第34話 アイスランドの地熱で焼くパン
今日は早くに授業が終わった。
豊心君と部室に向かったが昼までにはまだ時間がある。
「こんなに早く終わったなら時間がかかるパンを作れるな」
「時間がかかるパンって?」
「そうだな。いろいろあるけど、今日はフヴェラブロイズというパンを作る」
「どういうパン?」
「アイスランドで地熱を利用して長時間ゆっくり火を通す製法のパン。ライ麦の生地を鍋や木の樽に詰めて密閉して、温泉や間欠泉の近くの地面に埋めるんだ。」
「地熱なんてどうするの?」
「まあオーブンの低温で作るしかないんだけどね」
そして豊心君が生地作りをする。
ライ麦をベースに黒糖や牛乳も入れている。
100℃に予熱したオーブンに生地を入れた。
「どのぐらいかかるの?」
「10時間ぐらい。でもさすがに下校時間があるから途中で取り出すけどね」
「その間なにしようか?」
「ゲームでもやるか?」
豊心君からゲームという言葉が出てきたのに驚いた。
そしてボードゲームを2人でやった。
もちろんパンのゲームだ。
内容は中身がめちゃくちゃブラックなボードゲーム。
パンを焼くけど、仕事を押し付けたりする。
パンを焼くのに1回失敗したら激怒され、2回失敗するとクビになった。
「なんてゲームなんだ……」と僕が言う。
「これシリーズものでたくさん種類が出てる人気ゲームなんだぞ」
そして男2人で数時間ゲームをしたのであった。
途中から真奈美さんが参戦したが結果はもちろん真奈美さんの圧勝に終わった。
時間も遅くなったので、オーブンからパンを取り出し、しばらく冷ます。
冷めてきたら3人で食べた。
「本当は1日寝かせた方がもっと美味しくなるんだけどね」と豊心君。
僕は食べてみたが、甘い。
かなり甘く、独特のコクもある。
しかしバターを塗ると、これが合って美味しい。
すると真奈美さんが言い出した。
「今度うちに私の親戚が来るの。ここにも連れて来るからよろしくね」
「どんな人なんですか?」と僕が聞く。
「食にうるさい女の子。私たちと同じ高1よ」
なんだかとても嫌な予感がする。
一体どんな人なんだろうか。
まともな人なら良いんだけど。
そう思いながら真奈美さんを見ると、笑みを浮かべているように見えたのだ。




