渡る者の使命なんてモンは正直お呼びじゃないんだぜ
「調子はどうじゃ?ゲビック」「これはヴェルノア様に奥様」
「ゲビック?私の事はシェリアって呼んでくれても良いのよ?」
今日もヴェルノア様とシェリア様がやってきた。
この二人は名目上は監視役と言いながら、本音は嬢ちゃんのやってる事が気になって仕方なかったらしい。
その証拠に今日も奥様は望遠鏡を手にしている。
「奥様「シェリア♪」...シェリア様、その手に持っているモノは、要らないのでは?」
「イヤよ、これでセシルを覗くんだから♫」「そうですかい」
まぁ...そんな奥様を羨ましそうに見ている大将も、半分は呆れ顔をしてるんだが...
そんな二人をいつまでも見てる訳にもいかねぇ。早く行かねぇと嬢ちゃんにどやされちまう。
「申し訳ありませんが、高台指揮所でのやる事は終わったんで...」
「良い良い。儂らは今日も高台指揮所からは出んから、安心して行って来るが良い」
俺がそう言うと、大将がにこやかに送り出してくれようとしてくれるんだが
「本当に、大人しくしてて下せぇよ?」
「分かっておる。流石にあんな孫の顔は、もう二度と見たくないでの」
老い先短いからか、たまに腕一本くらいならうっかり失くしても良い位の勢いで危険物に触れようとする。それは他の作業者たちも同じだった。
「ゲビックよ、儂も本気で反省しておる。孫のあのような真剣な顔...アレは、儂だけでは済まなんだからなんじゃろ?」
「そうですぜ。アレは、下手すりゃあの場に居た全員が...」「そうか...」
無理もねぇ。あんな...いや、ココにはアレと同じ位危険なモンが他にもある。それ以外にも危険度は下がるとは言え、命に関わるモンがゴロゴロある。だが、アレに最初に触れたのが大将で良かったかも知れねぇ。他のやつだったら、解雇程度じゃ収まらなかっただろうからな。
「あの看板は、大げさでは無いんじゃなぁ」「そうですな」
本気で怒鳴り、全員の命を救ったお嬢。もう少し遅ければ大将と奥様...あと、その近くに居た数人が亡くなっていたかも知れねぇ。実際天井に居た(割れ目に入り込んでいた)コウモリやネズミが、バタバタと落ちてきたのを見た俺も肝を冷やしたんだぜ。
「セシルは、本当に位階落ちの転生者なんですね」
俺と大将の声が聞こえていたらしい。
奥様が独り言のようにボソリと呟く。
「では、行ってまいります」「「気を付けてのぉ」」
俺は【危険!動作中は絶対開けるな✕】と書かれた看板と...その下にある、大将が開けちまったフッ化水素が発生する電解槽を見ながら
(やっぱり嬢ちゃんは、なんらかの使命を帯びてんじゃねぇか?)
と、思わずにはいられないんだぜ。
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