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孤独な雪

外の黒雲で薄暗くはなっているものの、豪奢な部屋の中。豪華なテーブルクロスが掛けられた長机に、Ragnorysの元王女が座っている。その表情は冷たく、生気がない。

Naeviaはテーブルの反対側の端に座っている。最初は状況が理解できなかったが、すぐにそこが王宮にある自分の食堂だと気づいた。王女はカップを手に取り、一口すする。


「こうして顔を合わせるのは久しぶりね」

「……このまま、ずっと顔を合わせずにいたかったです」

「なら、鏡には近づかないことね」


目の前にある杯に反射した姿を見て、Naeviaは自分が前世の姿になっていることに気がついた。


「なっ!?」


拳を強く握りしめ、両腕と額をテーブルに突っ伏した。


「……ううっ、これは悪夢に違いありません。この体は嫌いです……」


王女が答える。


「……私もよ」


Naeviaがまぶたをぎゅっと閉じると、それに気づいた王女が首を傾げて尋ねる。


「何をしているの?」

「目を覚まそうとしているんです。こんなの最悪です」

「鏡を見るたび、いつも私を見ているくせに。とぼけないでちょうだい」


Naeviaは背筋を正して尋ねる。


「私に何を望んでいるんですか?」

「『私たち』に、と言いたいのでしょう。私たちは同一人物なんだから」

「いいえ、違います。私はあんたじゃないし、二度と戻るつもりもありません」

「でも、一度だって私であることをやめていないじゃない。親友がKaelianを好きだと知った途端に敵とみなしたし、ある女の子の粗探しをしようと詮索もした。ええ、確かにあの子は嘘つきだったけれど、あんたが嫉妬してやったことだって、お互いよく分かっているわ」

「黙ってください!」

「……好きな男の子に自分を振らせたことについては、言うまでもないわね。あなたの言う通り、私たちは同じじゃない。私はそこまで惨めじゃなかったもの」


Naeviaは眉をひそめ、王女に鋭い視線を突き刺した。


「……私には、この人生を自分の好きなように生きるチャンスがあるんです……どうして、すべてを台無しにしようとするんですか?」

「すべてを台無しにするのはあなた自身よ。本当に上手くやれているとでも思っていたの? 自分の願いを叶えれば、もっと良い人間になれるとでも? そんなの、自分に言い聞かせている嘘にすぎないわ。私たちには誰かに愛される資格なんてないし、これからも絶対にそうはならない。だって、誰も私を愛したりしないんだから……」


その瞬間、Naeviaは目を覚ます。全身汗びっしょりだが、なぜか体が震えている。起き上がると、彼女は真っ先に自分の手を見て、顔に触れた。


「……Narysに感謝します……」


部屋には彼女一人しかいない。彼女は立ち上がり、うつむいたままテーブルに手をつく。


(……彼女の……言う通りです。私には誰かに愛される資格なんてありません。もしKaelianが私の本当の姿を知ったら……きっと、私から離れていくでしょう)


両手で顔を覆い、頭を垂れた。


(……単なる友達でいることで我慢するしかありません。つまり、彼に対してどんな恋愛感情も抱かないようにしなければならないということです。そうすれば、すぐにそのことを受け入れられるはずです)


Kaelianが何かを手に持って部屋に入ってくる。


「おはよう。具合は良くなった?」

「はい、少し休む必要があっただけですから」

「よかった。はちみつ入りのホットミルクを持ってきたよ。体が温まるからね。それに、体を洗えるようにお湯も用意しておいたよ」

「あ、ありがとうございます」

(私の今の目標は、これ以上Kaelを好きにならないことです。唯一の障害は……彼自身です)


再び部屋で一人になると、彼女は裸で寝台に座った。床には湯気を立てるお湯が入った木製の浴槽があり、Naeviaはお湯の反射に王女の姿を見たため、自分の姿を見ないようにした。

布を手に取ってお湯で濡らし、腕を拭き始める。


(……水の感触はやっぱり好きになれません。あの湖を思い出してしまいます。でも、以前Kaelianに、その恐怖を克服するには少しずつ立ち向かわなければならないと言われたので、もうサウナは使っていません)


しばらくして脚と胴体を洗っていたが、股間に触れた時、奇妙な感覚を覚えて驚く。


(も、もう十分です! もう綺麗になりました!……)


