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【GIJUTSU MAHŌ】異世界で無記憶無道徳  作者: 波修羅 直剣
「第7巻」Edheral編・第三部
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無限の価値

翌日、NaeviaはMeyの家へと向かいながら考えていた。


(……もう……耐えられない。昨日あの二人の間に何があったのかは全く分からないけど、これ以上KaelianがMeyと一緒にいるのを見るのは耐えられない。このままじゃ、恋人同士になるまでそう時間はかからないわ)


Meyと会うと、彼女はカモミールティーを少し淹れて尋ねた。


「それで、Naesuki、私に何を言いたいの? 悪い話じゃないといいんだけど」


Naeviaはうつむいて息を吸い込み、カップをさらに強く握りしめながら口を開いた。


「私……私……私もKaelianのことが好きなの!」


次に響いたのは、MeyがNaeviaの頬を平手打ちする音だった。Naeviaは呆然とし、赤くなった頬にゆっくりと手を当てた。目からは小さな涙がこぼれ出ている。


「……そ、それ……どうして?」


Meyは眉をひそめ、その手はまだ宙に浮いたままだった。


「聞いたじゃない……好きかどうか聞いたじゃない! ……それなのに、好きじゃないって思わせるようなことを言ったじゃない! どうして嘘をついたの?」

「う、嘘はついてないわ……その、ただ私は……」

「ただ何よ……?」

「本当に好きだってことに、自分でも気づいてなかったの。ご、ごめんなさい」


Meyは腕を組み、Naeviaから目を逸らす。


「……いつから?」


Naeviaはうつむき、説明を始める。


「少し前よ。最初はよく分からなかったけど……彼が他の女の人と一緒にいるのを見てすごく嫌な気持ちになって……それで気づいたの」

「……それで……もう彼に言ったの?」

「う、ううん。考えるだけで緊張しちゃって」

「……」

「二人の関係に割り込むつもりはなかったんだけど……」

「私たちの間にそんな関係はないわ……」


Naeviaはすぐに顔を上げる。


「でも」

「振られたの。きっぱりとね」


***


「助けてもらってから少し経つけど……まだ同じ気持ちのままなの。本当にあなたのことが好きだと思う。それに、あなたの演技を見たら、もっと好きになったと思う!」


Kaelianは目を丸くし、口をぽかんと開けて答える。


「言ってくれたことも、気持ちを伝えようとしてくれたことも本当に嬉しいんだけど……」

「……だけど?」

「……その気持ちが本物で、何かの副作用じゃないって信じるのがまだ難しくてさ。それに僕たちには共通点が何もないし、正直言って上手くいくとは思えないんだ」


Meyがうつむいて唇を噛みしめると、Kaelianは息を吸い込み、言葉を続ける。


***


「彼……きっぱりと……振ったの?」

「……そういうこと」

(彼女には気の毒だと思うけど、同時にKaelianが振ってくれて嬉しいとも思ってる。私、最低かしら?)

「私が探してる人は彼じゃないって言われたわ。共通点があって、本当に何かを感じられる人に出会うまで、一人でいることを覚えるべきだって」


Meyはテーブルに突っ伏して続ける。


「……それを聞いた時はちょっと腹が立ったけど……でも、彼の言う通りかもね。いつも彼氏ができると、共通点があるかとか、気が合うかどうかなんて気にもしてなかった。だからいつも利用されて終わるのね」

「正直、なんて声をかけたらいいか分からないわ、Mey」


Meyはテーブルに肘をつき、髪を整える。


「もう一つあるの。Kaelianがね、確証はないけど、他に気になってる人がいる気がするって言ってたわ」


Naeviaは目を見開き、思わず身を乗り出す。


「だ、誰のことか言ってた!?」

「ううん。でも……あんたが一番長く彼と一緒にいるんだから、あんたのことかもしれないわよ」

「そう思う?」

「私には……分からないわ。それはあんたが彼に聞くべきね」

「……」

「打ち明けてくれてありがとう。私が彼に感じた気持ちが嘘だったとは思わないけど……もし彼の心がもう別の人にあるなら、私にできることは何もないわ……まあ、少なくとも彼が結婚するまではね。もしその相手があんたなら、応援するわよ」


