第20話 焚き火の後の灰で焼くパン
休み時間に豊心君と話していると、周りからこんな会話が聞こえてきた。
「昨日のバーベキューよかったな。肉美味かった」
「ああ。外で豪快に焼いて食べるってのがいいよね」
「てかお前、肉ばっかり食ってたろ。おかげで俺、野菜食うはめになったぞ」
僕は肉が食べたかったのなら、肉だけ買えばいいのにと思ったが、ああいうのはセットで売っているから、野菜もついてきちゃうのかなと思った。
「そういえば、お肉とパンって合うのかな?」と僕が豊心君に聞く。
「パンで挟むというならハンバーガーやカツサンドやホットドッグとか有名じゃないか」
「そういえばそうだね」
「他には挽肉を挟んだパンとかもあるよ」
「へえ。今度食べてみたいな」
「バーベキューとはいかないが焚き火の後の熾火で作るパンなんてのもあるんだ」
「熾火って?」
「薪や炭が炎を上げず芯の部分が真っ赤に燃えている状態だな」
「それでパンを焼くの?」
「正確には熾火と灰の中で焼くかな」
「作りなさい」と、いつの間にか真奈美さんが僕たちのそばに来ていた。
「これには焚き火の許可がいる」と豊心君。
「放課後、校庭でやるわ。許可は取っておく」と真奈美さん。
そう言うと、真奈美さんはどこかへ行ってしまった。
僕は相変わらずの真奈美さんの強引さに呆れ、「真奈美さんも今日の放課後に焚き火で作れとか無茶言うよね」というと
「何言ってんだ。許可が出たんだぞ」と豊心君は大喜びだった。
学校で焚き火をする場合は、先生の立ち会いだけでなく、消防関係への届け出なども必要になるらしい。
だから作ったことがないと豊心君が言う。
放課後、校庭の隅でどこから用意したのか焚き火台と薪があった。
「今日作るのはダンパーというパンだ。オーストラリアのブッシュ(荒野)で、昔の牧畜労働者たちが作っていた伝統的なパンで、材料もシンプルで素朴なんだ」
「なんかすごそうだね」
「いや材料はシンプルで小麦粉と塩と水のみだ。現代のダンパーは砂糖・バター・牛乳・イースト・ベーキングパウダーなどを入れるけど、今日は昔ながらの材料と手法で作る」
豊心君は焚き火台で火を起こした。
そして小麦粉と塩を混ぜ手でこね、直径15~20cmくらいの厚めの平たい円形にする。
炎が大きく燃えている状態ではなく、薪が熾火になって赤く光るまで待つ。
熾火になったところで生地を灰の中に入れ、上から熱い灰と炭をかぶせて焼く。
これは炎の中に入れるのではない。
炎の中に入れると外側が焦げて中が生焼けになってしまう。
しばらくすると、豊心君が軍手をはめた手でダンパーを叩く。
「コンコンと中が空洞の音がすれば完成だ」
豊心君が豊心君がトングで取り出したのだが……
「石じゃん」
どう見てもパンには見えない。
灰を被ったダンパーは大きな石の塊にしか見えない。
豊心君が灰をはらうが、やっぱり石だ。
しかし包丁で切ってみると
「パンだ!」
中はきつね色のパンであった。
外側をそぎ落として僕らに提供してくれた。
別に用意した羊肉のシチューに浸けて食べる。
それは素朴な味ながら、オーストラリアの広大な荒れ地の光景が浮かんだ。




