表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

『想い出』と記憶

「ひさしぶり、巽くん。君がいなくてさみしかったよ。話し相手がいなくて暇だったんだ」

巽くんと連れ立って歩きながら、僕は嬉々として彼に話しかける。道行く人々に奇異の視線を向けられたが、途中すれ違った銀髪の車椅子の男性は、一人で喋り続けている僕には見向きもしなかった。

巽くんは僕の話に時折相槌を打つばかりで、彼からは何も話さなかった。

「ところで、どこへ向かっているの?」

僕は道もわからないから、ただ巽くんの後をついていっているだけだ。

「きみの大好きな場所だよ。もうすぐ着くさ。

……あ、ほら見えた」

巽くんは言いながら前方を指差す。指先を辿って見ると、遠くの方に海が見えた。

「海だ!」

毎日病室の窓から見ていた海が、間近に見える。僕は嬉しくなって走り出した。

「美希、あまり無理するんじゃないよ」

「だいじょうぶだよ!」

彼と笑い合いながら、海岸に到着した。スニーカーと靴下を脱いで、海に浸かる。ひんやり冷たい海水が、走って火照った僕の足元を優しく冷やしてくれる。


瞬間、脳裏にある光景がよぎった。

巽くんと僕が手を繋いで海へ入っていく様子だった。

それをきっかけとして、堰を切ったようにとめどなく記憶が溢れ出た。『僕と巽くんの想い出』が、リアルな映像として蘇る。あまりの衝撃に目が眩み、僕は思わず膝をついた。

「美希?」

「巽くん……じゃない。…………たつ、だよね」

その一言で、たつは全てを察したようだった。

「美希、思い出したのか!」

「うん……思い出したよ、たつ。君がなぜ死んだのか、僕がなぜ記憶を喪ったのか、全部思い出した」

僕はひとつひとつ丁寧に記憶を手繰り寄せて、穏やかに微笑んで言う。

「僕らは心中したんだったよね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