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第22話 インダス文明を想像して

お昼ごはん、豊心君がスープ容器みたいなものを取り出した。


パンにスープはおしゃれだなあ、なんて思いながら見ていると、豊心君が蓋を開けた途端クラス中の視線が集まった。


中身はカレーであった。


クラス中にカレーの匂いが充満する。


豊心君はチャパティを取り出し、食べていく。


みんなカレーなんか教室で食べるなよ的な顔をしている。


もちろん豊心君は、そんなのは気にしない。


「カレーっていつできたんだろうね」


「さあ」


「ではチャパティとかナンは?」


「ナンは、確実な記録を追うと中世にはあったらしい。チャパティはロティとひとくくりにすると……よくわからない」


「豊心君でもわからないことがあるんだ」


「正確には4000年前のインダス文明で小麦などが栽培されていたので、平たいパンが作られていた可能性があるかなという感じ。だから4000年前かもしれないし、もう少し後かもしれない」


「なるほど」


「まあカレーも原型なら同じインダス文明の時かもしれないな。ターメリックやショウガなんかが使われていたらしい」


「興味深いね」


「ただインダス文明には米もあったそうだ。だからカレーの原型をチャパティなどの祖先と食べたのか、米と食べたのかなども含めてわからない」


「ではあったかもしれないぐらいの認識なんだね」


「そうだね」


そう言うと、豊心君がキョロキョロとあたりを見だす。


「どうしたの?」


「いや真奈美さんが作りなさいって言ってくるんじゃないかと思って」


「そうだね。いつもならいつの間にか近くに来て言うよね」


なんて話していると豊心君のスマホに反応が。


「そのあったかもしれないカレーを作りなさい」


豊心君が怯えだした。


僕も豊心君のスマホの画面を確認し、あたりを見回す。


しかし真奈美さんは見当たらない。


一体何故知ったのか。


僕はいくつか可能性を考えた。


しかしすぐに考えるのを止めた。


深入りするのは止めておいた方がいい。


本能がそう察したのだ。



放課後、僕がカレーがあったかも知れないものを、豊心君がパンがあったかもしれないものを作ることになった。


これはあくまで想像だ。


実際にあったという資料はない。


だから当時あったものや、あったかもしれないもので作るのだ。


正確にはカレーの方は材料は存在したのを使う。


問題はパンの方の作り方だ。


トウジンビエそのものは当時使われていたらしい。


だが、それを粉にして平たいパンにしたという確かな資料はない。


豊心君が書いたメモを見ると、茄子とマンゴーの皮をむき、ターメリック、生姜、水を混ぜてペースト状にする。


フライパンにごま油を入れ、ペーストとキビ砂糖と茄子を入れ蓋をする。


その後さいの目に切ったマンゴーを入れ煮込み完成なのだが。


豊心君は座ってパンの本を見ていた。


「あれ? パン作りは?」


「ああ、トウジンビエの粉に水を足して焼いただけだから、すぐに終わった」と言う。


真奈美さんも加わって、3人で食べたのだが。


「う~ん……スパイシーなのかな。古代のロティといわれるパンは、パリッとしているとしか感想がない」


3人の手が止まった。


結論は現代のカレーの方が圧倒的に美味しいということだ。


さて片付けようとしたら真奈美さんが僕たちに言った。


「明後日私、誕生日だから」


僕と豊心君は顔を見合わせた。


一体どうしろというのだ。

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