その115
ガツガツッ!
ガツッ!
ズズズッ…カンッ!
「……まぁ、朝市の人気店ってならこいつらが居るのは当たり前か」
人がごった返す魚屋にトマトばかりが置かれている八百屋らしき場所の誘惑を潜り抜けて――そもそも誘惑に負けても使う金がないから大丈夫なんだが――ちょいと奥まった方にある飯どころが密集しているエリアに辿り着いたまでは良かった。一旦足を止め息を整えてから物色しようと、目移りをしないように少し下を向いていた顔を上げてみたら…フードファイトでもしてんのかって勢いの野郎共が目に広がってきた。この場所水産ギルドに近いから、これから仕事を始めるってやつらには絶好の飯どころだわな。
「んん?ゴンボのおっしゅんじゃねうか!きぬうぶりだあ!」
「せめて口の中の物を腹に収めてから話せ!」
そのなかでも一番豪快に飯を食らっているのが何を隠そうギルネットの野郎だ。朝から重いだろうに、フリットにアヒージョやステーキ…果てにはパエリアを食ってんのに片手にパンを握ってやがる。こいつはどんだけ食うんだ?
「ングッ…よう!ゴンゾのおっちゃん!」
”朝早くからお疲れ様でさぁ!”
”これから朝飯で?”
「んなところだ。ここの人気店のことを聞いたんで食いに来たんよ」
「なるほどなぁ…俺のおススメはそこのパエリアだな!魚を余すとこなく使った極上のスープを使っているし、その日によって具材も変わるから毎日楽しめる一品だぜ!」
「ほう?中々にセールスが旨いじゃねぇか」
「まぁ、うちの魚を卸しているお店ですので」
「そういうこった!お得意様は宣伝しなくちゃな!」
「おっと、シキルの嬢ちゃんも居たのか…ギルネットで見えなかったわ」
旨い事巨体に隠れていたからマジで気が付かなかったぜ。嬢ちゃんは野菜が多く入ったスープに小さめのバゲットに具材の入ったサンドイッチ…パニーニだっけか?そんな感じのをゆっくり食っていたようだ。隣合って食っているのにビックリするぐらい食っている物が違う…船員たちは思い思いのやつを常識的な量で食ってるみたいで安心するな。
「ゴンゾさん。あそこのパエリアは本当におススメできる物ですので良かったら食べてみて下さい」
「おう、丁度聞いていた店もそこみたいだから食わせてもらうわ……ついでに聞くんだが、そこの店は具材の持ち込みもできるか?」
「?…ええ、大丈夫だと思いますが」
「なんだなんだ?とっておきのもんでもあんのか?」
「別にとっておきってもんでもないが、磯で採ってきたので丁度いいのがあるんだよ…ほれ」
マジックバッグから取り出したるは釣り餌に使っていたイガイ――――パエリアって言ったらムール貝だろ?
意外な所で使い道が出来た…
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