Case. 8 少年
「あの子の……3000文字……かわいそうに」
つれてこられたところは、子どもがたくさんいるところだった。
あの子たちと毎日あそべるのかな。ワクワク。
……
「ピーッ!」
この音はしゅうごうの合図。ひろまにいかないと。
「今日から新しい子が入ります。みんな、なかよくしてあげてね」
「ジュンだ。よろしくな!」
ちゃんとあいさつができる! すごい!
「おまえの名前、なんていうんだ?」
ジュン君に話しかけられた。
ダメだよ、おこられちゃうよ、と思って首をふる。
「だいじょうぶだよ。だれも見てない。おまえ、しゃべれるんだろ?」
しかたなく、答える。
「リョウ」
「リョウか。よろしくな。オレのことはジュンでいいぜ」
手をさし出すジュン。その手をにぎる。
「これでオレたちは友だちだ。いっしょにあそぼうぜ!」
ぼくらは友だちになった。
「なあ」
ジュンが話しかけてくる。
「あの校ていを走り回ってるだけのあそび、楽しいか? おれは楽しくない」
「どんなあそびなら楽しいの?」
「そりゃお前、ボーケンだよ。とおくに行って、きちを作って、てきをたおす。男のろまんだ」
「ここから出たらおこられるし、それはむりだよ」
「そうなぁ」
こうやって、こっそりジュンと話してるのが楽しいよ、って言いたかったけど、これ以上しゃべる回数がふえると見つかっちゃいそうだから言うのはやめておこう。
「リョウ! チャンスだ」
「なにが?」
「ボーケンだよ。なんかここにおきゃくさんが来てる。車で。コッソリのっちゃえば、遠くにつれてってくれそうじゃないか?」
「あぶないよ、やめておこうよ」
「ヘーキだって。ここは楽園ってよばれてて、わるい人はいないんだぞ」
そうなんだ。ジュンは色んなことにくわしい。
「どーせしっぱいしても、大しておこられないんだから、やった方がとくだって」
こうなったジュンは止まらない。一人でもやるんだろうから、いっしょにやってあげよう。
「作せんはこうだ。今来てるおっさんが車のキーをあけたら、リョウがおっさんに話しかけてくれ。そしたらオレが後ろのせきにしのびこむ。そして後ろのドアをこっそりあけるから、お前ものりこめ!」
それで上手くいくのかな? ジュンがそういうなら、できるのかな。
ボクはドキドキしていた。よく考えたら、ボクがおじさんに話しかけないといけないんだ。何を話そう。
そうこうしてる内に、おじさんが外に出てきた。
「(よし、オレは車の後ろにかくれとくから、あとはまかせたぞ)」
ジュンは小声でそう言うと、ゆっくりいどうをはじめた。スパイごっこみたいだ!
だんだんせいこうさせてやろうという気持ちになってきた。おじさんがキーを開けるしゅんかんを待つ。
ガチャ! いまだ。
「ねえおじさん、外のせかいって楽しいの?」
おじさんはいっしゅんおどろいた顔をしたが、すぐにこう答えた。
「あまり人に話しかけちゃダメって教わらなかったのか? 外の世界か。少なくともここよりはいいのかもな」
「教えてくれてありがとう!」
うまく話せた! ジュン、作せんせいこうだ!