彼らは村でいくつか物資を補充し、再び道を先へと進んだ。


「ちゃんと歩ける?」

「ええ、心配しないでください、友達」


Kaelianは片眉を上げて尋ねる。


「なんでそんな呼び方するの?」

「……何か悪いことでもありますか?」

「いや、別に」

(私たちは単なる友達でいるべきだと、自分自身に言い聞かせなければなりません。簡単なことではなさそうですが……諦めなければ。これ以上、心を開いてはいけません。もし心を開きすぎれば、私の本当の姿を見て離れていってしまいます。それだけは避けなければなりません)


数日後、ドームの外では雪が降り始め、気温がさらに下がる。皆、焚き火のそばで眠りについている。Naeviaは再び王宮の食堂に現れる。

王女が尋ねる。


「考えたことある?……私たちの体がイノシシの肉で作られているって知っているのは、Kaelianただ一人だってこと」


Naeviaは杯に映る自分の姿を見て言う。


「……またこんなことが起きるなんて」

「皮肉なことに、死んだ後で私たちはまた雌豚に戻ったのよ。きっと彼に気持ち悪がられているわね。諦める理由がもう一つ増えたでしょ。私、役に立ってる?」

「あんたほど気持ち悪くはありませんよ。あんたには胸も腰もないし、体はスプーンみたいじゃないですか」

「あなたの髪なんて、花を食べた金色の猫の毛玉みたいじゃない」

「あんたの髪なんて、ハリケーンの後のカラスの巣ですよ」

「あなたの目は文字通り豚の目よ」

「少なくとも、私はその眼鏡をかけて馬鹿みたいに見えたりしませんから」

「雌豚!」

「雌豚!」


激しく動揺して起き上がる。息をするのもやっとで、心臓は早鐘のように打っている。しかし、火花とKaelianと一緒にドームにいるのを見てわずかな安堵が体を駆け巡ると、遺産の声が心の中に響いた。


(大丈夫? 動揺しているようだけれど)

「は、はい、大丈夫です……あなたの声を聞くのは久しぶりですね」

(あなたたち二人には解決すべき事があるから、干渉しないのが一番だと思ったのよ)

「意味のないことを聞いてもいいですか?」

(いいわよ)

「あなたは一種の観念体ですから、答えを知らなくても構いません。……前世の自分を消し去るにはどうすればいいんですか?」

(できないわ。それは自分自身を消し去るのと同じこと。記憶を消さなければならないわね)

「……その方法を知っていますか?」

(知らないわ。それに、もし知っていたとしてもお勧めはしない。ゼロから始めなければならなくなるし、遅かれ早かれ自分が誰だったのか疑問に思い、答えを探し、点と点を結びつけ、忘れたかったものと再会して……そのサイクルを再開するだけよ)

「じゃあ、別のことを聞いてもいいですか? 誰かを愛するのをやめるには、どうすればいいんですか?」

(もうKaelianのことは諦めたの?……そう、残念ね……)

「どうしてそんなこと言うんですか?」

(いいえ……干渉はしないわ。自分で気づくかもしれないし、気づかないかもしれない。質問に答えるなら……そうね、欠点に目を向けてみたらどうかしら)


視線を床に落とし、声を震わせる。


「その欠点すらも愛していたら?」

(それなら完全にお手上げね。時間が経ってもどうにもならないわ。もしそれが本物の愛なら……痛みを伴うほど、魂の底に深く根付いてしまうものよ……)

「……遺産?……」

(ご、ごめんなさい、少し熱くなっちゃったわ。とにかく、さようなら)

「ま、待ってください」


遺産の声は消え、Naeviaの口の中には苦い後味が残った。

火花が眠ったまま起き上がり、目を少しも開けずにハイハイしてKaelianの隣に横になる。彼の胸にすり寄り、抱きついた。Naeviaは眉をひそめて考える。


(よりによって、火花に嫉妬するなんて。これで本当に、これ以上落ちぶれることはないと思います。Kaelianが火花を恋愛対象として見るとは到底思えませんが、二人は完全に正反対の人間ですし……でも、そういえば、以前Meyが、そういう人たちこそ一番惹かれ合うと言っていました……いやだ! もしかして、私ずっと見当違いな方向を見ていて、本当の脅威は火花だったんですか?)


