21日目:安心安定の人刀っ!
「そこに一人の少女がいた。
「非常にちっこくて、可愛かったなあ。
「彼女は、俺たちにこう言った。こんなことをするんだったら、初めから私のスポーツに参加しないでと」
「カチンと来たさ。俺たちは正々堂々やってきた。そして、この試合だってそうだ。変わらない。審判にだって、ちゃんと抗議した。なのに、彼女には届かない。結局、そういうことだ。真面目にやっても意味がない。俺たちは、大人にならなきゃいけなかった。
「でも、その時はまだ子供だった。
「撃ち殺したさ。そいつの兄貴を」
平然と、淡々と、こいつは言った。
悪びれもせず、謝りもせず、普通に。
その姿は、鬼と呼ばれるべき態度だった。
「どうして?その子に、罪は無かったんだろ?」
焦りと恐怖で声が上ずる。
こちらの状況も知らず、彼は簡単に言った。
「だって、肉親が死んだら、誰でも黙るだろ?」
「……いや、でも、そんなのって」
「だから俺たちは子供だったんだよ。カッとなったら何するか分からない、子供だったんだよ。大人しいって、大人って書くけど、つまりはそういうことなのかもしれないな。大人と言うのは、つまり静かであり、冷たく、客観的に見ることができ、目をつむることができる人。ってことなんだろうな」
一生、俺にはなれねえや。成れねえし、馴れねえし、慣れねえだろうな。
こいつは、後ろを向き、後方の仲間へこっちへ来いと合図した。
端的に言うと、こいつと同じような体躯の奴が、5人集まってきた。
雰囲気は、完全にあちらに分がある状態だ。
「可愛い姉ちゃんじゃあありませんか」
「ほう、いい娘じゃねえか」
「可愛いねえ、可愛いねえ、可愛いですねえ」
「おやおやおや、可愛いのう」
「You are so very cute!!カワイイネエ!」
どうする気だろうか。
「勿論、決まっているだろう。せっかくのご褒美だぜ、色々と使わせてもらうよ」
「……あたしは別に、美味しくないぞ?」
「女性ってだけで、美味いんだよ」
『囲む彼らのまなざし強く、彼らの笑顔は狂気そのもの。
勝てる気なんて起こりもしない、闇の中。
奇跡を起こすは、一本の刀。
人刀、『笹指冴枝』。いざ、参らん!』
あたしの声では全くない。ただ、あたしたち以外に人がいないのもまた事実だ。
ともすると、本当かどうか怪しいものだが、消去法から言って、刀しかないだろう。
柳生一花、もしかして死んでいないのか?
「行くぞ、おめえら!」
「よっしゃあ!」
「ひ、人刀っ!『笹指冴枝』っ!」
袋から取り出した瞬間、刀は際限なく伸び、そして枝分かれし、それぞれの大男に巻き付いた。刃はそのままで締め付け、体は真っ二つに切り裂かれた。
そして、残ったのは最初の一人のみ。
刀はすぐに戻り、そして最初の一人に向いた。
「な、何なんだ、それは⁈刀じゃねえぞ!」
「刀じゃないんだよな、これ。あたしもあんまり使ったことないんだけど」
あたしは、冷静さを取り戻した。
まあ、でも、冷静さよりも、驚きの方が勝っているんだけどね。
慣れねえんだよ、これ。慣れないし、馴れないし、狎れない。
「あ、早く逃げないと、同じようになっちゃうよ?お前みたいに鬼じゃないから、家族はさすがに殺らねえけども」
「お、覚えて」
遅かった。早く逃げればよかったのに。
後ろを向いたその瞬間、背中のちょうどど真ん中にこの刀が刺さり、刀自ら首の方へと上がっていき、斬りきった。
「ふう。じゃあ、この先にあの球体が、あるってことかな」
こいつがあれば、問題はない。
そんな気がする、刀だった。




