「……寝てしまっていたか」
青年のエドガーは目をこすり、本を閉じる。
手にしたまま立ち上がり、軽く伸びをした。
ふと、長くなった自分の髪に指が触れる。
あの頃は短く整えていた髪が、今では腰に届くほどになっていた。
――あの騎士の、風に揺れる長い髪を思い出す。
意識したことはなかったが、もしかすると髪を伸ばそうと思ったのは、あの人の影響だったのかもしれない。
窓を開ける。
冷たい霧が流れ込み、頬を撫でた。
あの日の雪は、もっと冷たく、もっと眩しかった。
それでも、あの夜の祈りの温もりは、今も胸の奥に残っている。
エドガーはわずかに微笑み、静かに呟いた。
「……アラステア。それは、一体何だったのだろうな」
霧の中で、ほんの一瞬――
やわらかな風が彼の頬を撫でたような気がした。




