その名はアーガイル...なんだぜ
「俺の名前はベン=アーガイルだ」
「ア、アーガイルゥ〜?!何の冗談よ!」
大柄な副ギルド長が名乗ると嬢ちゃんは声を上げて笑い出した。
身体をくの字に曲げて少し涙目になる程に笑っている所を見ると、どうやら本気でウケているらしい。
ソレに気付いたのはベンと名乗った大男も同じようで、嬢ちゃんを訝しみながらも笑いの発作が収まるのを待っているようだ。
「落ち着いたかよ?」
「あ、あははっ...お腹痛い」
ため息とともに嬢ちゃんに声をかけるベンに、当の嬢ちゃんはまだ笑い足り無いようで
「ブフッ!?」「しつけぇな!」「だって算木崩し状の傷をわざわざ付けて名字をアーガイルにするなんてフザケてるとしか思えないじゃない?」「算木崩し?」
ベンとやらの顔を見る度に笑いの発作を繰り返す。するとマルヴェラが一枚の布を持ってきてベンに手渡した。
「何でお前も笑いを堪えてんだよ」
俺が聞いてもマルヴェラは答えずに、ベンの持つ布を指さしながら広げるよう手で合図をする。ベンは不思議そうな顔をしながらもその布を広げた。その瞬間マルヴェラは広げられた布を指さしながら何故か片言で
「ソレ、模様...名前【算木崩し】...ブファッ!」
最後の一言を添えた瞬間、マルヴェラだけでなく俺も釣られて吹き出す。
因みに涙目になりながら耐える大将の横で、奥様は既にうずくまり震えていた。
「ヒー、ヒー...」「セーやん、ウチもお腹痛い」「二人とも...失礼、ふっ...ですよ」
注意する奥様も充分失礼だと思いながら見ていると、いつの間にかベンの側に大将が歩み寄って問いかける。
「ベンとやら?お主貴族ではなかろう?その名は自分で付けたのか?」
自分で付けたのか?の部分で再び笑い転げる姦し娘。そんな三人を諦め顔で見ながらベンは
「まさか...この傷を負った時に討伐した暗殺ギルドの糸使いが中々の賞金首でね。その時にランクアップ報酬を頂いたんだが...」
名を授かった時の経緯を話しだした。そして...
その時に送られた名誉がアーガイルだったそうだ。
その時は誰も笑わなかったそうで、ベンもその名の意味が分からず...
ただ言葉の響きが気に入ったので、そのまま受け入れたそうだ。
後日...
止せば良いのにベンはその時名付けを行った当時のギルド長の所に赴き、真相を知ったらしい。
何故か嬢ちゃんを伴って...
他に人選は出来なかったのかと、思わずにはいられなかったんだぜ。
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