Naeviaは立ち上がる。


「わ、分かってくれて本当にありがとう、Mey」


***


数週間後、依頼を終えた一行は野原を歩いて街へと戻っていた。ギルドに入って報酬を受け取ると、Kaelianは一行に休むように言ったが、Naeviaが尋ねた。


「また別の依頼に行くの? もうずいぶん長い間、依頼をこなしてるし、あんたは追加の依頼もたくさんこなしてるじゃない。お金が貯まるまであとどれくらいなの?」

「そうだね……予期せぬ出費も多かったし、銅ランクの依頼じゃあまり稼げないからさ。でも心配しないで、もう少しだから」


数時間後、仕事を終えたKaelianが道を歩いていると、道の脇で馬車がダイアウルフの群れに襲われているのを目にした。中からは助けを乞う女性の声が聞こえ、ダイアウルフたちが馬車を壊そうとする一方で、別のダイアウルフたちは二人の男と馬たちの死骸を貪り食っていた。

それを見て、Kaelianは思った。


(なんて運が悪いんだ、よりによってこの道で起きるなんて。僕には関係ないし、見つからないように通り過ぎよう)

(何か報酬がもらえるかもしれないわよ)

(くれないかもしれないだろ。金も払われないのに危険を冒すつもりはないよ)


先へ進もうとすると、狼たちは彼の匂いを嗅ぎつけて動きを止めた。唸り声を上げ、一斉に飛びかかってくる。


(……クソッ……)


Kaelianは手を上げ、立て続けに火球を放った。それが狼たちに直撃し、ほぼ一瞬で黒焦げにした。Kaelianは眉をひそめ、死骸から目をそらしながら馬車に近づく。


「おーい! もう出てきても大丈夫ですよ!」


馬車から出てきたのは、貴族のドレスを着た女性だった。恐怖に引きつった顔で、息を整えようとしながら言う。


「た、助けていただき……ありがとうございます、若者よ」

「気になさらず……街までお供しますよ」


女性は頷いたが、夫の遺体が目に入った瞬間、全身が強張り、視線が釘付けになった。Kaelianは息を吸い込んで考えた。


(……ここは慰めるのが正解だよな。そうじゃないと、道中ずっと気まずいままだ)

「泣きたければ泣いても構いませんよ。ただ、僕の肩で泣くのと、十分以上かけるのはなしで」


女性は頷いたが、遺産が言った。


(それ、慰めてるつもりなの?)


女性はすぐに泣き崩れた。しばらくして二人は街へと向かい、ギルドに到着すると、女性は遺体の回収を依頼した。もっとも、近くの動物に食われないよう、Kaelianが一時的に土魔法で遺体を覆い隠してはおいたのだが。

女性はKaelianの方を向いて言った。


「命を救っていただいて、どうお礼をすればよいか分かりませんわ」


Kaelianは腰に手を当てて答える。


「では、2000 Escáでどうですか?」


女性は目を丸くし、首元に手を当てた。


「まあ! もっと良いものがありますわ」


チョーカーを外し、それをKaelianに差し出す。


「黒金と赤いダイヤモンドで作られていますのよ! 私にはもう何の役にも立ちませんが、あなたのお役に立てば」


Kaelianの瞳孔が収縮する。それからしばらく後、彼はギルドのテーブルで眉をひそめながらチョーカーを見つめていた。


(これがとんでもなく価値が高いものだってことは分かった。高すぎて、この街どころか王国のどの商人でさえ買い取れないくらいにね。つまり……全く価値がないってことだ! どんな値段で売っても損をするだけ。実質、文鎮くらいにしか使えない……)


目を閉じて頭を下げながらため息をつくと、部屋に上がってチョーカーを鞄の中にしまった。

しばらくして、ギルドの酒場でKaylaと一緒にジョッキのミードを飲みながら、彼女が尋ねた。


「ふふっ、あの劇のあと有名になったから、特別依頼で引っ張りだこじゃない? 違う?」

「その通りだけど、大抵は無視してるよ。ほとんどが、人気のある冒険者とくっついて自分の影響力を高めたい貴族や外交官からの招待だし」


彼女はテーブルに身を乗り出し、微笑む。


「へえ、じゃああんたが受ける誘いは私のだけってわけね。しかもタダで。光栄だわ」

「基本的にはね。提示される報酬は悪くないけど、今はなるべく目立たないように、できるだけひっそりとしていたいんだ」

「んー、自分を隠したいって言うより、自分に関する何かを隠したがってるみたい。もしかして、あんたを特別にしてる何か、とか」

「僕に特別な何かがあると思う?」

「ええ、明らかに特別よ。私と同じようにね。少し違うけど」


気づかれない程度に軽く拳を握りしめると、Kaylaが言葉を続ける。


「この街にずいぶん長くいるわよね。他の場所へ行く途中にしては長すぎる。それに、Thylrosの高地を越える安全な時期が近づいてる。ってことは、あんたの目的地は東の地ね」

「……」

「もしかして、間違ってる?」

「……その通りだよ」

「ふふっ、特別な理由でもなきゃあんな場所には誰も行かないわ。あんたの場合もそうだって気がする。理由は聞かないけど……旅をやめようと思うような何か、あるいは誰か……って、いる?」


