18日目:蹴球の国内戦とはっ⁈
「まずは、国内戦って言うのは、3つの地域に分かれているんだ。ちなみに、国際戦は全く別ね。たまに、代表戦とも呼ばれているから、そっちの方が有名かも。
「そうそう。国内戦は地方部で分けられているんだ。相生地方、飯村地方、宇賀谷地方、江桜地方、雄琴地方、加島崎地方、君岳地方、蔵倉地方、家抱地方、麹地方、冴酉地方、獅子島地方の、計12つ。それぞれ、6チームから8チームが総当たりで戦い、その優勝チームが、集まって、優勝決定戦を行うっていう方式なんだ。
「うちの地方は、江桜地方ね。ここには、汐塚、潟坂、沖陽、波盛、濱倉の6チームが参戦している。それぞれ個性的で、とても面白いんだ。
「たとえば、汐塚なら、観たから何となくわかると思うけれど、ワントップに長身外国人を置く特徴があるね。そして、サイドに…ええと、だから左右にドリブルの上手い人を配置して、攻撃の幅を広げているね。今年の優勝候補だよ。
「それから、沖陽。彼らは、徹底してパスでつなぐサッカーをするんだ。もうそれは、ぎりぎりまで。相手の守備陣を惑わせて、迷わせて、ゴールを狙う。
「次に、潟坂。彼らは、非常に守備的だね。守って守って、カウンターを狙う。カウンターって、分かるかな?大丈夫だよね。つまり、彼らは閂なんて呼ばれているよ。
「え?ああ、そうそう。たまに愛称がつけられているところがあるね。
「チーム名とか、戦法とか、服の色とか、所以はいくらでもあるけどね。
「たとえば?そうだな…閂の潟坂とかはさっき挙げたよね、そのほかは…、黒い魔術軍とか、後は…クレイジーイーグルとか。…そういやあ、白い鬼とかあったかな。
「え?うん。違う地方なんだけどね。ええと、確か相生地方だったかなあ。彼らは、とても狡賢くてね。ルールをよく知っていると言えばそれまでなんだけど、どうもあいつらは卑劣なんだよ、やり方が。卑劣だし、卑怯だし。あのチームを好きだという奴は、聞いたことがないね」
「……そうなんですねぇ」
「彼らは、いつも優勝していて、最強とは呼ばれていた。でも、彼らのファンは、どこにもいないかったんだ。彼らはずるいからね。試合には勝っても、観客を沸かすことはできなかった。もしかすると、彼らは勝てばいいってもんじゃないということを、体現したかったのかな、なんておいらは思っちゃったりもするけどね。まあ、もう10年も前の話だけど」
「……そんなに前の話なんですか?」
「実は、ここだけの話。その事件を受けてから、蹴球は、本来やってはいけないスポーツなんだよ」
「……やってはいけないスポーツ?」
冷房とは別に、背筋が凍る。現代では、世界中で最も愛されているスポーツのうちの一つと言っても過言ではない。しかし、この時代では、禁忌とされているのだ。
「うん。まあ、賭博の対象だったりしていたけれど、多分一番はあの事件じゃないかな」
「その、『あの事件』とは?」
「それがね、当事者以外には、全く分からないんだよ。すべて闇の中でさ。真相は藪の中なんだよ」
おいらも調べてはみたんだけどね。
そう笑顔を浮かべた。
「その、当事者って言うのが、つまりはその北の鬼と」
「その片方が、謎に包まれているのだよ」
あたしの中では、つながった。
つまりは、陽元王国と北の鬼の試合の中で、何かが起こったということだ。
「ありがとう、まなぶさん」
「え、ああ、もう行っちゃうの?」
「ええ、ちょっと急用がありまして!」
「そ、そう?じゃあ、おいらが払っとくよ」
「ありがとうございますっ!」
あたしは、勢い良く頭を下げ、そして勢いよく飛び出した。




