第84話
第84話 魔女メグ
店を出て闇市を進んでいく。
行く先々でニコはいろいろな人から声をかけられる。
それをにこやかに返し、お辞儀をしていく。
「ずいぶん、ここに馴染んでいるんですね。」
「えぇ。これも私がしたいことですし、主人が大切にしているところなので。」
「ニコさんは、今具体的にどういう状態なんですか?」
「えーっと。魂が二個ある状態で、その二つが織り交じって一つの魂になっている状態って言えばいいのでしょうか。」
「悪魔の魂とヒューマンの魂が同化している状態ってことかぁ。」
「それで、魔女の秘薬を使うと悪魔の邪悪さが薄れていくと?」
「そのようです。もちろん実感として、悪意などはなくなっている気がしますし、悪魔の邪悪さも消えていると思います。」
「魔女の秘薬ねぇ。魂に干渉しているのは間違いない。」
そうこう言っているうちに、闇市の裏路地にある古ぼけた店についた。
ニコは三回ノックして扉を開け入った。
「あらら、これはまずいことになったのだ。」
「すみません。いつも秘薬とメグさんに御用のある方をお連れしました。」
巨大な三角帽子を被り、店のカウンターの奥に座っている幼女が目を丸くしている。
「悪魔に、魔人、そして・・・ん?ただのヒューマンなのだ?」
「どうも、初めまして。フィルと申します。魔女にお聞きしたいことがありまして、ニコさんの協力でここに。」
「ニコ。殺されなくてよかったのだ。」
「あはは・・・。そうですね。」
「フィルとやら、この魔女メグに何を聞きたいのだ?」
「はい。単刀直入にいうと、破損した魂の回復の仕方です。」
「ほう。魂の修復なのだ?」
「そうです。出来れば、その方法を教えてほしいんですが・・・。」
「うーん。難しいのだ。とても難しいのだ。」
「出来ないのでしょうか?」
「出来るのだ。しかし、めっちゃ難しいのだ。」
「どんな素材も集められます!教えてください。」
「とりあえず、奥で話すのだ。」
フィルたちは、メグに連れられ奥の客間に連れられた。
そこには、いかにも黒魔術で使いそうな素材が並べられており、変な匂いもした。
「魂の修復には、魂が必要なのだ。」
「というと?」
「魂はエネルギーの塊なのだ。そのエネルギーをほかの魂からもらい充填するのだ。」
「魂は肉体から離れてしまうと消えてしまいますよね?」
「そうなのだ。そこで、黒魔術を使うのだ。魂を別の場所に一時的に保存する黒魔術なのだ。」
「一時的に保存・・・。」
「その魂を使い、対象の魂を再燃させるのだ。それも黒魔術が必要なのだ。」
「黒魔術があればいけそうですね!」
「何を言っているのだ!魂はどこから調達するのだ?生きている者から奪えばそやつは死ぬのだ。」
「そっか。確かに。」
「再利用できる魂なんてそんな簡単に見つからないのだ。だからめっちゃ難しいのだ。っと喋ったのだ。そいつの覇気を止めさせるのだ。」
すると、フィルがようやく気付いた。
リンは店に入るなり、臨戦態勢の覇気を垂れ流していた。
メグは黒魔術を使える魔女だが、戦闘力が高いわけではないので、怯えていた。
「ああ、すいません。リン。その禍々しい覇気を止めて!」
「申し訳ございません。フィル様に敵対する者かもしれなかったので。」
「わしはそんなことしないのだ。悪い魔女と違って優しい魔女なのだ。」
「話は変わりますがこの本を見たことありますか?」
フィルは、聖王国アルムストラからの支援物資に紛れ込んでいた本をメグに見せた。
「こんなことをしている者がまだいたのだ。幼稚なのだ。」
「誰の仕業かわかりますか?」
「そこまではわからないのだ。何せ、魔女は各々身を隠して好き勝手にしておるのだ。」
「メグさんはなぜお店を?」
