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その116

「おいおいおい!ムール貝じゃねぇか!?」

 手に出したイガイを認識してすぐに、ギルネットがパエリアを食うのに使っているでかいスプーンをこちらに向けながら叫んできた。まぁ、フォークじゃねぇだけましか?


ペルセベス(カメノテ)採りん時に隣にびっしり生えていたんで一塊だけ採取しておいたんだよ。一部釣り餌に使ったがな」

 俺ら日本人が想像するパエリアには欠かせない食材だろう?ギルネットが食っているタイプの海鮮パエリアってのに使うのには最適すぎるぜ…こういうやつ以外にも兎肉やらのジビエを使った山の幸の方もあるんだがな。そっちもなかなか旨いぞ。


「成程…あの時に一緒に採取していたのですね」

「流石に牡蠣やらはどうすりゃいいか分からんから採っていないがな」

「牡蠣もあったのですか…あの、また依頼を出してもいいですか?」

「そりゃ構わんが。依頼を出す時間はあんのか?この後仕事があるだろ」

 ギルネットやシキルの嬢ちゃんは話しているが、他の船員たちはこちらの様子を伺いながら黙々と飯を食ってるからすぐにでも始めると思っているんだが。


「私はこの後ギルドで、朝市での納品の報告がありまして…その時に出そうかと」

 ”それに今日は漁自体は休みなんでさぁ”

「そうなのか?」

「ええ、休日の前日は漁具の点検や補修に充てるのを決まりにしているんです」

 ”でかい穴とかが開いた時はその日のうちに補修すんですが、細かい傷やら歪みはちゃんと見ないとわかりやせんから”

「キチンとしてんだな」

「大切な仕事道具ですから」


 当たり前のことではあるが、素晴らしい考え方だ……道具だからこそキチンと手入れやらの世話をしてやらないと全力を発揮できないって、どこかの飛翔体団のおっさんも言っていたしな。大事な時にひびが入っていたのが原因で完全にイカレちまったら何もできなくなっちまう。

「んで、その作業をするギルネットはどこに行ったんだ」

「ええーっと…お店の前にいますね」


 目を離したすきにあのでかい図体が消えていると思ったら、今しがた薦められた海鮮料理が人気の店の前で何やら身振り手振りで話しているのを嬢ちゃんが発見した。あれは何か交渉でもしてんのか?

 ’ふぅん、それぐらいなら構わないよ’

「いよし!ゴンゾのおっちゃん!ムールを使った料理を幾つか作って貰えるように話を付けたぞ!」

「んなことしてたのかよ……それで?お前さんも食いたいってことか?」

「そういうこった!代わりに調理費は俺が持つからよ!」

「ならいいぞ」

「いよっしゃ!話が早くて助かるわ!」


 店の前で小躍りしながら喜ぶギルネット…こいつ明日のデートの金残してあるんだよな?

磯の物が好きなシキル…そして旨いものには金を厭わないギルネット。


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