第38話 キプロス島のハルーミチーズのパン
翌日、パン・チーズ連合の祝勝会が行われた。
変わったチーズのパンが食べたいという加奈子さんの要望により、豊心君がハルーミチーズのパンを作ることになった。
ハルーミチーズって何って僕が聞くと加奈子さんが答える。
「焼いても溶けにくいチーズなのよ。塩がかなり強めで、噛むと「キュッキュッ」と音がするぐらいの歯ごたえがあるの。水に浸して塩抜きしてから、フライパンとかでバターで焼いて食べたりするとめちゃうまだよ」
「そんなチーズがあるんだ」
「ハルーミチーズのステーキはねえ、そりゃ美味しくて」
「あっ長くなりそうなのでもういいです。十分わかりました」
加奈子さんが不満顔になった。
豊心君はキプロスで最も一般的な食べ方の、ピタパンの中に焼いたハルーミチーズとルンザ(豚肉の生ハムのようなもの)とトマトを挟んだものを作ってくれた。
そしてフラウナという復活祭で食べるハルーミチーズ入りの伝統的なパンも一緒に。
フラウナは、ハルーミチーズをすりおろして入れたパンである。
どっちも美味しかったが、焼いたハルーミチーズがとても美味しかった。
「帰りに輸入雑貨屋でハルーミチーズ買って帰ろうかな」と僕が言うと
「あなたもチーズ教に入信ね」と加奈子さん。
「僕は無神論者です!」と強く言う。
そんな感じでみんなで食べていると、加奈子さんが言う。
「そろそろ私、帰らないとね」
「地元にですか?」と僕が聞く。
「そう。こっちに来るのは今月末までの話だったから」
僕はこれで、毎日チーズパンから解放されると喜ぶ一方で、少し寂しい気持ちもあった。
豊心君はとても残念そうに見える。
そして僕と豊心君にチーズ教のラペルピン(スーツの襟元に着けるもの)をくれた。
だからチーズ教に入った覚えはないんですが。
しかもいつ作ったのだろうか。
豊心君は「俺もラペルピン作ろうかな」と言っている。
僕は着けないからね。
そして祝勝会が終わると加奈子さんが帰って行く。
「今度はマヨラーを倒しましょう!」と言って。
まだ敵がいるんかい。
こうしてパン研究会に日常が戻って来た。
豊心君はパン生地を仕込み、真奈美さんは読書をしている。
僕もノートパソコンで色々調べようと思って立ち上げた。
するとデスクトップの背景が、一面チーズの画像だらけに。
そして右側に黄色い文字でチーズ教と書かれていた。
いつの間に背景を差し替えたんだ。
僕はデスクトップの背景をパンの画像に戻したのであった。




