第6話 講習会
講習会の日がやってきた。
豊心君はやる気満々といった感じだ。
「今日は学校のみんなにパンの素晴らしさを広める日だ」と言っている。
調理実習室は満席ちかくになった。
時間が来たので始めようとするが、みんながざわついて収まる気配がない。
豊心君が前に立っても収まらない。
するとある生徒が「あの、そこに祀られている黒い物体はなんですか」と聞いてくる。
「これは神聖なものだ」
そして家庭科室から移動してきた、黒いパニス・クアドラトゥスについて説明した。
あのポンペイの遺跡から発掘されたパンを再現したものだ。
30分。
古代ローマの日常におけるパンのことや、噴火で奇跡的に現代でも形が残ったことを言っている。
説明が終わると何人かが拝みだす。
なんでだよ!
そりゃ話の内容はすごいことだけどさあ。
豊心君は満足そうだ。
続いてそもそもの本題であるパンの説明に入る。
人類が農耕・農業を始めるより早く、狩猟採集時代からパンを焼いていたと推測されている話から始まり、日本では安土桃山時代にポルトガルの宣教師によって伝来したことなどを話す。
その後は種類や製法の話になっていく。
横で聞いてる僕も、初めて知ることが多く、豊心君の知識量に感心した。
「では早速(2時間経過後)だが、今日はソーダブレッドを作ってもらう。アイルランドのクイックブレッドと呼ばれるものだ」
「クイックブレッドとは――30分後――と時間がかからないので打ってつけである」
話がなげえよ。
話してるうちに出来たんじゃないかと僕は思った。
薄力粉、強力粉、ベーキングソーダ、砂糖、塩、無糖ヨーグルト。
これらを混ぜてこねたら、形を整えて十字に切り込みを入れる。
「十字の切り込みは、悪魔を避けたり、妖精を追い出すためだ」ということを豊心君が説明。
オーブンで30分焼き完成。
用意したジャムを塗って、みんなで食べたのである。
「これ簡単だし美味しい」
「シチューとかにも合うんでしょ。オシャレじゃない」
「うん。美味しい」
どうやら好評である。
「パンにも種類があって発酵させなくて、このように早く作れるものもあるんだ」
と講習会開始から3時間以上経過しているが、気にせずに言う。
こうして講習会は終わった。
「ふふふ。どうやら信者が増えたようだな」と豊心君は上機嫌だ。
「これなら、僕でも手軽に作れるね」
「そうだろう。なんならあのパニス・クアドラトゥスよりも古いパンを作ってみるか?簡単だぞ」
「それは興味あるね」
「そうだろうそうだろう」
「あのさあ。私の分のソーダブレッドは?」と真奈美さんが言ってきた。
このあと豊心君が急いでまたソーダブレッドを作ることになったのだった。