「儲かるからなのだ!ニコのような者が表立って言えないようなことを解決するのがわしの商売なのだ!」
「そうですか。」
「フィルとやらも、なにか言えないことでもあるからわしに力を借りたいんのだろ?」
「言えないわけじゃないですけど。修復したい魂がありまして・・・。」
「魂を修復するということがどういうことか、わかっていないのだ。魂を修復できるのなら命は永遠になるということなのだ。足りなくなったら補充する。そんなことが簡単にできてしまったらこの世はおかしくなってしまうのだ。」
「・・・。確かにそうですね。」
「お前のエゴで勝手に魂の寿命を延ばすのは、理に反するとわしは思うのだ。どうだ?」
「おっしゃる通りだと思います。ですが・・・。」
「何があったかは知らんが、その魂はあきらめるのだ。」
「何かほかに方法はありませんか?」
「まだ言うのか?どんな形であれ魂の寿命を延ばすのは、禁忌なのだ。不老不死なのだぞ?」
「・・・。」
「フィル様・・・。」
ガブリエルが言っていた魂を肉体に戻す方法があるとしても、メルトとアルトの消耗した魂を戻したところで目を覚ますことはないだろう。
そこで、フィルは魂の修復を求めて魔女に会いに来た。しかし、メグの言うことは正論だった。
魂を修復できるなら永遠の命があると同義。そんなことは理に反してしまう。
フィルは、黙ってしまった。
どうしたらいいか振り出しに戻ってしまった。
すると、メグが話し始めた。
「その魂は、今お前の中におるんじゃな?なら、お前の中で消えるまで見守るのがお前の役目なのだ。」
「・・・。」
「それともなければ悪魔にでもするのだ。」
「・・・?」
「悪魔にすれば、ほかの魂から生気を吸い取るのだ。そうすれば、魂も修復するのだ。だが、あの悪魔だ。生半可な覚悟ですることじゃないのだ。」
「大罪ですら浄化できる秘薬を使えばどうにかなりませんか?」
「ニコは特別なのだ。これほど、浄化されたいと心から思っている悪魔などいないのだ。それにお前は、その魂を悪魔にしたあとは、干渉することが出来ないのだぞ?その悪魔になった魂が自ら浄化されたいと強く思わなければ、ただの悪魔なのだ。どうにも出来ないのだ。」
「・・・。」
八方ふさがりのフィルは、ため息をついた。
「ここまでか・・・。」
「フィル様・・・。」
「可能性があるかもしれない程度だったとはいえ、現実を突きつけられると堪えるね・・・。」
「方法は伝えたのだ。あとはお前がどうするかなのだ。」
「ありがとうございました。少し考えてみます。」
「まぁ、いろいろあるだろうが気を落とすんじゃないのだ。わしも助け出したい魂がないわけじゃないのだ。それが手に入るなら何をしたっていいともおもっているのだ。」
「はい。メグさん、それとニコさんもありがとうございました。」
「残念な結果で、何と言ったらいいか・・・。」
「いいえ。ニコさんのおかげでメグさんとも会えたし、答えも出た。助かりました。最後にメグさん。魂を肉体に返す方法はありますか?」
「それはもちろんあるのだ。ほれ、この本をやるのだ。」
「基礎呪術本?」
「わしの手書きなのだ。そこにお前のやりたいことは載っているのだ。あとは自分でやるのだ。」
「ありがとうございます!まだ、少しの間アルムストラに滞在するので、わからないことがあったら聞きに来てもいいですか?」
「よいのだ。だが、次からはタダとはいかんのだ!」
「わかりました。ちゃんとお支払いします!」
「よい心がけなのだ!」
優しい魔女のメグの助言によって、メルトとアルトの魂の行く先を考えることとなったフィルは、アルムストラに滞在している間、メグの店に入りびたり、黒魔術や呪術の勉強をするのであった。