こっそり車のうらに回ると、後ろのドアが少し開いていたから、いそいでのりこんで、しずかにドアをしめる。かんぺきだ。
「(ジュン、やったよ!)」
「(しーっ。ここで見つかったら水のあわだぞ)」
水のあわって? と思いつつだまる。
「おぼっちゃんたち、後ろのドアがちゃんと閉まってないから発進できないぞ」
「わわっ!」
いきなり話しかけれて、びっくりして声が出る。バレちゃった。しっぱいだ。
「外の世界が知りたいんだろう? ならまずはドアをちゃんと閉めてくれ」
よくわからないけど、言われたとおりドアをしめる。すると、ゆっくりと車がうごき始めた。
「外につれてってくれんの? すげーすげー」
ジュンははしゃいでいる。ボクもワクワクしてしまう。
「ほんとに行きたいなら、ちゃんと隠れててくれよ。見つかったらおじさん捕まっちゃうからな」
そう言っておじさんはだまってうんてんをつづけた。ボクらもスパイっぽくしっかりとかくれることにする。
「ツウコウキョカショウヲ、カザシテクダサイ」
ゲートでおじさんが何かをかざすと、バーが上に上がった。おじさん、えらい人みたいだ。
「さて、もう大丈夫だよ。外の世界が見たいんだろう? 窓から外を見てみるといい」
外を見ると、田んぼがじめんの向こうがわまでずっとつづいてて、空が夕日で赤くなっていて、田んぼにも夕日があって、とってもきれいだ、ってことだけはわかった。
「こっからがボーケンだ! オッサン、なるべく遠くにつれてってくれよな」
おじさんはうなずいて、車を走らせた。
ついたのは、小高い山の上だった。ちょうど夕日がしずむところだ。遠くには町が見える。
「ほら、あそこが君たちの住んでいる街さ」
「すげーすげー! リョウ、見ろよ。ビルがあんなに小さいぜ。ま王ごっこやろうぜ!」
なにそれ?
「オレがゆうしゃやるからおまえま王な。なに、しらない? じゃあオッサンがま王な。2人でやっつけるぞ」
「私が魔王をやるのかい。分かった。じゃあ始めるよ。
フハハハハ。ゆうしゃよ、よく来たな。どうだ、われのなかまになればこの広いせかいの半分をやろう」
え、半分もくれるの? と思ってチラッとジュンを見る。
「ぐぬぬ……」
ジュンも迷ってる。
「いや、ま王をたおせばこのせかいはぜんぶオレたちのものだ。リョウ、行くぞ!」
ジュンはひろった草のけんで立ちむかう。ボクはとりあえずブキなしだ。
「こしゃくな。うおおー」
ま王がさけぶ。ボクは後ろに回ってま王のひざをカックンする。
「ジュン、いまだ!」
「うおおおー」
ジュンは草のけんでま王をきった。
「やーらーれーたー」
ま王はたおれた。ボクたちはかったんだ。
「ははは。リョウ、やるじゃん」
「へへへ」
ジュンがほめてくれた。めずらしくて、うれしくなる。
「べつにボーケンしなくてもさ、こーいうあそびならできるじゃん。みんなでもっとなかよくあそびてーよ。前いたところも子どもばっかりだったけど、もっとみんなでいろいろやってたぜ」
「でもあんまり話せない子もいるし」
「オレたちが教えてやればいいんだよ。そしたらもっと楽しくなるよ、なぁ、オッサン」
ジュンはだまって話を聞いていたおじさんに話をふった。
「君たちが自分で考えて、いいと思った行動を取ればいいんだよ。ダメだったら大人が止めてくれるよ」
そうなのかな? よくわからなくて考えてたら、時間がだいぶたってたみたい。あたりはまっくらだ。おじさんが話しかける。
「見てごらん、星も街もすごくきれいだから」
遠くに見える町がキラキラ光ってる。けど、それよりも、頭の上の星がすごい!
「すげーすげー。帰ったらぜったい自まんしようぜ」
それからおじさんと、星の話をした。空になんとなく見える白いのが七夕のときに聞く天の川ってことだったり、南の空にある赤い星が、こわいさそりの心ぞうだって教えてくれたり。
少しねむくなってきた。ジュンはもうかんぜんにねてるみたいだ。ピクリともしない。
「帰ろうか」
おじさんはそう言って、ジュンをだっこして車にもどっていく。じゃあボクも、と車にむかったときだった。
いつの間にかまわりがパトカーにかこまれていた。
「おじさん!」
ボクはおじさんの話を思い出していた。
『見つかったらおじさんつかまっちゃうからな』
おじさんはジュンを下ろしてりょう手をあげていた。
「未成年者略取の現行犯で逮捕する」
ちがうんだ。おじさんはボクらのために……
村崎先生のこちらをお読みください。(https://ncode.syosetu.com/n3342gg/)
書き振りの参考にさせて戴きました。




