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第56話 後半戦開始

審査員が休憩から戻り席に着いた。


さあ後半戦の開始だ。


後半戦は、強烈なパンチで幕を開けた。


次は茨城代表。


「わたしの2品はこれ!」


もう匂いでわかる。


納豆でしょ。


納豆のカナッペ風と、干し芋のドッグパンだ。


納豆のにおいに会場が軽くざわつく。


僕は納豆を出すのはわかるけど、包む系にして欲しかったと思った。


次は長崎代表。


「わたしのはこれです」


フランスパンで皿うどんを包んであるのとカステラをサンドしたパンだ。


カステラをパンでサンドってなんだよ。


次は静岡代表。


僕の要警戒の代表だ。


お茶パンがきたらまずい。


しかし、それをはるかに超えるものだった。


「わたしのはこちら」


うなぎと桜えびだと。


うなぎをパンで包んで揚げている。


カレーパンのような見た目だ。


桜えびは小さなタルトみたいなのに乗せてある。


うなぎを揚げるな!


次は愛知代表。


ということは豊心君が最後、いわば大トリというわけか。


「わたしの2品です」


手羽先のサンドと味噌カツのサンド。


両方サンドじゃねーか。


てか手羽先食べづらいだろ。


最後は東京代表。


豊心君が前に出るが客席と代表者たちがものすごくざわついている。


一体なにが起こったんだ。


「俺の2品はこれだ」


江戸前寿司のサンドはわかる。


いやわからない。


寿司を挟む意味がわからない。


しかしツッコめない。


それはもう1品が強烈すぎるから。


この匂い。


間違いない。


確かに東京の特産物だ。


そうくさやだ。


くさやをバゲットで挟んでいた。


会場はプチパニックだ。


代表者たちも舞台裏に避難する。


しかし、北海道と愛知の代表がなぜか悔しがっていた。


「うちにも鮒(ふな)ずしがあれば対抗できたのに」


対抗すんな。


茨城代表も「納豆では勝てない。負けた」


匂い勝負ってなに?


審査員は逃げられないので座ったままだ。


豊心君が審査員の前にパンを置く。


3人が恐る恐る食べている。


会長と有名シェフが驚いたように言う。


「あれ?この2品美味しい」



窓が開けられ換気がされ、ようやく会場が落ち着いてきた。


結果発表である。


会長が前へ出てくる。


「今回も色々ありましたが、若者の自由な発想を見れて大変感激しています」


1人自由過ぎたけどね。


「それでは結果を発表します。3位北海道代表。2位静岡代表。優勝は富山代表です」


早口で言い終わると、みな逃げるようにしてこの場を離れた。


まだくさやの匂い残ってるんだけど。


僕は豊心君のところに行く。


「なんであの2つ選んだの?」


「審査員たちは美味しいって言ったろ」


「たしかにそうだけどさあ」


「だから東京は不利すぎるんだよ。むしろ健闘した方だし、インパクトはあったろ」


「インパクトはすごかったけどさあ」


「他の県なら俺も勝負できたんだけどな」


僕はその時ふと思った。


「この前の大蔵大根でよかったんじゃ」


「あっ」



*くさやは伊豆諸島に伝わる伝統的な発酵食品です。独特の強い匂いがありますが、味わい深く、パンとの相性も良い食材です。

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