第83話
第83話 遭遇
フィルとリンは、闇市に足を運んでいた。
「すごい人だね。」
「フィル様、離れないようにお手を。」
「ありがとう。まだ入り口なのに人がたくさんだ。」
「とりあえず、解体屋のフランクさんのところまで行きましょう。」
「案内してくれるって言ってたけど。魔女につながる手がかりあるかなぁ?」
「どうでしょうか。手あたり次第、怪しい店に聞き込みといったところでしょうか。」
「そうだよね。骨が折れるなぁ。」
フィルとリンが手をつなぎながら、闇市が行われている路地を進んでいく。すると、奥から溌剌とした声が聞こえてきた。
「ドラゴン!ドラゴンの素材ですよー!」
フィルはその気配を感じ取り、リンは目視で確認した。
そう、二人は色欲の悪魔と遭遇したのだ。
「リン!」
「かしこまりました。」
リンが人の大波をすり抜け、色欲の悪魔であるニコの腕を背後から抑え、店の中へ入った。
「え!?な、なんですか!?」
「店の前では目立つので。あなた、悪魔ですね?」
「え・・・。」
「なぜ、悪魔が客引きを?」
「そ、それは・・・。」
あとからフィルも店のなかに入ってきた。
「大罪の悪魔がどうしてここに。」
「いや、あの・・・。」
ニコがもごもごと言葉を濁していると、店の奥からフランクが出てきた。
「おいおい!うちの嫁に何してんだ!」
「フランクさん?」
リンは驚いた。
「この方が奥さんなのですか?どういうことでしょう。この方は悪魔憑きです。」
「そりゃあ、わかってる。事情があるんだ。放してやってくれ。」
「フィル様、どうしましょうか。」
「とにかく話を聞いてみよう。何かするようなら、一瞬で殺す。」
リンは拘束していた手を離した。ニコは、フランクに駆け寄り背後に隠れるように身を隠した。
「あんた、悪魔を見分ける力があるんだな。そりゃあそうか。ドラゴンを一人で倒すほどの腕前だからな。」
「まぁ。そうですね。そこの悪魔は、普通の悪魔とは違います。どういった経緯で匿っているのですか。」
「信じてもらえねぇかもしれないが、ニコは悪魔ともともとの魂が同居している状態なんだ。悪魔に蹂躙されているわけじゃねぇ。共生しているんだ。だから、悪さをすることもない。見逃してくれ。」
フランクは昔の話をし始め、フィルとリンは、静かに聞いていた。
フランクの話が終わるとニコが話し始めた。
「確かに私は、大罪の色欲の悪魔です。ですが、今はこの体の持ち主の魂と同化しています。どうにか魂をそのままに、悪魔の悪い部分だけを浄化出来ないかとフランクと探しているところです。どうか信じてください。」
「・・・。」
フィルとリンは顔を見合わせた。
「確かに、大罪であることは間違いないのですが、なにやら悪魔である部分が薄れているようですね。」
「邪悪さが薄れているような・・・。」
「それは、魔女の秘薬のせいかもしれないです。」
「「「!!!」」」
フィルとリン、そしてフランクまで驚愕した。
「おい!魔女の秘薬ってどういうことだ。」
「隠していてごめんなさい。とある魔女から秘薬を買っていて、そのおかげで悪魔の邪悪さを取り除くことができているんです。」
「その魔女の居所を教えてもらえませんか?」
「構いませんが、魔女に何かするようであれば、お断りさせていただきます。悪魔の邪悪さを取り除くには魔女の秘薬が必要なので、魔女がいなくなってしまうと私はこのままになってしまいます・・・。」
「それは大丈夫です。僕たちも魔女に用があるだけですから。」
「そうですか。では、私も安全であると認識していいですか?」
「このまま悪魔の力が薄まれば、ただのヒューマンと変わりませんし、魔女の力を借りられるお手伝いをしてくれるなら、僕たちもあなたのヒューマンになるお手伝いをしますよ。」
「いいのですか。フィル様。力は薄れているとはいえ大罪の悪魔ですよ?」
「フランクさんも了承しているし、何かあるならすぐに手を打つよ。」
「助かる。そういえば、この子は誰なんだ?」
フランクがリンに聞いた。
「この方は、私の主人であります、アドレニス王国第四王子のフィル・バン・アドレニス様です。」
「王子だと?なんだってこんなところに。」
「魔女を探してましてね。ニコさんがちょうど魔女のところに案内してくれるということで、ラッキーでした。」
「リンさんの主人ってことは、その年でリンさんより強いってことか?」
「その通りです。フィル様は私よりも強いです。」
「なんてこったい。」
「あなた、フィル様にお力を借りて早くヒューマンになれるようになります。」
「僕も魔女の居場所がわかってよかったです。」
「フィル王子様よ。嫁を殺さないでくれ。頼む。」
「大丈夫ですよ。でも、僕は悪魔をヒューマンにする力はありません。そこは魔女の領分ですから、どうなるかまでは確証できませんが。」
「そうか・・・。」
「あなた、きっと大丈夫です。あの方は悪い魔女ではありませんから。」
心配を隠せないフランクが肩を落とした。
「では、魔女のところへ案内します。」
ニコが言った。




