↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
59/66

第59話 イタリア・秘境パン探検ツアー(山奥の栗粉が主役のパン)

「来週イタリアに行くから」放課後真奈美さんが突然言いだした。


「来週って普通に授業があるんですが」


「今回は長いわ。一週間ぐらいかかるかも」


僕の話は無視ですかい。


「イタリアならローマかミラノか? あるいはフィレンツェをはじめとするトスカーナ地方とか」と豊心君。


「そんな大きな街じゃないわ」と真奈美さんが言う。


「地方都市?」と僕が言う。


「もっとすごいところも行くわよ。題してイタリア・秘境パン探検ツアー!」


この言葉に豊心君のテンションが爆上がりだ。


「よし。さっそく行こう」と豊心君。


「来週って言ったでしょ」


秘境パン探検ツアー。


僕は嫌な予感しかしなかった。



そしてイタリアに行く日になった。


豊心君はずっとテンションが高い。


飛行機を乗り継ぎ、イタリアのピサ空港を目指す。


機内で僕が真奈美さんに質問をした。


「それで真奈美さん。イタリアのどこを目指すんですか?」


「レニャーノというところよ」


「聞いたこともない場所ですね」


「そりゃ、カゾーラ・イン・ルニジャーナにある小さな集落だからね。人口100人ちょっとよ」


「少なっ。うちの学校の一学年より少ない」


「そこにね、イル・フォルノ・イン・カノアラっていうパン屋があるの。もちろんその集落で一軒だけね。そこに小麦粉、大量の栗粉、少量のジャガイモ、オリーブオイルで作られたパンが売られているの」


僕が豊心君に「知ってた?」と聞く。


豊心君は悔しそうに、「知らなかった」と言う。


豊心君が知らないパン。


秘境ツアーの最初から、とんでもないところに行くことになった。



2度の乗り換えでピサ空港に着く。


そこからはレンタカーで移動だ。


車も、運転手も真奈美さんが手配をしてくれた。


アプアーネ・アルプスとトスカーナ=エミリア・アペニン山脈の間にある村。


周囲は山と森林で、栗林が多いという。


石造りの古い家。


近代的な観光リゾートという感じではなく、農村として形成された古い集落であった。


そしてついに目的地のイル・フォルノ・イン・カノアラっていうパン屋に着く。


僕たち3人は店に入る。


店主は日本人が来たことに驚いているようだ。


Marocca di Casola(マロッカ・ディ・カゾーラ)。


今回の目的のパンである。


見た目は濃い茶色。


そして栗の匂いがする。


割ってみると中は明るい茶色。


割った感じは、詰まった感じがあるが、柔らかい。


店主は甘いものにも、塩気のあるものにも合うという。


まずはそのまま。


甘い。でも普通のパンの甘さじゃない。


食感はふわふわ系ではなく、密度のある、少し重たいパン。


それは小麦粉で作るパンと違う、不思議な味だった。


現在、このパンを定期的に作っているのは、ここだけだという。


人口わずかな山間の集落。


そこで僕たちは、栗を主役にした不思議なパンと出会ったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。