第27話 真奈美さんからのお礼
真奈美さんから明日の放課後、部室で待つように言われた。
そして当日、僕と豊心君は緊張して席に座っている。
一体どんな拷問なのだろうか。
というのも、僕にとっては拷問でも、豊心君にとってはご褒美になるかもしれないからだ。
文化祭や合宿みたいに、大量にパンを作らされて売るのだろうか。
それとも、購買のパン屋の前にテーブルを置き、パン対決をしなさいとか言われるのだろうか。
少しすると、真奈美さんがやってきた。
大人3人を連れて。
3人の大人が僕と豊心君に名刺を渡してくれた。
「こ・これは!」
超有名コンビニエンスストアの東京担当の人と、広報の人と、工場長と書かれていた。
真奈美さんが言う。
「あなたたち、ここのコンビニエンスストアで売るパンを考える権利をあげるわ」
僕と豊心君が顔を見合わせる。
そして東京担当の人が話し出す。
「弊社では、いくつかの大学や高校との共同開発を考えています。つきましては、○○高校とも共同開発をしたいと思っています」
続いて広報担当の人が言う。
「大学生や高校生の自由な発想を期待しています」
そして工場長が言う。
「菓子パンと総菜パン、どちらでも対応できます。今回は○○工場で作りたいと思います」
豊心君を見ると考え込んでいるので僕が質問をする。
「パンを作る条件はなんでしょうか。予算だったりそういうものがあるのでしょうか? またテーマなどもあるのでしょうか?」
東京担当の人が言う「テーマはありません。若者の自由な発想で構いません。予算のこともとりあえずは考えなくていいです。もちろん後で話し合いますが」
「菓子パンと総菜パンとおっしゃいましたが、置かれる場所はパン棚でしょうか」
広報担当の人が「といいますと」
「調理パンですか。ホットドックやハンバーガーみたいに冷蔵の方にも置けるのかなと」
3人で話し出す。
東京担当が「とりあえずはパン棚の方向で。ただ内容次第では冷蔵コーナーも考えます」
今まで黙っていた豊心君が言い出した「現在候補が50以上ある。菓子パンか総菜パンか。ターゲットはどの層を狙いたいのか。言ってくれれば最適なのを選べる」
3人は真奈美さんを見る。
真奈美さんが頷く。
そして3人で話し合う。
広報担当が「菓子パンでお願いします。ターゲットは20〜30代女性です」
「となるとツィーガークラプフェンかケーゼフラーデはどうだろう。そのままでもいいがオリジナルなら改良するがね」
3人が顔を見合わせ、話し合い始める。
そしてスマホを操作しだした。
工場長が「どんなパンかわからないのですが」
「えっとちょっと待ってね綴りはたしか……ZigerkrapfenとChäsfladeだ」
3人がスマホで見て感想を言い合っている。
「揚げパンとピザみたいなパンですね」と工場長。
「前者は、フレッシュチーズを中に入れた揚げ菓子に近いかな。後者はパン生地を使ったチーズケーキ……に近いものだ」
3人が話し合い「前者で考えます。アレンジ案はありますか?」
「本物は中に、Quarkというヨーグルトとクリームチーズの中間みたいな、フレッシュな乳製品を使うが手に入らないだろうから、クリームチーズでいいのではないか」
「なるほど」と東京担当。
「なんならレシピも今教えられるぞ」
「お願いします」と工場長。
3人は満足した様子だ。
もうこれ決定だろ、と僕は思った。
さすが豊心君だ。
「次にあなたの意見はどうですか?」と東京担当が僕に聞く。
「僕は彼と違ってすぐ答えられないので」
「では一週間でどうでしょうか。その間に考えていただければ」と東京担当。
「はい。がんばります」
正直、僕なんかの為に一週間もくれるとは思わなかった。
こうなったら豊心君に負けないようなものを考えてやる。
そう思った時、3人がまた話し合っているのに気づいた。
何の話をしているんだろうと思ったら「あの……ところであの祭壇と絵はなんでしょうか?」
その後、豊心君が生き生きと説明し始めたのである。




