第5話 カレリアンピーラッカ フィンランドで愛されるパイ
翌日の放課後、パン作りをしようと思ったら豊心君が職員室に呼び出された。
僕にも付いて来いというので、一緒に職員室へ向かう。
職員室に入ると、講習会をやるように言われた。
文化部のいくつかに声をかけているとのことだ。
華道部やパソコン部や曲芸部などにも声をかけたという。
家庭科室と調理実習室を使用しているんだから拒否権はないと言われた。
職員室から出ると「拒否なんかする気はない。パン教を広める良い機会じゃないか」と笑みを浮かべて言う。
変な人が増えなければいいがと僕は思った。
家庭科室に戻ると、講習会の話になった。
「講習会ってなにやるんだろ」と僕が言う。
「パンの歴史、パンの素晴らしさ、パンの尊さ。この学校の生徒を毎日パンを崇めるまでに持っていきたい」
「それは無理。ご飯やラーメンが強すぎるもん」
「そんなことはない。例えば朝昼晩ラーメンを食べれるか?お弁当にラーメンを持っていけるか?米を単品で食べられるか?」
「僕は白米だけでもいけるけど」
「お前、パン教失格だぞ」
「パン教に入信した覚えないけど」
「では今日作るパンで入信させてやる」
「何を作るの?そういえば昨日北欧のって言ってたけど」
「カレリアンピーラッカだ」
「カレリアンビーなんだって?」
「カレリアンピーラッカ。フィンランドの牛乳粥を包んだものだ」
「粥ってことは、米使うじゃん」
「使うな」
「さっき米否定してたじゃん」
「違う。米はあくまで具材の一部。メインのパンの引き立て役だ。これが世界の真理だ」
「なに言ってるかわかりません」
「とっとと作りなさい」とそれまで黙っていた真奈美さん。
「はい」と豊心君。
厚めの鍋に水を沸かし米を加え、水を吸って膨らんできたら牛乳を注ぐ。
煮込んだら(40分ぐらい)塩とバターを。
ライ麦粉、小麦粉、塩を入れて、水を数回に分けて加え木べらでかき混ぜる。
生地を直径2cmくらいの棒状に丸め、端から10等分する。
1個を、直径14cmくらい、薄さ1mmくらいの円形にのばす。
牛乳粥を乗せ、ひだを寄せながら包む。
オーブンで焼いたら、バター湯にくぐらせる。
「これで完成だが、好みでつぶしたゆで卵とバターを混ぜた卵バターだったり、カッテージチーズなどを乗せてもいい」
「ちょっとこの前のハチャプリのアルなんとかバージョンに似てるね」
「少しだけな。具材が全然違うだろ」
あと、僕が思ったのは、日本の焼きそばパンも炭水化物×炭水化物のことを言う人もいるが、これも炭水化物と炭水化物じゃんと思った。
そう思うとこのパンに親近感を覚えた。
「美味しい」と真奈美さんの声がする。
もう食べているんかい。
僕も食べる。
バターの風味もたまらない。
「美味しい」と僕も言う。
豊心君が僕の顔を見てニヤニヤしている。
「ようこそパン教へ」
「だからまだ入信しないって」