Kaelianはうつむき、答えるのに少し時間をかけた。だがすぐ近くでは、幻影魔法で姿を消したNaeviaが盗み聞きをしていた。


「……かもしれない。本当は行きたくないんだけど、行かなきゃいけない気がするんだ」


Kaylaは微笑んで椅子から立ち上がり、Kaelianのところまで歩いていくと、彼の顔の正面にくるまでゆっくりと身をかがめ、そのまま少し顔を近づけて頬にキスをした。Kaelianは即座に顔を真っ赤にして目を見開き、その光景を見たNaeviaは、爪が食い込むほど強く拳を握りしめ、胸の奥に深い空虚感を感じた。


「ねえ……一つ聞きたいことがあるんだけど。明日の夕暮れ時、街の東にある花畑に来てくれない?」

「……も、もちろん……」

「やった!」


Kaylaは立ち去るが、Naeviaは彼女の後を追う。


(遺産、あの女すごく怪しいわ。ここ数週間、Kaelianとつるんでるけど……色々と知っているみたい。嫌な予感がするのよ、絶対に何か企んでるわ)

(後をつけるなら、気をつけて行きなさい)

(もし彼女の悪い秘密を暴けたら、Kaelianをあいつから遠ざけられるかも。敵対する同盟を阻止するにはいい作戦ね)


Naeviaは数時間Kaylaの後をつけたが、彼女は街を散歩し、いくつかの花の屋台で立ち止まって香りを嗅いでいるだけだった。やがて、彼女の家と思われる建物に入っていった。Naeviaは息を潜めて彼女の横をすり抜け、中に入ることに成功した。家は小さく、家具はほとんどなかったが、花の鉢植えがいくつか吊るされており、染料を作るための机も置かれていた。


(あんな女の家なら、もっと……個性的でもいいはずだけど。きっと借りてる家なのね。それに、私たちと同じように、この街に来てからそんなに長く経ってないはずだわ)


Kaylaはため息をつき、楽な服に着替えようと服を脱ぎ始めた。Naeviaは目を逸らすのが遅れ、彼女が着替えるのをまともに見てしまう。透明になっているとはいえ顔を真っ赤にし、危うく魔法の集中を途切れさせそうになった。Naeviaが漏らしたかすかな呻き声を聞きつけ、Kaylaは着替えの途中で何事かと近づいてくる。NaeviaはKaylaから目を離さないまま、口と鼻を塞いで後ずさりした。


(……く、くそっ……早くここから出なきゃ)


Naeviaはゆっくりと扉に近づき、二回ノックした。するとKaylaは急いで服を着終え、扉を開けた。Kaylaが誰がノックしたのか探している隙に、Naeviaはその機会を利用して逃げ出した。


(……あの女に不利になるような証拠は何一つ見つけられなかった。ここに来てから日が浅いって分かったところで、あいつが何か企んでるってKaelianを納得させる役には立たないわね)


ギルドへと歩きながら、すでに透明化を解いたNaeviaの頬は赤く染まっていた。


(……でも、あいつの体……かなり成長してるってことも分かっちゃった。ダメ! そんなこと考えちゃ。でも……私より年上なのは知ってるけど、もう大人なのかどうかは全く分からないし、私の精神年齢を考えたらこれがどれだけまずいことなのかも分からない。……考えないようにしよう。とにかく、あいつがこれ以上Kaelianに近づくのは阻止しなきゃ)


数時間後、KaelianはCasandraとのAmbarian語の授業のためにRubyの家に行った。授業が終わると、Rubyは微笑んでAmbarian語で話しかける。


