第29話 どちらの案に
「クヴァフョルドケーキ?」と東京担当の人が聞く。
「ノルウェーの世界一ケーキです。自称ですが」
僕はクヴァフョルドケーキについて説明をする。
途中、豊心君が「元のケーキのレシピあるか?」と聞くので、サイトを教えた。
そしてまた、僕はケーキの魅力と変更点などを話していく。
3人が興味深そうに聞いてくれている。
専門家でもない、ただの一般人である僕の話を大人たちが真剣に聞いてくれているのが嬉しかった。
でもこれで終わりではない。
これで勝ちたいんだ。
3人がノートパソコンで画像を検索し、それを見ながら話し合っている。
そして僕に質問がくる。
それに僕が答えていった。
するとオーブンが鳴る音がする。
見ると豊心君がクヴァフョルドケーキを作っていた。
ただパンならこれで提供なのだが、今回はケーキ。
ノートをうちわ代わりにして冷ましている。
しかし、これでは冷めないと思ったのか、パンの七戒の額縁で仰ぎ出した。
冷蔵庫に入れないのかな、と僕は思った。
コンビニエンスストアの人たちも豊心君に気づいた。
「この短時間で作ったのか」
「いい匂いだ」
と感心している。
それからようやく冷蔵庫にいれたのだ。
僕が話が終わったのを気づくと「では先週の続きを話しましょうか?」と豊心君が言う。
東京担当の人と広報担当の人は遠慮したが、工場長はパニス・クアドラトゥスを前に拝み始めた。
豊心君と工場長がパン談義をし始める。
僕と残りの2人は「どうしたらいいんだ」という状態になった。
すると東京担当の人が思い出したように言った。
「ツィーガークラプフェンパンの試作ができました」
そう言って、僕と豊心君と真奈美さんにパンを渡す。
袋を開けてみる。
見た目は三角の揚げパンだ。
一口食べてみる。中はクリームチーズフィリングだ。
甘い揚げパンとクリームチーズが合っていて美味しい。
さすが豊心君だと思った。
そうしていると、ケーキができた。
僕と豊心君とコンビニエンスストアの人たちと真奈美さんも一緒にケーキを食べる。
こちらも美味しい。
自称世界一もあながち間違っていないのではと思うぐらいに。
食べ終わったあとにコンビニエンスストアの人たち3人で話し合う。
今までより長い。
コストの話や、作り方の工程についても話しているようだ。
そして3人がこちらを向く。
結論がでたようだ。
「両方、とても美味しかったです。正直に言うと両方採用したいです。しかし1校1つと決まっているので選ばなければなりませんでした」
そういうと、僕と豊心君を見る。
「弊社がえらんだのはツィーガークラプフェンパンです」
豊心君が当然だというばかりに頷く。
悔しい。
「ですがクヴァフョルドケーキの方も採用したいです。こちらは校名は入りませんが、ケーキとして冷蔵コーナーで……」
「えっ?」
結局勝負は豊心君が勝った。
でも僕も別枠で勝ち取ったのだ。
今度は真奈美さんが3人と話し始めた。
豊心君がやってきて僕に握手を求める。
「やったな。友久。でもパン勝負は俺の勝ちだからな」
そして今度は豊心君も呼ばれてツィーガークラプフェンパンの試作したパンの話になったようだ。
僕は廊下に出た。
悔しさと嬉しさがごっちゃだ。
すると自然と声が出た。
「やったああああああああああ!」




