第26話 コラーチェ チェコの甘い祝い事のパンがアメリカで総菜パンに
「昨日作った、プラディアってパンは変わった習慣だったね。結婚式の招待にパンを持っていくなんて」と僕が言う。
「プラディアはギリシャの話だったけど、そういうのはチェコでもあるんだよ。コラーチェっていう小さなパンを結婚式の招待状代わりに、招待客へ届けたりね」と豊心君。
「へえ。それは面白いね。ギリシャとチェコじゃ、少し離れているのにね」
「そうだね。ただプラディアと違うのはコラーチェは今でも朝食などで食べられているポピュラーなパンなんだよ」
「どんなパンなの?」
「小さい丸いパン。中央にフィリングと呼ばれる具を乗せる。プラムジャムやアプリコットジャム、チーズなどをね。そして人気なのはケシの実に、牛乳と砂糖を混ぜたケシの実ペーストとかね」
「ケシの実ってどんなの?」
「あんパンの上にのっているだろ」
「ああ、あれか」
「そして基本は小さな丸いパンなんだけど、地方によっては大きなものもあるんだ。そしてこの話には続きがある」
「どんなの?」
「チェコの人たちがアメリカに渡り、テキサスでコラーチェを作ったんだ。そしたら何故かソーセージやハラペーニョやチーズを包むパンになったんだ」
「それ別ものじゃん」
「ところが生地は近いんだ。テキサスではショートニングを加えたりするレシピもあるけど、基本的には甘いパンのまま。つまり、生地そのものが変わったというより、パンの役割が変わったってこと」
いつの間にか真奈美さんが近くにいた。
気配消しすぎだろ。
豊心君を無言で見る。
「わかりました。作ればいいんですね」
「そう。もちろん両方ね」と笑顔で真奈美さんが言う。
スーパーで買い物をして、豊心君がさっそく調理開始。
小麦粉や牛乳をはじめ、バターや砂糖、卵黄を入れていく。
そして小さく丸いタルトのような見た目にする。
具はケシの実ペーストやチーズやアプリコットジャムなどを入れていく。
一方テキサス版はソーセージを包んだり、挽肉や野菜を炒めて生地で包み込み丸いパンにしたりした。
オーブンで焼き、3人で食べ比べ。
チェコのオリジナル版は、想像通りの味。
甘い生地にジャムなら甘く、チーズとの相性も良い。
一方テキサス版はパン生地が甘いので甘じょっぱい味だ。
豊心君の話では、テキサスで生まれたソーセージ入りのコラーチェが、チェコにも逆輸入されていて、それを知っている人もいるらしい。
日本で言うとカリフォルニアロールが近いのかな。
食べ終わると、真奈美さんが言いだした。
「そろそろこの前の誕生日のお礼をしようかな」
豊心君と僕に何故か緊張が走った。




