第25話 ギリシャ・アンフィクレイア周辺に伝わっていた結婚式の招待用パン
放課後、豊心君のもとに真奈美さんがやってきた。
「このパンを作って」
僕と豊心君がメモを見る。
Pladia プラディア πλάδια ギリシャのパン
「プラディア?プラディア……プラディア……」
「あら豊心君も知らない世界のパンがあるのね」
豊心君が悔しがる。
僕はスマホで「プラディア パン」と検索するが出てこない。
「あのネットでも出てこないんですが」と僕が言う。
「ギリシャ語のπλάδιαまたはπλάδιで検索してみて」
「ギリシャ語や英語が読めません」
「日本語に翻訳しなさい」
「出てきた!」
豊心君が僕のスマホを見る。
「こんなのがあったとは」
調べてみると、ギリシャ中部・アンフィクレイア周辺に伝わる結婚式の招待用パンだということだった。
プラディアという結婚用のパンを、結婚式への正式な招待として家々へ届ける習慣が記録されていた。
白い布に包んで家々へ届ける。
そのパン自体が、結婚式への招待を意味していた。
さらには、花嫁の母、姉妹、従姉妹、近所の娘たちが台所に集まり、生地をこねる手が一定のリズムになると、誰かが歌い始めたという。
「えっ?豊心君が歌いながらパンをこねるの?」と僕が言うと豊心君が嫌な顔をする。
「俺に歌いながら作れと?」
「そこまでは求めていないわ。歌うのは絶対じゃないみたいだし」
豊心君がホッとする。
「でも調べてもレシピがないんだが」と豊心君。
「だから作ってって言ったのよ。画像があるじゃない。3日あげるわ。その間に調べなさい」
その後豊心君は調べまくったのだった。
3日後、結局レシピは見つからず、当時の似たようなパンなどを調べこのようになった。
小麦粉 500g 水 300~320g 塩8g 発酵種100g程度。
豊心君が、資料に残っていた婚礼の窯入れ歌を口ずさみながら「窯よ、よく焼いて、プラディアを焼いて、黄金色にしておくれ」と歌いながらこねていく。
さらに装飾がされているので、表面に生地を使った装飾をする。
十字、幾何学模様、花、円形など。
そして一次発酵、成形、二次発酵をしてから、オーブンできつね色になるまで焼く。
焼き上がったら冷まして完成である。
*このレシピは当時の資料や周辺地域のパンを調べ、豊心君なりに復元したレシピです。
そこへ真奈美さんがやってくる。
「あら良く出来てるじゃない」
豊心君が笑顔になる。
そして3人で食べることに。
甘さなどはなく、素朴な味わいのパンだった。
しかし結婚式への招待という甘い話があるので、甘さは十分なのだろう。
ところで豊心君。
このパンをこねる時に歌うのは若い女性だよ。
と僕は心の中で思ったのである。