「ねえ弟くん、仕事詰め込みすぎじゃない? 疲れてるみたいだけど」


KaelianもAmbarian語で答える。


「心配しないで、自分でどうにかできないほどじゃないから」

「おいで、横になって」


Rubyは床に座り、自分の膝を指差して頭を乗せるように促す。


「……時間があるかどうか……」

「おいで!」


Rubyの膝に頭を乗せると、とてつもない心地よさに包まれた。彼女は彼の目を見つめて言う。


「夜の授業を受けるなら、ちゃんと睡眠時間を取らなきゃダメって言ったでしょ。あんたがすり減っていくのを見過ごすわけにはいかないのよ」

「……分かってるけど、僕にとっては一日が短すぎるんだ」


Rubyは目を閉じてため息をつき、それからKaelianに向けて手を伸ばす。


「そういえば、あんたのNarysの経路を診てあげる……」


数秒後、Rubyは目を開ける。


「あら……もうほとんど完全に治ってるわ。むしろ、前より強くなってるって言ってもいいくらい」

「たぶん、定期的に訓練してたからかな。経路が傷ついた状態で魔法を使うことに慣れちゃって」

「……やめなさいって注意したのに」

「……うん、まあともかく、旅立つ時までには完全に治ってるといいな」

「……ええ、それなんだけど……」

「何?……」

「ううん、なんでもない。忘れて」


数時間後、KaelianはRedjornとGlaesと一緒に本を読んでいた。椅子に寄りかかって尋ねる。


「Redjorn、どうしてそんなにたくさん本を持ってるの? 決して安くないはずだよね」

「Ambarの神殿にいる写字生の友人がくれたんだよ。魔法のインクで書かれてるから、普通の本より安いんだ。早く書き写せる代わりに、中身を書き換えられてしまうんだけどな」


Kaelianは顔を上げて尋ねる。


「Redjorn、もう一つ聞いてもいい?」

「ああ、もちろんだ」

「誰かを好きになるって、どうやって分かるの?」


それを聞いた瞬間、RedjornとGlaesは危うく椅子から転げ落ちそうになった。すぐに本を脇に置き、彼に詰め寄る。

Glaesが微笑んで言う。


「へへっ、お前はいよいよ女の子に興味を持ち始めたってわけか。誰がその幸運な子なのか教えてくれよ。Naeviaか? それとも、あのKaylaって子か?」


Redjornがそれを遮る。


「お前には関係ないだろ。この子は別のことを聞いてるんだ」

「でも、俺は知りたいんだよ!」


Kaelianが答える。


「誰かは言わないよ。劇の最中、頭が真っ白になっちゃったんだけど、観客の中にいる彼女を見た時……ハッとするような何かを感じたんだ。これを感じたのは初めてじゃない」


Redjornは話を聞きながら頷き、腕を組んで尋ねる。


「どんな感じだ?」

「えっと……心臓がドキドキして、お腹と胸の間に温かい感じがして……それに、何ていうか……幸福感、みたいな?」


Redjornは満面の笑みを浮かべて答えた。


「それはな、坊主。まさに誰かを好きになった証拠だよ」

「本当?」


Glaesも微笑んで付け加える。


「ああ! その感覚と、その相手とずっと一緒にいたいって気持ち……それに他にも色々感じるようになったら、もう恋に落ちてるってことさ」


Kaelianは目を輝かせて答える。


「ほ、本当にありがとう。二人ともアドバイス感謝するよ」


Redjornは本棚から本を探し、微笑みながら言う。


「なんのこれしき。お前にぴったりの、いいものをやろう」


彼から本を受け取り、Kaelianはすぐに開いたが、数秒後にはバタンと閉じた。


「な、なんだよこれ!?」

「Ambarの愛の手引書さ。寝台でのあらゆる実践方法が載ってる。信じろ、将来必ず必要になるからな。気の早い餞別として受け取っておけ」

「あ、ありがとう……」

(要するに、この世界のカーマスートラってことか)


部屋に戻るとそれを鞄の底にしまい込み、数時間後、Rubyのところへ治癒魔法を学びに行った。朝になると彼女に別れを告げ、家へと歩いて帰った。


(……治癒魔法の練習をしなきゃ。でも自分自身にしか試せないから、つまり怪我をしなきゃならないってことだ)


帰宅すると数時間寝台に横になり、それから朝食を作ってNaeviaと火花と一緒に草原へ訓練に向かった。その後ギルドへ行って依頼を受け、終わらせてから家へ戻った。

もうすぐ夕暮れ時だったので、KaelianはKaylaに会いに行く準備をしたが、Naeviaがそれを引き止めた。


「ちょっと……どこに行くの?」

「Kaylaに会いに行ってくるよ」

「あんまり……行かない方がいいと思うんだけど」

「どうして?」

「だって私……私……」


遺産が言う。


(今の気持ちを彼に打ち明ける絶好の機会よ)

「だって私……あ、あの女のこと信用してないから」

「それ……だけ?」

「そ、そうよ! あいつすごく変だし、なぜかあんたにやたらと興味を持ってるし……」


部屋は一瞬、完全な静寂に包まれ、やがてKaelianが口を開いた。


「……それって……そんなに変かな?……」

「変よ!……えっ、えっと! 違うの! あんたがあいつに好かれるはずないって言いたいわけじゃなくて……でも、おかしいじゃない……」


遺産が言う。


(……これ以上墓穴を掘りたくないなら、口を閉じた方がいいと思うわよ)


Kaelianは彼女を見つめ、頷いて言う。


「心に留めておくよ。心配してくれてありがとう」


彼が背を向けて部屋を出て行くと、Naeviaは瞳孔を収縮させたまま、その場から動けずにいた。

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