火花が寝言で囁く。


「……ハンバーガー……焼いたお肉……フルーツケーキ……」


Naeviaは片眉を上げて考え続けた。


(……少し大げさに考えすぎました。それに、この子は食べ物以外のことを考えるなんてあり得ないほどお馬鹿さんですし。でも、Kaelのことをすごく大切に思っているのは知っています。いつか聞いてみるべきでしょう。

……いいえ! どうしてそんなことを考えているんですか? 火花をライバルだと思ってはいけませんし、Kaelianを友達以上の存在だと思ってもいけません)


火花が口を開き、囁く。


「……サァァシャァァ……」


その名前を聞いたKaelianは、眠っていたにもかかわらず眉をひそめずにはいられなかった。それに気づいたNaeviaは、二日後に彼に尋ねることにした。Kaelianは焚き火を起こすための枝や草を探していたが、道中には木が非常に少なく、すべてが湿っていた。

彼の背後に立ち、指を交差させて尋ねた。


「……サーシャという名前に、な、何か聞き覚えはありますか?」


手を止めることも、振り向くこともなく答えた。


「……それが僕の名前だったと思う……」

「……思う?……それじゃあ、確信はないんですか?」

「記憶を見たんだ。そこに二人の人物が出てきて、どうやら僕には兄弟が一人いたらしい。その女性と僕の身体的な特徴が似ているのは否定できない。彼女は役の稽古をしていたから、女優のようなものだったんだろう。僕に演技の天賦の才能があるように見えるのは、それで説明がつく。でも、火花はシュラとか他の名前も口にしていたから、本当は別の女性なのかもしれないし、あるいはその記憶自体がただの夢に過ぎないのかもしれない」

「ああ、なるほど。自分が本当は誰だったのか、知りたいですか?」

「探り出す方法がなかったから、何年もそのことは無視してきたんだ。でも、どうやら抑制のポーションがその記憶を開く鍵みたいだね。いつも上手くいくとは限らないけど」

「それで……もし、自分が誰なのか分かって、それを気に入らなかったらどうしますか?」


彼は立ち上がり、彼女の方を振り向いた。


「……そんなこと考えたこともなかったな。でも、同じ過ちを犯さないようにすると思う。あんたと同じように……」

「わ、私みたいに?」

「うん、あんたは王女としての人生で犯した過ちを避けることができた。今は自由だし、友達もいて、世界を探検している。人々から称賛されているし、Edheralでは火花と僕を合わせたよりもずっと多くのファンがいるじゃないか」

「そ、そうできたと、あんたは思っているんですか?」

「もちろんだよ。それに、もう誰の命令にも従っていないだろ。あんたにMeyたちのグループと一緒に行くように言ったのに、僕の言うことすら聞かなかったしね」


Naeviaはわずかに微笑み、心臓の鼓動が速くなるのを感じたが、王女の声が彼女に思い出させる。


(表面上は変わったかもしれないわね。人々に愛され、一部の人には称賛されているかもしれない。でも、彼らが称賛しているのは本当のあなたじゃない。彼らが称賛しているのは、ドラゴンや錨を殺すことができる内気で気高い神童っていう、あなたに対する偽りのイメージよ)


彼女は唇をきゅっと結び、Kaelianに背を向けた。


「あ、ありがとうございます。私のことをそんな風に思ってくれていたなんて、知りませんでした……」


***


数日後、雪が景色を完全に覆い尽くしている。前を見るのも困難で、呼吸するだけで痛いほど風が冷たい。


(さ、寒いです……冬になったらどうなるか、想像もしたくありません)


はぐれないように、彼らはできるだけ身を寄せ合いながらゆっくりとした歩調で進む。一歩進むごとに吹雪は激しさを増していくように思えたが、同時にそれが彼らを覆い隠してもいた。冬用の外套が完全に真っ白なため、周囲の景色から彼らを区別するのはほとんど不可能だった。

両側が大きく切れ落ちた、非常に高く狭い道を通り抜ける。落ちないようにゆっくりと歩き、数キロ進んだ後、火花が寒さで震えながら言う。


「み、耳の感覚がないよぅ、休みたい」

「……も、もうすぐ村に着くよ。そこで休んで何か食べられるから」

「……あ、温かいミルクが欲しい……」


さらに進むと平らな場所に出たが、村の痕跡は全くなかった。しかし、もう少し進むと、完全に凍りついた噴水が見えた。


「……えっ……ちょっと待って」


Kaelianが手に火を灯し、それを大きくして広範囲を照らし出すと、完全に、あるいは部分的に破壊された数十軒の木と石の家々が目に入った。

生命や住人の痕跡は全くなかったため、彼らは最も状態の良い家の中に入ることにした。

持参した薪で暖炉に火をつけ、三人は暖を取るために身を寄せた。Kaelianは両手をこすり合わせて言う。


「これで道のりの半分だ。あと二週間で東の地に着くはずだけど……もう食料が尽きかけてる。ここで物資を補充できると思ってたのに、Redjornは放棄された村のことなんて一言も言ってなかったぞ」


