第19話 パン屋のその後
豊心君は店を出てからもずっと不満げだ。
ぼくが豊心君に近づき、「どうしたんだい?」と聞く。
「この話は共同開発という話だっただろう。ところがどうだ。こっちがアイデアを出しただけじゃないか」
言われてみればそうだ。
こっちにとっては何のメリットもない。
「友久ちょっと付き合え」
豊心君が僕を誘った。
どこへ行くのか聞いても教えてくれない。
駅に行き電車に乗り3駅ほど行ったところで降りる。
そこから少し歩いて、店に入って行く。
店内にはパンがずらりと並んでいる。
「すごい量のパンだね」
「そりゃ食べ放題だからな」
そういうと豊心君は席に着き、飲み物を注文した後、パンを取りにいく。
お皿にパンを山盛りにして戻ってきた。
「友久も食え食え」
僕もパンを選びに行く。
たくさんのパンがあって選ぶのに悩んだけど、2つだけ選んで席に戻る。
豊心君は僕が戻ってきたらまたパンを取りに行った。
どんだけ食うんだよ。
てかパンだよ?
普通何個も食べれないだろ。
少しして豊心君の機嫌が直ったようだ。
「ここはパンだけじゃない。ジャムなども変わったのがたくさんあるのが良い」
なるほど。
プリンジャムにコーヒージャム。
バターマーガリンなんてのもある。
味が気になる。
その後満足いくまで食べた豊心君はすっかり機嫌がよくなった。
「明日はなんのパンを作ろうか」
僕は5個しか食べれなかった。
3日後、僕が商店街を通ると例のパン屋に列が出来ていた。
店頭のブラックボードや手書きのPOPに、「六つの至福販売中」と大々的に書かれている。
僕は複雑な気持ちになった。
部室では豊心君がパンの本を読み、真奈美さんが寛いでいる。
僕はさっきみたことを話すと、
「あらいいことじゃない」と真奈美さん。
「えっなんで?」と僕が聞く。
「あれ、1個売れるごとに1割、ロイヤリティがもらえるの。最初は5%なんて言ってきたけど、10%で交渉を成立させたわ。だから売れば売るほど私たちも儲かるわけよ」
「そんな話をしてたんですか」
「だから豊心君。あなたのパンの研究費の足しになるわよ」
豊心君は喜んだ。
なんだこっちにもメリットあるじゃないか。
よかったね、豊心君。
しかしもし天使の輪の方が採用されてたならどうなっていたんだろう。
僕の方にお小遣いが。
なんて、つい想像してしまった。




