その114
’安いよ安いよー!’
’さっきまで生きていた新鮮な魚はここにあるぞー!’
’この港町で一番旨いバカラオは俺の店のだ!ぜひ見ていってくれ!’
’今日もトマトが安いぞー’
’塩鯖に燻製鯖、それに酢漬けも取り扱ってるここだー!’
ガヤガヤ…
「やっぱこういう雰囲気はいいねぇ」
宿でのやり取りを終えて、朝の閑散としたメインストリートを歩いていくと段々とこの喧騒が聞こえてきたんで楽しみにしながらやってきたが…期待を上回るレベルの活気と規模で最高だわ。んでもちろん魚だけじゃなくて野菜や調味料やらも扱っているらしく、魚屋の呼び込みに混じって色々と聞こえてくる……トマトは今日も八百屋の兄ちゃんのところに大量に並びそうだな。
「さぁて、取り敢えずは軽く見て回るか」
周辺の客とのやり取りや流れのせいでつい立ち止まって見ちまいそうになるが、そうなると店からすればターゲット認定されて即座に声を掛けられるんで気を付けんとな。歩くのを緩めるぐらいならいいんだが、ピタッと止まって品を眺めたらアウトだ……怒涛の売り込みがやってくる。ノーと言えるのなら問題ないが、質の良さや値段の安さやらを提示されるとそれならまぁって思ったりするだろ?そして帰ってきたら何でこんなの買ったんだってなるわけよ。商業施設やらのアンテナショップみたいなので経験のあるやつはそれなりに居る事だろう。
「まぁ、出歩いているのに生魚を買う奇特な奴はそうはいないだろうがよ。キチンと持ち帰れるのなら問題ないが」
そんなことを言っている俺自身が大分奇特な人になっている気はする…なんせ残金800ミールでこの朝市にはせ参じているわけだからな!いつもよりちょっと多めの小遣いを貰って駄菓子屋に意気揚々とやってきたガキみてぇだな?
「買うものも食えるものだし同じようなもんか…といってもその場で食うんだがよ」
駄菓子を買ったガキも店先ですぐに食ったりするか?ってもう駄菓子のことはいいんだ。昨日情報屋兼飲み物売りのショケンから手に入れたこの朝市の人気店に急がねぇと。こういう場所の店は販売数があんま多くなくて早めに店じまいしちまうことが割とあるから、コレと決めたのがあるのなら寄り道したりせずに一直線に行くことをお勧めする。あの時に変に立ち止まていたりしなければっていう後悔が生まれる前に、誘惑を振り切って行くんだ。
――――他の店のセールスで立ち止まって、目の前で目的のやつの最後の1つを買われた俺が言うんだから間違いないぞ。
目的のラーメン屋の近くにパン屋があって、そこで良さげな物を買った後に向かったら丁度麺切れになった経験があります……悲しい気持ちになりながらカレーパンを食べた思い出。
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