第85話
第85話 メグの過去
メグは、魔女である。
それも見た目は幼女だが、実年齢は・・・。
フィルは、そのことについて触れないようにしていた。
「メグさんは、助けたい魂がいるって言ってましたけど、聞いても?」
「あぁ。構わないのだ。いろいろ試行錯誤したけどダメだったのだ。そもそも地獄に囚われている魂を取り戻すことなんてできないのだ。」
「助けたい魂は、地獄に囚われているんですか?」
「だいぶ前の話なのだ。わしの息子は早くに亡くなってしまったのだ。見ての通り、わしは体が小さい。子供を満足に産める体ではなかったのだ。話すこともできずに、亡くなってしまったのだ。」
「なぜ地獄に囚われているんですか?」
「それはわしの呪術が未熟だったからなのだ。黒魔術で悪魔と取引をしたのだ。息子の魂を天秤にかけてしまったのだ。悪魔との取引で息子は、肉体的には生命を維持することができたのだ。けれど、魂を持っていかれてしまった。きっと今頃、わしを恨んでいるのだ。」
フィルは、メグの過去について何も言えなくなってしまった。
「暗くなってしまったのだ。クロムウェルの肉体はちゃんと清めて埋葬してあるのだ。わしももう吹っ切れているのだ。やることはやったしこれ以上、わしには何もできなのだ。」
「ん?クロムウェル?」
「わしの息子の名前がどうかしたか?」
「いや・・・。僕の知っている悪魔の名前と一緒だったので・・・。」
「きっとたまたまなのだ。もし本当ならわしはその悪魔に謝らなければならないのだ。」
「メグさんは、一目見ればその魂の根源がわかるんですよね?」
「まぁ、ある程なのだ。」
「もし、僕の知っているクロムウェルという悪魔を見たら、息子さんかどうかわかるのでは?」
「それは、わかると思うのだ。」
「わかりました。どうにかやってみましょう。」
「あんまり期待はしないのだ。」
「あはは。一応、お金以外のお礼ということで。」
「それなら呪術の試験として悪魔の召喚でもやってみるのだ。前もって呼び出す悪魔に必要なものをそろえておけば、好きな悪魔を呼び出すことができるのだ。」
「じゃあ、クロムウェルを呼び出せば、息子さんかどうか確認できますね。」
「そうなのだ。しかし、悪魔を呪術で償還するには、契約が必要なのだ。なにか願い事はあるのか?」
「うーん。今は魂の修復方法ですかね。それもほかの魂を吸収しない方法での。」
「まだあきらめていなかったのだな。まあ、悪魔にでも聞いてみるのだ。必要な素材はほとんどがうちの店でそろう。やってみるのだ。」
「ありがとうございます。」
―――――
フィルはメグの指導のもと魔法陣を描き、その上に必要な素材を置いていく。
「素材の代金はあとで請求するのだ。」
「わかりました。練習とは言え素材がなくなってしまいますから代金はお支払いします。」
「さて、魔法陣の中央にこの紙を置いて完成なのだ。」
「クロムウェルと書いた紙ですね。これで特定の悪魔を呼び出すことができると。」
「そうなのだ。あまり、長くは引き止められないのだ。手短にするのだ。」
「わかりました。では。」
そういうとフィルは、魔法陣に魔力を流し込み始めた。
円状の魔法陣に光がともり始め、黒魔術の素材が一斉に燃え上がる。
すると、スーツを着た悪魔が現れた。
「何をしている!やつを取り押さえろ!・・・ん?ここは!?」
「やぁ。クロムウェル。直接話すのは、ルシファーの一件以来だね。」
「あなたはフィル様ですか?というよりもここは?」
「黒魔術で地獄から呼び寄せたんだ。ちょっとしたお願いがあってね。」
「呼び出した!?今はそんなことをしている場合ではないんです!すぐに戻してください!」
「いやいや。効力が切れるまでは、ここにいてもらうよ。」
「今、地獄では大変なことになっているんです!アイツを外に出してはこの世が終わってしまう!」
「なんのこと?」
「話している場合ではないと言っているでしょう!・・・時間がない。取引とはなんですか?」
「ほかの魂を吸収せずに魂の修復をする方法を教えてほしい。」
「・・・わかりました。なんとかしましょう。では、悪魔からの取引です。今地獄にいるアイツを早急に葬ってください。」
「アイツ?」
「とにかく地獄へ来て・・・・。」
魔法陣の効力が切れ、クロムウェルが消えた。
「なんということなのだ。あの悪魔は・・・。わしの息子なのだ。しかし、わしを見ても何も言ってこなかった。」
「切羽詰まった感じでしたね。クロムウェルが息子さんならメグさんも地獄に会いに行きますか?」
「こんな老いぼれを連れて行って足手まといになるのだ。」
「魂の修復方法のカギを見つけ出せたのもメグさんのおかげですし、必ず僕が守ります。息子さんに合わせる約束もしたし、謝りたいんですよね?」
「・・・そうなのだ。これが最後ならやってみる価値はあるのだ。フィルよろしくお願いするのだ。」
「それじゃあ、一緒に地獄に行きましょう。」
そのころ地獄では大変なことになっていた。




