これじゃまるで...軍隊みたいなんだぜ
「次!ヨゼフ、前へ!」「はっ!」
マジか...コレじゃまるで軍隊じゃねぇか...
「ヨゼフ...お主はこれから家令としての経験を活かし、ここに居る御用聞き及びメイド衆を束ねよ。その証として桃の正輝章筆頭としての権務を与え、その徽章を冠するに足る職制を授与する」
「有難き幸せ...このヨゼフ身命を賭して桃正輝章筆頭としての責務を果たす所存です」
俺の眼の前で執事服に身を包んだヨゼフが、恭しく拝命していた。
それを横で見ていた嬢ちゃんが、ヨゼフに歩み寄り一言告げる。
「これより先にも艱難辛苦が待ち受けている事でしょうが、御身を顧みぬ行動はこれより先は慎まれるよう御自愛下さい」
「勿体無き御言葉!このヨゼフ...老体が朽ちようとも、この魂までも尽くしたく思う所存で御座います」
その言葉に俺はギョッとしたが、当のヨゼフは感極まっているようだ。
つづけて嬢ちゃんは俺が見たこともない微笑みを浮かべながら、「よしなに」とヨゼフに声を掛けその手を取っている。
そんなヨゼフに今度はヴェルノア様が耳打ちをすると
「たった今、桃正輝章筆頭を承ったヨゼフである!平民である私の管轄下に入るのが不満だと言う者が居たら一歩前へ進み出よ」
ヨゼフは振り返り自分と同じ桃正輝章を与えられた者たちの方を見ながら、自分に対して不満がある者が居ないかと呼びかけた。
……・・・・・・……
沈黙がしばらく続いた後、ヨゼフが満を持して号令する。すると
「居ないようだな...では桃正輝章を頂いた者はこれより先、私の指揮下に入る。不徳な身に有り余る権務を与えられた私だが、どうか支えて欲しい。全てはドール家の為に!」
...「「「「全てはドール家の為に!」」」」...
ヨゼフと同じ桃正輝章を与えられた者たちが一斉に答えた。
「やっぱり軍隊じゃねぇか...」「そう言うでない」「そうよゲビック。これは必要な事なんだから」
後で聞いたんだが...
これは一度囚人に身を落とした彼らの尊厳を取り戻すために、必要な儀式だったんだぜ。
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