Naeviaが答える。


「放棄されていることを知らなかったのかもしれません。この場所の知らせは、大陸の他の地域にはあまり届きませんから」

「何があったんだろう。こんな場所に住む意味がないってことに気づいたのかな?」


遺産が言う。


(可能性はあるわ。最初期のフレイムの保持者の一人が以前ここにいたことがあるの。この場所の人々はとても頑固だったから、故郷を捨てたとは考えにくいけれど)

「ここに来たことがあったの? どうして先に言ってくれなかったんだよ」

(……忘れていたのよ。何百年分ものことを全部思い出そうとしてみなさいよ!)


外では、巨大な生物が近づいていた。ただし、その足音は吹雪の音にかき消され、気配を感じ取るのは難しい。

火花がある部屋から奇妙な匂いがするのを感じ取り、立ち上がってそこへ向かった。扉を開けた途端、彼女は悲鳴を上げた。二人はすぐに立ち上がって様子を見に行き、部屋に入ると寝台に横たわる凍りついた死体を目にした。火花がKaelianに強くしがみつく中、Naeviaが部屋を見渡すと、寝台の近くのテーブルに銘が刻まれたナイフがあった。


「『Thylrosに死を』、と書いてあります」

「Thylrosに?」


三人は周囲のNarysに何か奇妙なものを感じる。正確には認識できなかったが、Kaelianには分かった。


「……この感覚は……汚染されたNarysだ!」


氷と雪でできた怪物が壁を突き破ってくる。KaelianとNaeviaは即座に白い炎と青い炎で攻撃する。燃え上がる炎が怪物の大部分を溶かし、黒と紫の蒸気を放ちながら、中心に浮かぶ核を露わにした。火花がNarysの爪を作り出して核を攻撃するが、核はその攻撃をすべて吸収してしまう。


「!!!」


怪物が叫ぶ。


「……Thylros!!……」


Kaelianが言う。


「また喋る錨か!?」


三人は走り、荷物を手に取って外に出るが、錨は吹雪の中に溶け込み、完全に形作られた状態で彼らの前に再び現れた。


「Thylros!!」


家々の中から、そして雪の下から汚染されたNarysが現れて空を移動し、錨に吸収されていく。


「こっちの言葉が分かるのか!?」

「Thylros!!」


遺産が言う。


(そうではないみたいね。灰の錨の方がまだ理性的だったわ)


Naeviaは白い炎の球を作り出して放つ。衝突すると錨の体の大部分を溶かしたが、同時に地面の雪も蒸発させ、汚染されたNarysを放出している数十体の凍りついた死体を露わにした。


「数が……多すぎます!」


Kaelianは火花を脇へ避けさせて言う。


「死体を全部破壊しないと、やつは無限に近いNarysを持つことになるぞ!」


即座にNaeviaがある考えを思いつき、安全な高い場所へ避難するよう火花に頼む。それを受けKaelianは火花と自分の足元に巨大な柱を作り出すが、錨は吹雪の中に氷塊を作り出して彼らを攻撃してくる。しかし、火花が自身のNarysを形成し、彼らを守る盾を作り出した。

Naeviaが地面に手をつくと、彼女の周囲から四方八方へと白い炎が噴き出し、雪を蒸発させて半径三百メートル以内のすべての死体を焼き尽くす。炎は家々の中に入り込み、行く手にあるすべてのものを破壊し、錨は苦痛の叫び声を上げる。

Kaelianが言う。


「まだエネルギーが残ってる、枯渇させないと!」


Naeviaは両手を伸ばし、青い炎の球を次々と放つ。錨はそのたびに再生するが、その速度は次第に遅くなっていく。Naeviaが数分間にわたって膨大な量の攻撃を放ち続ける間、Kaelianは離れた場所から白い炎の球で援護した。

錨の核が露出し、再生することもできずに地面に転がっていた。Naeviaは疲労で膝をつき、Kaelianと火花が降りてくると、彼が言った。


「……よくやったね……汚染されたNarysはすごく強力だ。気分は大丈夫?」

「まあまあです……まだ体がこれだけのNarysを使うことに慣れていなくて」


露出した石の地面から、核に向かって汚染されたNarysの糸が一本現れたが、Kaelianが突風を放ってそれを散らした。


「まだ死体が残っているみたいだね」

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